金融庁が仮想通貨の税制改正を要望!分離課税導入とETF解禁はいつから? (村上ゆういち 仮想通貨専門の税理士)
2025年8月、金融庁が仮想通貨(暗号資産)の税制改正を要望したというニュースが報じられました。 主な内容は以下の2点です。 ・仮想通貨の課税方式を総合課税から分離課税(20%)へ移行 ・ビットコインETF・イーサリアムETFなど暗号資産ETFの導入促進 (参考:金融庁の令和8年度税制改正要望について 金融庁ウェブサイト) もし実現すれば、日本の投資環境に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、改正の背景・実現時期の予想・投資家への影響(メリット・デメリット)を仮想通貨専門の税理士の視点から解説します。
現在、日本では仮想通貨は資金決済法上の「決済手段」として扱われています。しかし、金融庁は今後、金融商品取引法上の「金融商品」に位置づける方針を強めています。 金融商品となれば、株式や証券と同様に金融庁の監督下に置かれることになり、税制や規制の枠組みも大きく変わることになります。
金融庁の要望によると、2026年の通常国会で法改正を目指しているとのことです。 ただし、税制は「1月1日~12月31日」が計算対象期間となるため、2026年中に成立した場合でも適用は2027年1月以降になる可能性が高いと見られます。 つまり、最短でも2027年から分離課税がスタートするシナリオになるのではないかと私は予想します。これについては、現状は未定になっていますので、引き続き状況を注視していきたいと思います。
注意したいのは、分離課税の対象範囲です。 海外取引所(Bybit・Bitget・KuCoinなど)は金融庁から無登録業者として警告を受けており、対象外の可能性が高いです(参考:無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について 金融庁)。 DeFiやウォレット取引まで適用されるかどうかは不明で、現在議論中。 つまり、分離課税が導入されてもその範囲が限定的になる可能性が高いです。最悪、国内登録取引所のみが対象になる可能性もあります。
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1. 税率の大幅引き下げ ・現状:最大55%の総合課税 ・改正後:一律20%の分離課税 投資家にとっては、大幅な減税効果となります。 2. 暗号資産ETFの解禁 ・日本でもビットコインETFやイーサリアムETFが販売可能に ・投資家層の拡大、市場の健全化につながる可能性あり
一方で、投資家にとって注意すべき点もあります。 1. 出国税の対象化 仮想通貨が金融商品扱いになれば、出国税の対象になる可能性が高いです。 これは、海外移住の際に、仮想通貨の含み益を一度利確したものとみなして、その含み益の税金を支払ったうえで出国しなければならない、というものです。 仮想通貨長者や富裕層にとって大きな制約となるでしょう。 2. 規制強化 仮想通貨を金融商品として分類することにより、金融庁による監督が強まり、国内取引所の運営負担が増加する可能性があります。さらに、海外の仮想通貨取引所の利用もますます制限される可能性があります。 3. 金融所得課税の引き上げリスク 政府は、金融所得課税の強化を掲げているという記事を見かけます。 現在20%の金融所得課税が、将来的に30%へ引き上げられる議論もあります。 「55% → 20%」ではなく「55% → 30%」になるシナリオも現実的です。 4. 損益計算の複雑さは残る 仮想通貨取引の損益計算は非常に複雑で、現状と大きく変わらない見込みです。
以上が、金融庁が仮想通貨(暗号資産)の税制改正を要望したという内容及びそれによる想定される影響となります。 ・金融庁が仮想通貨の分離課税導入・ETF解禁を要望(2025年8月) ・実現は2027年からになるのではないかと推測される ・対象は国内取引所中心、海外取引所やDeFiは対象外の可能性がある ・メリット:税率引き下げ・ETF解禁 ・デメリット:出国税適用・規制強化・税率引き上げリスク 今後の法改正の動きは、仮想通貨投資家にとって大きな転換点になります。特に海外移住を検討している方は、早めの対応が必須です。 村上ゆういち 仮想通貨専門の税理士・公認会計士
村上ゆういち 仮想通貨専門の税理士・公認会計士 新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。 X: @Jeanscpa YouTube: 魔界の税理士ちゃんねる @makai-tax