ウクライナがまた製油所攻撃、ロシアは季節的な燃料不足が悪化
ウクライナはロシアのボルガ地方にあるサラトフ製油所を攻撃した。前線への燃料供給を抑えようと、ウクライナ軍は先月から製油所などロシアのエネルギー施設に対するドローン(無人機)攻撃を強めている。
ウクライナ参謀本部が16日、通信アプリのテレグラムで発表したところによると、同製油所周辺の爆発と火災が検知された。被害状況の詳細は確認中だという。
ブルームバーグはウクライナ軍の主張を独立した形では確認できていない。製油所を保有するロシアの石油最大手ロスネフチは、コメントの要請に応じなかった。
ウクライナ軍のドローンは先週、ロシアにとってバルト海沿岸で最大の石油積み出し港であるプリモルスクを攻撃。もう一つの重要な石油輸出拠点であるウスチルガに送油する複数のポンプ場も攻撃し、送油能力に打撃を負わせたと同国軍は主張している。
ブルームバーグの試算によれば、ウクライナ軍は今年これまでに、ロシアの製油能力全体の約半分に相当する石油精製施設を攻撃の標的とした。ただ、実際の燃料供給への影響はそれよりも少ない。
ゴールドマン・サックス・グループは、8月以降の攻撃により操業停止に追い込まれたロシアの製油能力を日量約30万バレルと推計している。これは同国で稼働中の石油精製能力全体の5%超に当たる。製油所が攻撃の防御や被害の最小化に成功したり、速やかな修理が可能だったりする場合もあり、実際の供給障害はさらに小さい可能性もある。
それでも製油所を狙う執拗(しつよう)な攻撃はロシアの季節的な燃料不足を悪化させ、ロシア政府はガソリン輸出を禁止し、一部ディーゼル燃料を国内市場に振り向けざるを得なくなった。
ロイター通信によれば、最近の相次ぐドローン攻撃を受け、ロシアのパイプラインを運営する国営企業トランスネフチは国内の石油生産者に対し、貯蔵用に受け入れる原油量を削減する方針を伝え、インフラにさらなる被害が出れば受け入れをさらに減らす可能性があると警告した。
この報道についてトランスネフチは、「近い将来に石油の受け入れを急激に制限する」と示唆している点が誤りだと発表文で主張した。
これまでのところ、ウクライナ支援国はロシアの燃料施設に対する攻撃をほぼ黙認している。米国や欧州はこれらの攻撃を表立って支持していないが、批判もしていない。バイデン前政権はウクライナのこうした攻撃をとがめていたが、当時とは対応が異なっている。
原題:Ukraine Claims Strike on Russia’s Saratov Crude Oil Refinery (1)(抜粋)
— 取材協力 Alaric Nightingale