トランプ氏との電話に応じた習氏、半導体や関税巡る攻防に勝算見込む
中国の習近平国家主席は、5日にトランプ米大統領との電話会談を受け入れた。今回の関係リセットにより、関税引き下げや輸出規制の緩和など、今後数週間から数カ月で具体的な成果につながると踏んでいるようだ。だが、習氏がその成果を得られるかどうかは、対中姿勢を巡って内部に温度差が存在し、予測不可能なトランプ政権次第だ。
トランプ氏は会談に先立ち、習氏について「交渉するには彼は極めてタフな相手だ!」と自身のSNSに投稿した。それから約36時間後、トランプ氏は電話会談で、レアアース(希土類)磁石の輸出再開の約束を取り付け、自分が望んでいた成果を得たと述べた。
習氏がその見返りに何を得たかは、米国のさらなる制裁措置の凍結以外、あまり明らかになっていない。中国にとって重要な、中国人留学生の受け入れについて米国の保証は得たが、習氏がトランプ氏を数カ月も待たせた理由の説明になるほどの成果ではない。
北京の清華大学国際安全保障戦略研究センターの孫成豪研究員は、「今回の電話会談は、米中関係の戦術的な緊張緩和につながる。だが、制裁の平等な緩和、相互の執行メカニズム、技術封じ込めの終了といった中国の中核的な要求は、持続的な合意のために引き続き重要だ」と述べ、今後の協議や政策で、米国が実質的な調整を行わない限り、合意が長期的な安定にはつながらない可能性を指摘した。
関連記事:米中首脳、さらなる協議で合意-レアアースで理解深めたとトランプ氏
投資家は、米中間の関係がようやく軌道に乗ったとの見方には懐疑的で、中国本土株のCSI300指数は6日、ほとんど変化しなかった。
双方に懸念
トランプ氏は90分間に及んだ5日の電話会談後、「中国との貿易合意については非常に良い状態にある」と記者団に述べた。
米国にとっての最大の緊急課題は、電気自動車(EV)や防衛システムに不可欠なレアアース磁石の不足だ。ジュネーブ会談後、米国側はこうした資源の供給を確保したと信じていた。だが、中国は輸出ライセンス制度を維持し、米国への輸出業者も他の国と同様に申請が必要だと表明して、米側を失望させた。
一方の中国も、華為技術(ファーウェイ)の人工知能(AI)半導体使用に対する制裁措置や、半導体設計用ソフトウエアや航空機エンジンの対中輸出規制、さらに28万人を超える中国人留学生へのビザ制限に対し、裏切られたと感じていた。
習氏はレアアースの輸出規制によって力を誇示したものの、交渉の席に着く理由もある。モルガン・スタンレーのロビン・シン氏率いるエコノミストによれば、中国経済は4-6月期(第2四半期)に急減速し、年後半にかけて圧力が強まると予想されている。
アジア・グループの中国担当ディレクター、ハン・リン氏は「現在、中国は『米国に対して強硬姿勢を貫くという政治的原則』から『引き続きぜい弱な経済を支える現実主義』に傾いている」と指摘し、中国側も緊張を緩和したがっているとの見方を示した。
進展の兆し
習氏の前には、今後さらなる進展が起こることを示す要素が複数ある。ラトニック商務長官がジュネーブでの次回貿易協議に加わることは、トランプ氏が対中技術規制の一部を撤回する可能性を検討していることを示唆している。
両首脳はまた、相互に訪問を招請した。実現すれば、貿易、輸出管理、人的交流など、複雑な問題に関する合意を通じて、関係安定化に向けた勢いを加速させる機会となる。トランプ氏はメラニア夫人も同行すると述べ、訪問に前向きな態度を示した。
ただ、一部のアナリストは、主題である貿易問題に関する詳細が不明確な点を指摘し、過度に楽観的になるべきではないと警鐘を鳴らしている。
元香港米国総領事で、アジア・グループパートナーのカート・トン氏は「交渉が進む中でも、双方が追加の否定的な措置の実施を防ぐような、より深い合意はないようだ」と述べた。
スタンフォード大学の中国研究プロジェクト「デジチャイナ」を率いるグラハム・ウェブスター氏は、「トランプ氏が、今後のさらなる交渉に関する展望を持ち、また、それを突然放棄しないと見込むのは賢明ではない」と述べた。
原題:Xi Bets Trump Detente Will Lead to Future Wins on Chips, Tariffs(抜粋)