万博・アンゴラ館を無許可工事か、建設会社を容疑で捜索…内装工事など1・2億円で受注し再委託
大阪・関西万博のアンゴラ館の建設工事を無許可で請け負った疑いがあるとして、大阪府警は13日、建設業法違反容疑で、大阪市鶴見区の建設会社「 一六八(いろは) 建設」の代表宅などの捜索を始めた。府が調査で無許可工事の疑いを把握し、7月に同社を30日間の営業停止処分としていた。
一六八建設が内装工事を受注したアンゴラ館(12日、大阪市此花区で)捜査関係者によると、同社は1月頃、国土交通相や府知事の許可を得ていないのに、アンゴラ館の内装工事などを約1億2000万円で受注した疑いが持たれている。同社の事務所は最近閉鎖されたといい、府警は13日午前、大阪市内にある40歳代の代表宅など数か所の捜索を進めている。
建設業法では、500万円以上の工事を請け負う業者に対し、営業許可を得ることを義務づけている。違反した場合、刑事罰では3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金が科される。
同社代表はこれまでの読売新聞の取材に対し、無許可で工事を請け負ったことを認めた上で、「要件を満たしていたが、元経理担当者が申請を出しておらず、作業に追われて確認する余裕もなかった」と話した。
代表によると、同社は昨年6月、休眠状態だった法人を譲り受けて数人で発足。アンゴラ館の工事では、別の建築会社から内装工事などを受注して下請け6社に再委託し、2月中旬に着工して3月末にはほぼ完了した。アンゴラ館は4月13日の開幕日は来場者を受け入れたが、その後は「技術的調整」を理由に休館し、6月26日に再開していた。
読売新聞は、内装工事などを一六八建設に発注した建築会社にも取材を申し込んだが、回答は得られていない。
万博では、別の海外館の工事3件でも他の業者に無許可請負の疑いがあり、府が調査を進めている。
一六八建設を巡っては、アンゴラ館工事の下請け業者に対する工事費の未払いも確認されている。一六八建設によると、総額は6社で計1億円超に上るという。
アンゴラ館の工事を巡る経緯5月に記者会見を開き、未払いを訴えた設備業者の男性によると、一六八建設から工事を依頼されたのは今年2月。仕事を受注するのは初めてだったが、一六八建設に資本金が4000万円あり、建設業の許可は「申請しており、もうすぐ取れる」と説明され、信用したという。
アンゴラ館の電気工事や塗装工事などを請け負い、旧知の建設業者20人以上に協力を求め、4月までにほぼ終えた。男性は「国家プロジェクトで、昼夜を問わず働いた」と振り返る。だが、一六八建設からは工事代が振り込まれなくなった。未払いは3月分と4月分で計約4300万円に上るとしている。
5月、協力業者と「被害者の会」を結成し、一六八建設に支払いを求めている。「相手を見抜けなかった落ち度は自分にあるが、裏切られた思いだ。協力してもらった業者に申し訳なく、何とか支払ってもらいたい」と訴える。
一方、一六八建設は7月、元経理担当者が約1億2000万円を横領したとして、業務上横領容疑での告訴状を大阪府警に提出した。同社代表は取材に「横領された金は工事費の支払いに充当されるべきだ」と主張。元経理担当者は取材に「一六八建設に貸した金を回収しただけで、横領はしていない」としている。