チンパンジーのアルコール摂取量、「1日2.5杯分」と判明、研究

コートジボワールのタイ国立公園で食事中のオスのチンパンジーたち。新しい研究によると、この公園のチンパンジーはアルコール度数の高い果物を好むという。(PHOTOGRAPH BY ALEKSEY MARO)

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 ヒトに最も近い動物であるチンパンジーが、かなりの量のアルコールを摂取していることが新たな論文により明らかになった。学術誌「Science Advanecs」に9月17日付けで発表された研究で、チンパンジーが食事をした木の下で見つかった500個以上の果物と1日の食物摂取量、そして各種の果物を食べた時間を分析し、1日のアルコール摂取量を初めて推定した。その結果、体重を考慮すると、チンパンジーが1日に摂取する平均的なアルコールの量は、人間ならアルコール飲料2.5杯分に相当することがわかった。

 果物に含まれる糖分は、環境の中にある酵母によって自然に発酵してアルコールへと変化する。チンパンジーは熟した果物を好むことから、霊長類学者たちは長年、かなりの量のアルコールを摂取しているのではないかと推測していた。(参考記事:「昆虫をつぶして傷に塗り込むチンパンジーたち、薬代わりか 写真8点」

「彼らのデータには信頼性があり、アフリカ東部と西部の採食地で食べられた多様な果物を代表しています」と、米ダートマス大学の進化生物学者であるナサニエル・ドミニー氏は評価する。「今回の発見は議論を巻き起こし、この分野を前進させてくれるでしょう」。なお、ドミニー氏は今回の研究には参加していない。

 研究チームは、チンパンジーがアルコールを含む果物を意図的に探しているのではないかと推測している。論文の筆頭著者で米カリフォルニア大学バークレー校の生物学者であるアレクセイ・マロ氏は、ウガンダ、キバレ国立公園のンゴゴと、コートジボワール、タイ国立公園の別々のチンパンジー集団を調べ、それぞれの集団で最も人気のある果物は、アルコール濃度が最も高いものであることを明らかにした。ちなみに、キバレ国立公園ではイチジクの1種、タイ国立公園ではスモモの1種だ。

 マロ氏は、チンパンジーにとって果物のアルコール含有量は、糖度の高さと、一定の発酵レベルに達していて栄養豊富であることを示すシグナルなのかもしれないと言う。「ですが、単にアルコール自体に魅力を感じている可能性もあります」とも付け加える。(参考記事:「天然のアルコールで、日常的に酔っぱらっている野生動物たち」

 チンパンジーとヒトは多くの遺伝子と進化の歴史を共有していることから、この研究は、私たちのアルコールへの嗜好の起源がはるか昔にあるかもしれないという考えを裏付けるものだ。(参考記事:「酒と人類 9000年の恋物語」

「朝、昼、晩と摂取している」

 果物のアルコール含有量はそれほど高くない。チンパンジーの食事に含まれていたアルコールは平均するとわずか0.3%だった。

 しかし、チンパンジーが1日に摂取する果物の量は約4.5キログラムなので、1日平均14〜15グラムのアルコールを摂取していることになる。人間のアルコール飲料には1杯あたり平均10グラムのアルコールが含まれているが、チンパンジーは体重が軽いため、人間に置き換えるとアルコール飲料約2.5杯分に相当する。

 チンパンジーはほとんど1日中食事をしているので、彼らは「朝、昼、晩とアルコールを摂取していることになります」とマロ氏は言う。しかし、好物の果物がたくさん実っている木を見つけると「ドカ食い」に走ることもある。イチジクを大量に頬張り、果汁(とアルコール)を吸い出して、吸いかすを森の地面に吐き出すのだ。

 ただ、人間の不健康な過食とは異なり、これはチンパンジーにとって正常で自然な行動だと考えられている。

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