あまりにガラガラ…。Jリーグ収容率ワーストランキング1〜5位。集客に課題を抱えているのは?

 2025年の明治安田Jリーグは前半戦が終了し、各クラブは後半戦に臨んでいる。スタジアムでは多くの観客が訪れて賑わいを見せているが、集客に苦戦し「収容率」が低調なクラブも存在する。今回は、今季前半戦におけるJ1~J3までの各クラブのリーグ戦収容率を計算。残念ながらスタンドの熱狂に欠けたクラブをランキング形式で紹介する。※入場者数は『Jリーグ公式サイト』を参照。成績およびデータは6月15日時点

5位:ガイナーレ鳥取

【写真:Getty Images】

本拠地:Axisバードスタジアム 収容可能人数:11,999人 平均入場者数:2,125人

収容率:17.71%

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 2025シーズン前半戦におけるJリーグ収容率ワーストランキングで5位に入ってしまったのは、J3リーグが発足した2014シーズンから同カテゴリーを戦っているガイナーレ鳥取だ。

 まず前提として、日本の47都道府県で最も人口が少ない行政区画が鳥取県であるという事実は押さえておく必要がある。母数がそもそも小さいため、観客数を大きく伸ばすのは難しい。

 加えて、本拠地『Axisバードスタジアム』の座席種類数の少なさも観客収容率の停滞を招いている一因だ。収容可能人数は11,999人を確保しているものの、座席種類数「5」はJリーグで6番目に少ない数字である。

 臨場感のあるサッカー専用スタジアムという点は魅力的なのだが、座席の多様性に欠けることでライト層の取り込みに弱い仕様となってしまっている。家族向けの“ファミリーゾーン”(企画はいくつか実施済み)や初心者向けの観戦エリアなどを設置できれば、より集客を見込めるかもしれない。

 クラブ予算の兼ね合いはあるものの、コア層以外が訪れにくい仕様になってしまっているスタジアムの改革は喫緊の課題である。もちろん、チームがピッチ上で魅力的なサッカーを披露し、好成績を収める必要があるのは言うまでもない。

 今季のJ3では16位(4勝4分8敗)と下位に沈んでおり、新規ファンをスタジアムに呼び込むには苦しい成績となっている。試合前後の地域イベント強化、選手とのハイタッチや勝利パレード、SNSキャンペーンといった「勝利体験」の演出など、鳥取が取り組める施策はまだまだ残されているはずだ。


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【写真:Getty Images】

 2024シーズンにJ2の舞台から滑り落ちてしまったザスパ群馬は、2025シーズンもJ3で暫定11位(4勝7分5敗)と苦戦を強いられている。その影響も相まって、集客面でも難しい状況に陥っており、シーズン前半戦におけるJリーグ収容率ワーストランキングは4位に。群馬が向き合う課題は多岐に渡る。

 スポーツ面で言えば、なるべく早くJ2復帰を果たすことは至上命題だ。それだけでなく、観る者を魅了するようなスペクタクルなサッカーを披露していく必要もあるだろう。幸いにも、ピッチ内でプレーが実際に行われた時間を示す「アクチュアルプレーイングタイム(APT)」は増加傾向にあり(今季 53:25/昨季 51:07 ※両シーズンともに第9節終了時点のデータ)、今後の娯楽性向上には期待が持てる。

 一方、一筋縄ではいかないのがスタジアム改革だ。座席種類数は「5」しかなく、これはJリーグで5番目に少ない数字。本拠地『正田醤油スタジアム群馬』は元々県立の多目的施設であり、クラブ独自の改修や演出には限界がある。家族向けの“ファミリーゾーン”やインスタ映えする席などの設置が望めないとなると、ライト層へのアピールは事実上できない。

 ファン層拡大の頭打ちにコア層の高齢化が合わさった未来は“クラブの衰退”一択だ。限られたクラブ予算の中では、座席種類の増加や凝った演出を行うための「箱」となる新スタジアム建設も現実的ではない。残された打開策は、地元スポンサーとの協業やSNS企画で話題づくりといったプロモーションの強化くらいだろうか。


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【写真:Getty Images】

 2025シーズン前半戦におけるJリーグ収容率ワーストランキングで3位に入ってしまったのは、2024シーズンに悲願のJ3参入を決めた高知ユナイテッドSCだ。

 初のJ3挑戦を受けて、クラブ内外は希望に満ち溢れている。今季は高知銀行と旭食品がスポンサー料の増額を決定。さらに、創業者が長岡郡久礼田村(現・南国市)であるカシオ計算機が新たなスポンサーに加わった。県も本拠地『高知県立春野総合運動公園陸上競技場』までのシャトルバス運行に対する出資を行い、まさに“オール高知”体制でクラブを支えようとしている。

