ヘグセス国防長官との対立で米軍は内部崩壊、今度は国防副長官の後任探し

米軍はヘグセス国防長官との対立で内部から崩れ始めており、これまでに陸軍長官、海軍長官、統合参謀本部議長、陸軍参謀総長、空軍参謀総長、欧州・アフリカ陸軍司令官、南方軍司令官などの高官が次々と辞めていき、今度はファインバーグ国防副長官の後任探しが始まっていると報道されている。

参考:EXCLUSIVE: White House reviews candidates to replace Hegseth deputy Feinberg, sources say | Reuters

トランプ氏は大統領選挙に勝利後に元陸軍レンジャーのダン・ドリスコル氏を陸軍長官に指名し「彼は変革者であり変革の担い手だ」と称賛、トランプ政権下で国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏は2025年5月「包括的な陸軍改革」を命じ、この取り組みをドリスコル陸軍長官、ジョージ参謀総長、ミンガス副参謀総長、ホドネ変革訓練司令部司令官、ドナヒュー在欧・アフリカ陸軍司令官などが強力に推し進めていたが、ヘグセス国防長官は2026年6月までにドリスコル陸軍長官を除く全員を事実上更迭してしまう。

出典:U.S. Army photo by Staff Sgt. Alexander Nieves

THE HILLは2026年4月「ヘグセス国防長官とドリスコル陸軍長官の間で影響力を巡る戦いが燻っていたが、ジョージ参謀総長、ミンガス副参謀総長、ホドネ変革訓練司令部司令官らを粛清したことで新たな局面に達した。軍内部の力学に詳しい関係者らは『トランプ大統領がウクライナと戦争終結を交渉する役目をドリスコル陸軍長官に任せたため、ヘグセスの被害妄想が高まり両者の緊張が再燃した』『ヘグセスは自分より目立つ可能性のある人間がいることに強い不快感を抱いている』と証言した」と報じ、超党派から仕事ぶりが称賛され、潜在的な次の国防長官候補と噂されるドリスコル陸軍長官が目障りで仕方なかったらしい。

そしてドリスコル陸軍長官も辞表を提出し、9月2日まで陸軍長官職を務めて退任してしまい、民主党だけでなく共和党からも相次ぐ軍高官の離脱に批判の声が挙がっていたが、ロイターは4日「ホワイトハウスがスティーブ・ファインバーグ国防副長官の後任候補を探している」「この取り組みは6月から始まり、後任候補の指名が上院で承認されるかどうか上院有力議員との協議も含まれていた」「現時点でファインバーグ国防副長官を解任する決定は下されていない」と報じ、これが事実ならヘグセス国防長官から深刻な弾薬不足の説明責任を押し付けられたファインバーグ国防副長官が犠牲になるのだろう。

出典:The White House

ワシントン・ポストは8月「先週のキャンプ・デービッドで対イラン作戦に対する不満が爆発した。トランプ大統領はヘグセス国防長官に対して「弾薬不足の問題は解決していたと思っていた」「(イランへの軍事的選択肢を制限する深刻な弾薬不足について)私はどうして状況を誤解するような報告を受けていたのか」と説明を求め、ヘグセス国防長官はトランプ大統領の追及に対して『十分な報告が行われなかった責任はファインバーグ国防副長官にある』と自己弁護に終始した」と報じていた。

ロイターも「ファインバーグ氏は米国の弾薬生産を加速させると誓約していた目標を達成できていない。一部の防衛産業関係者は政権からの多大な圧力にもかかわらず、議会による資金拠出のペースが遅いため、ファインバーグ氏の任務は複雑化している」「イラン戦争は開戦から半年が経過したものの米国とイランの間で代償の大きい膠着状態に陥っており、トランプ大統領は進展が見られないことに対してますます苛立ちを募らせている」「その代償の一つが米軍の兵器備蓄の減少で、ヘグセス国防長官は長距離攻撃兵器や迎撃ミサイルの備蓄を枯渇させた責任はファインバーグ氏と非難した」と報じている。

出典:Photo by John Hamilton

議会による資金拠出のペースが遅いという批判は前例のない1兆5,000億ドル(裁量予算=1兆1,500億ドルと義務的支出=3,500億ドル)もの国防予算が原因で、さらに議会に相談なく始めたイラン戦争の戦費補填(670億ドル)要求も問題になっており、11月の中間選挙後でないと歳出法案と国防権限法案は動かない可能性が高く、つなぎ予算によって12月まで(裁量予算から)暫定的な支出が認められるものの国防権限法案で定義される支出権限は成立しておらず、つなぎ予算は義務的支出分に関して1ドルの支出も認めていないため、去年の国防権限法案で定義される支出権限の範囲内でしか予算を執行できない。

簡単にいうと「無人機分野、宇宙分野、ゴールデンドーム、F-35関連資金、弾薬調達の大部分は義務的支出に依存し、特に枯渇している弾薬を増産するための取り組みに資金を解放できない」という意味で、特に上院本会議(定数100議席)は無限の討論(フィリバスター)が認められているため、過半数を占める共和党(53議席)は民主党(45議席)によるフィリバスターが続く限り実質的な審議や最終採決=過半数51票による法案可決に持ち込めず、これを阻止するには討論打ち切り手続き(クローチャー)を発動しなければならないのに無所属2議席を足しても発動に必要な60票以上に足りないため中間選挙が終わるまで何も動かないのだ。

出典:The White House

結局、民主党が強気なのは失策続きのトランプ大統領の支持率が34%まで低迷し、中間選挙の予想も共和党に厳しい状況(民主党支持が43%で共和党支持は37%)で、上院は共和党が過半数を維持する可能性が高いと見られているが、下院は3議席奪われるだけで民主党が過半数を奪還できるため中間選挙の結果次第で義務的支出=3,500億ドルを諦める必要が出てくる。

つまり国防副長官をすげ替えても議会による資金拠出のペースは変わらず、ヘグセス国防長官は深刻な弾薬不足によるトランプ大統領の怒りを逸らすスケープゴートとして「ゴールデンドーム計画の契約を巡る利益相反の疑いで民主党の一部から厳しく追求されているファインバーグ氏の解任」は非常に都合がいい。

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※アイキャッチ画像の出典:DoD photo by U.S. Air Force Senior Airman Madelyn Keech

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