クルーズ船は「大きければ大きいほど良い」 大型化ブームに終焉はあるのか
フロリダ州マイアミ港を出発する「アイコン・オブ・ザ・シーズ」/Joe Raedle/Getty Images
(CNN) クルーズ船の船尾が盛りすぎたバースデーケーキのようだと昨年話題になった画像を誰が忘れられるだろうか。カラフルで漫画のようなデッキは、曲がりくねったウォータースライダーやターコイズ色のプール、ネオンカラーの装飾にいろどられ、ちまたには一体どうやって浮かぶのかというコメントがあふれた。
2024年1月に就航した世界最大のクルーズ船「アイコン・オブ・ザ・シーズ」(ロイヤル・カリビアン社製、全長約365メートル)とともにわき起こったどよめきからしばらく超大型客船の話題はなくなるだろうと思っていたなら、考え直した方がいい。
ロイヤル・カリビアンやMSCクルーズなど、世界最大級の客船会社は「大きければ大きいほど良い」という格言を今なお信じ続けている。
今年だけでも巨大クルーズ船は次々と就航することになるだろう。これらは多くの場合、旧モデルよりも大型化する。
ノルウェージャンクルーズラインの最新客船「ノルウェージャン・アクア」が4月下旬、フロリダ州ポート・カナベラルを出航した。乗客定員は3600人で、同社の大型客船「プリマクラス」より10%多い。同社は、定員5000人の大型船4隻を発注済みで、30年の納入開始を目指している(その間さらに数隻のプリマクラス船が就航予定だ)。
また同月には、MSCクルーズが同社で2番目に大きな「MSCワールド・アメリカ」を就航させた。全長は約333メートルで乗客6762人を収容する。さらにMSCワールドクラスの新たなクルーズ船2隻の納入が26年と27年に予定されている。
カーニバルクルーズラインは、29年に同社史上最大となるクルーズ船3隻のうち最初の1隻を就航させる計画だ。客室は3000室以上、最大収容人数は8000人に迫る。
さらに今年8月には、定員7600人のアイコン・オブ・ザ・シーズの姉妹船で、ロイヤル・カリビアンの「アイコン」クラス2隻目となる「スター・オブ・ザ・シーズ」がフロリダ州ポート・カナベラルから7日間のクルーズに出発する。この新たな客船は、1隻目とほぼ同等の乗客収容能力を持ち、ウォータースライダーやウォーターパーク、七つのプールのほか、飲食ができる40カ所を備えた、目を見張るような20のデッキを擁する。
ロイヤル・カリビアンの計画はこれにとどまらない。26年、27年にもアイコンクラスの新たな客船が就航を控えているのだ。
クルーズライン国際協会(CLIA)によると、25年には3700万人以上がクルージングに出かけると見込まれる。世界のクルーズ船の発注は36年まで続き、77隻の納入が予定されている。発注数はかつてないほど増えているようだという。
巨大クルーズ船は熱心なファンを抱える一方で、環境問題も懸念されており、一部の港は乗客の殺到に慎重な見方を示す。
国際クリーン交通委員会(ICCT)の海洋プログラムディレクター、ブライアン・カマー氏は、巨大クルーズ船について「本質的には水上都市」だと指摘。「就航するたびに、燃料消費、温室効果ガス排出、大気汚染、廃水排出が増加している」