イラン、カタールの米軍基地を攻撃-報復限定的との見方で原油下落
イランは米国による核施設3カ所への空爆に対する報復として、カタールの米軍基地に向けてミサイルを発射した。カタール政府は、中東最大の米空軍拠点であるアルウデイド基地へのミサイル攻撃が迎撃され、死傷者は出ていないと発表。イランとペルシャ湾を隔てて向かい合う天然ガス資源の豊富な同国には約9000人の米軍要員が駐留している。
アクシオスによると、イランはカタールの米軍基地に向けてミサイル10発を発射。国営イラン通信(IRNA)は、イランがカタールとイラクの米軍基地に向けてミサイルを発射したと報じた。
これに先駆け、イランは核施設への攻撃に踏み切った米国に報復すると表明していた。中東全体に戦争が拡大するとの懸念は深まり、世界の金融市場は再び動揺している。
ただ、原油先物相場は下落。イランによる報復攻撃は想定よりも限定的な内容にとどまったと受け止められ、供給懸念が和らいだ。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時6%下落し、1バレル=70ドルを下回った。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油相場が下げているのは、イランにとってエネルギーインフラが報復の最優先対象ではないとの見方を市場が織り込みつつあるためだ」と指摘。「米国側が事前情報を把握していた可能性があり、今回の行動は本格的なエスカレーションというよりも、イラン側の面目を保つための行動だったことが示唆される」と語った。
イランが報復言明
イランのムサビ参謀総長は同国国営放送局がソーシャルメディアに投稿した動画で、米国に対して「相応かつ決定的な」報復措置をとると約束し、「トランプ(米大統領)はネタニヤフ(イスラエル首相)を救いに来るという深刻な誤りを犯した。ネタニヤフを完全に惨めな状況に追い込むまで、罰を与え続ける」と語った。
一方、イスラエルのカッツ国防相は、イランの複数の空港や革命防衛隊傘下の治安機関本部などの標的を攻撃したと発表した。フォルドゥの核施設に対しても、アクセスルートを遮断する目的で再び攻撃を行ったと、イスラエル軍が報告した。
国際原子力機関(IAEA)のイラン代表を務めるレザ・ナジャフィ氏は、米国の行為で核不拡散防止条約(NPT)は「回復不能な打撃」を負ったと主張した。ただ、イランがNPT脱退を検討しているかどうかには言及しなかった。イランがNPTを脱退すれば、IAEAの査察はもはや不可能になり、同国の核開発は目の届かないところで進む恐れがある。
イラン最高指導者ハメネイ師直属の革命防衛隊は、イスラエルを標的にし続けると表明し、中東地域の米軍拠点は米国にとっての弱点だと主張していた。
トランプ米大統領は、いかなるイランの報復に対しても、「はるかに強力な」力で応じる意向を示している。イスラエル当局者はイランの体制転換は戦争目的ではないと述べているものの、攻撃でイランの現体制に壊滅的な打撃を与え、政権転覆に至らしめる可能性がある。
トランプ氏は、米軍が攻撃した3つの核施設が「完全に破壊された」と語ったものの、特に地下深くに位置するフォルドウの濃縮施設については、より慎重な見方もある。ヘグセス国防長官やダン・ケイン統合参謀本部議長を含む米政府高官らは、被害の全容はまだ明らかになっていないとしている。
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イランの核計画を監視する国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は23日、フォルドゥの核施設で「甚大な損傷が発生したと見込まれる」と述べ、「陥没した穴が複数認められる」と指摘した。
原題:Iran Fires Missiles at US Base in Qatar in Retaliatory Strike、Oil Falls as Iran’s Response to US Strikes Spares Energy Assets、Iran’s Military Plans ‘Proportionate’ Response to US Strikes、Iran Launches Missile Strike at US Air Base in Qatar: Tasnim(抜粋)