 高校・中学チームの招待や自治体への声掛けなど地道な施策を実施している高知だが、草の根レベルの集客にはどうしても限界がある。試合ごとの動員差も課題で、たとえば3月20日にホームで行われたJリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド・1回戦のガンバ大阪戦(1-2で敗北)では6,929人という入場者数を記録した。

 上位カテゴリーのビッグクラブとの対戦とあって、注目度の高さが集客に反映された。しかし、リーグ戦では入場者数が2,000人台にとどまるケースが多く、対戦相手のネームバリューに動員が依存状態にあることが分かる。

 クラブをバックアップする体制は徐々に整ってきているだけに、今後は集客の“継続性”に注力する必要があるのは明白だ。ライト層を誘致するための仕掛けが未成熟である点も、今後改善をはかるべき課題のひとつである。テーママッチや家族DAY、地域特産フェアなど対象を絞った訴求は低コストで実施できる施策であるため、収容率アップのために取り組んでみても良いのかもしれない。


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【写真:Getty Images】

 FC大阪は2025シーズン前半戦におけるJリーグ収容率ワーストランキングで2位に入ってしまったが、地元に偉大な“先輩”が存在することが観客収容率の停滞を招いている感は否めない。

 1996年に創設されたFC大阪は、2023シーズンからJ3の舞台で戦いを続けている。2024シーズンはJ2昇格プレーオフ出場圏内の6位でフィニッシュ、今季もここまでJ3首位(11勝2分3敗)と、スポーツ面においては優れた成績を収めている。

 では、なぜチームの好調さが集客に結びつかないのだろうか。その要因はいくつかあるが、やはり前述の通り地元にガンバ大阪とセレッソ大阪というJ1の人気クラブがあるのは、FC大阪にとって大きなハンデとなっている。

 ライト層はどうしてもメディアに取り上げられやすいこの2クラブに流れてしまい、新興クラブのFC大阪は日陰に隠れてしまいがち。子どもサッカー教室の開催や大阪府政のPRなど地道なホームタウン活動を行ってきた実績はあるが、如何せんネームバリューに乏しい面は否定できない。

 また、本拠地『東大阪市花園ラグビー場』は26,443人の収容可能人数を誇る大型会場だが、それが逆に客入りの悪さを強調してしまう側面もある。シーズン前半戦の収容率は10.83%と低く、スタンドは“ガラガラ感”が目立つ状態に。牧歌的な雰囲気が流れてしまい、ライト層が現地観戦したいと思うような熱量が生まれていないのだ。

 花園ならではの演出を強化して集客力をアップさせる形が望ましいだろうが、場合によっては相応のキャパシティーのスタジアムでの試合開催に舵を切る必要があるのかもしれない。


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 2025シーズン前半戦におけるJリーグ収容率ワーストランキングで不名誉な1位となってしまったのは、2019シーズンからJ3での戦いを強いられているカマタマーレ讃岐だ。観客収容率は何と7.17%。今回のランキングで唯一の1ケタ台となっている。

 今季でJ3生活が7年目を迎える讃岐は、かつて戦っていたJ2復帰と無縁のシーズンを送り続けている。6年間では1ケタ順位フィニッシュすら一度もなく、下位低迷が通常の状態に。これでは、サポーターから応援の熱量が失われてしまうのも致し方なく、新規ファンの大量獲得など夢のまた夢の話だ。今季もここまで15位(4勝5分7敗)と、J3での立ち位置は近年と全く変わっていない。

 スポーツ面の低調さに加え、クラブ運営の拙さも垣間見える。讃岐が発表した『第18期(2024年2月1日~2025年1月31日)決算公告』で、増田勝代表取締役社長は「どのようなお客様に、どのような商品を売っていくのか、という営業戦略がないまま、営業活動が社員個人任せになっておりました」(2025年4月24日掲載/讃岐のクラブ公式サイト)とコメント。クラブとして「この客層を取りにいきたい」といった狙いがないまま、漫然とホームゲームが運営されていたということが明るみとなった形だ。

 讃岐が取り組むべき課題は実に多い。行政や団体と協業するロールの明確化。地元企業とのコラボレーションによるマーケティング予算増加。SNS戦略を見据えるならば、メディア映えする選手の獲得や育成も重要だ。

 そして何より、サポーターがJ2昇格やJ1挑戦を夢見ることができるようなチーム作りが求められる。キャパシティ2万人超えの本拠地『Pikaraスタジアム』(収容可能人数:22,338人)を生かすも殺すも、今後クラブがどれだけ真剣に集客と向き合えるかに懸かっている。

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【了】

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