米国が検討している同盟国設計のフリゲート艦、イタリアが挑戦を表明

トランプ大統領が検討を命じた「同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことの実現性」に関する最有力候補は韓国のハンファオーシャンだが、イタリアのフィンカンティエリも「FREMM級の輸出バージョンを米国で建造する準備は整っている」と述べて参入機会への挑戦を表明した。

参考:HII FF(X) Patrol Frigate Program Progressing as Navy Considers Foreign Options

トランプ大統領は8月13日に署名した国家安全保障大統領覚書の中で「沿岸警備隊の中型砕氷船計画で初めて採用された成功事例=フィンランドモデルに基づき、米造船産業基盤への直接投資をさらに推進することを指示する」「海外の造船会社が米造船所に大規模かつ持続的な投資を行い、米国人労働者を雇用して育成するなら、一時的に最大2隻の海外建造を許可し、3隻目以降の船舶は活性化された米造船所で建造される」と明記した。

出典:The White House

この大統領覚書はフィンランドモデルを対潜・水上戦や護衛任務が行える水上戦闘艦、Ro-Ro型貨物船、洋上補給用の貨物・給油タンカーの調達に拡大することを指示し、その条件として「最初の2隻以外は新規に建設した米国内の造船所、所有権もしくは過半数の株式を取得した既存の米造船所で建造すること」「最初の2隻以外を建造するため米国人を雇用して訓練すること」「最初の2隻を建造した親会社の造船技術やテクノロジーのライセンスを米造船所に与えること」「最初の2隻以外を米国で建造する場合は必要な全てを米国のサプライチェーンから調達すること」を挙げ、この条件を満たすならバーンズ・トレフソン修正条項が免除される。

この動きを簡単に端的に説明すると「海軍艦艇の国外建造(上部構造の主要部品製造も含む)はバーンズ・トレフソン修正条項で禁止されている」「米行政管理予算局(OMB)は海軍艦艇を同盟国の造船所で建造したい」「議会と造船所業界団体は雇用を守るため海軍艦艇の国内建造を守りたい」「ホワイトハウスは同盟国設計の艦艇を取得して国内建造させることで雇用と投資を生み出したい」となり、議会は2027会計年度の国防権限法案(歳出法で支出が決まった国防予算をどう使うのかを決める権限)の中で海軍艦艇の国外建造を制限する内容を盛り込んでいる。

出典:Representative Jared Golden

そしてフィンランドモデルの正体はカナダ企業のデイヴィーが中型砕氷船5隻の建造を受注し、同社が所有するフィンランドのヘルシンキ造船所で最初の2隻を建造、その間に買収した米ガルフ・カッパー造船所で中型砕氷船を建造できるように準備を整え、残りの中型砕氷船を雇用した米国人労働者によって建造することを指している。

USNI Newsが「ホワイトハウスと米海軍は新しいフリゲート艦として韓国の忠南級フリゲート、日本の新型FFM(もがみ型改)、トルコのイスタンブール級フリゲートを検討している」「この評価は2026年11月12日に提出される予定だ」と報じたが、トランプ大統領の指示を受けてハン・カオ海軍長官代理が海軍に調査を命じたのは「フィンランドモデル適用で同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことの実現性」で「改もがみ型、忠南級、イスタンブール級のスペックを比べてどれが新型フリゲート艦に相応しいのか」ではない。

出典:海上自衛隊

結局のところ議会や造船業界が繰り返し訴えているのは「どんな素晴らしいアイデアでも国内雇用という利害を無視すれば実現しない」という点で、ホワイトハウス、議員、米海軍、造船所業界、労働者の全員が笑顔で握手するのは「外国の造船企業が米造船所業界に投資して国内の造船所を整備し、サプライチェーンを構築し、米国人を雇用してフリゲート艦を建造する」という方法だけだ。

そのため実現性が一番高いのはハンファオーシャンが50億ドルを投資して「世界クラスの自動化とスマート造船技術を備えたデジタル対応の高効率造船所」に転換しようとしているハンファ・フィリー造船所を活用する方法で、その競合となるのは日本とトルコではなくフィンカンティエリ・マリネット・マリーンを所有するイタリアのフィンカンティエリだと予想したが、フィンカンティエリ・マリネット・マリーンのジョージ・モータフィス最高経営責任者は「FREMM級の輸出バージョンを米国で建造する準備は整っている」と語った。

出典:Hanwha

モータフィス氏はUSNI Newsの取材に「コンステレーション級フリゲートの建造は中止されたが米国内のサプライチェーンは構築済みで、ここに僅かな変更を加えるだけでFREMM EVOの設計に対応することができ、コンステレーション計画の中止を招いた設計の迷走を回避できる」「海軍と政府は我々と適切な協議を行うことで設計の悪循環に陥ることなく、迅速な立ち上げと速やかな建造を可能にする形で開発を設定できるはずだ」「既存の機能する設計を受け入れて海軍に艦艇を届けるための作業を開始すべきである」と語り、同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことの実現性ではハンファオーシャンに匹敵するプランだ。

フィンカンティエリが有利なのはコンステレーション級フリゲート建造中止の遺産を活かせる点で、構築済みの国内サプライチェーンを再活用できるのは「造船能力を米国に持ち込むことの実現性」において非常に有利だが、米海軍で調達を担当するケイシー・モートン少将は「レジェンド級カッターベースの次期フリゲート艦に加えて同盟国設計ベースのフリゲート艦を導入するかどうかは分からない」「どの道を進むかプロセスを先取りして話すつもりはない」「大統領の指示で我々が行っていることについて先走った発言は控える」と述べている。

出典:U.S. Navy

ホワイトハウスやOMBの計画に乗り気なのはどちらかというと海軍ではなく国防総省で、これまでのところ海軍作戦部長を含む海軍上層部から「同盟国設計のフリゲート艦が欲しい」という公の発言は存在せず、モートン少将の発言も海軍上層部の意向を示唆している可能性が高く、11月3日の中間選挙結果と11月12日に提出される海軍の調査結果が出揃うまで様子見という雰囲気だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Fincantieri

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