Game*Sparkレビュー:『エルデンリング ナイトレイン』はバトロワにローグライトに流行りの要素を上手く混ぜた奇妙なゲームだった―『エルデンリング』実績コンプ勢が送る10時間マルチプレイ体験評価
全世界出荷本数3000万本を記録したモンスター級タイトル『エルデンリング』。そのシステムを流用し、まったく新しいマルチプレイゲームとして生まれ変わったのが『エルデンリング ナイトレイン』です。
今回はフロム・ソフトウェアよりキーを提供いただき、先んじてプレイさせていただきました。未クリアではありますが、基本要素を体験できた10時間のプレイをもとに、感じたことを率直に語らせていただければと思います。
『エルデンリング』が作り上げた世界・デザイン・ルールのなかで、果たしてどんなマルチプレイ体験が構築されたのか? ぜひともチェックしてみてください。なお本作はマルチプレイタイトルということで、Game*Sparkではさまざまな視点から紐解くレビューやプレイレポートを掲載しています。
バトロワ×ローグライト×MOBA×『エルデンリング』……流行りの要素を混ぜ込みつつ、オリジナリティを担保した摩訶不思議なデザイン
本作は『エルデンリング』のフィールドをコンパクトにまとめたマップ「リムベルド」で、三日間を生き延び、最後に待つ「夜の王」を倒すことを目的としたマルチプレイ型アクションゲームです。
プレイヤーは大祝福にて「夜渡り」というキャラクターからひとりを選びます(ここに来るのも久しぶりな感じがしますね)。そうして大祝福から倒すべき夜の王を選択して、マッチを開始します。シングルプレイでも出撃は可能ですが、現状2人プレイはできず、1人か3人で遊ぶことになります。
キャラクターはすでに鎧と初期武器を持っており、ゲーム中は「武器・盾」「タリスマン(アクセサリー)」「アイテム」を付け替えていくことになります。キャラクターにはそれぞれに特徴がありますが、まずは最初に操作できる「追跡者」がわかりやすい性能をしているのでオススメです。彼らには「アビリティ」のほかに「スキル」と「アーツ」があり、クールタイムごとに使用することができます。
筆者は魔女が心の底から大好きなので、異様にスタイルが良くて声が可愛い「隠者」を選択しました(初回はそのトリッキーな性能に翻弄され、まるで活躍できませんでしたが……)。
さて、マッチングも終わり、いよいよリムベルドへと旅立つときが来ました。ゆっくりと歩いていく三人組を後ろから舐めていくようなカメラに切り替わり、霊鷹に捕まって飛び去っていくところまでをじっくりと撮っていきます。それがあまりに勇ましい入場シーンだったのでびっくりしてしまいました。これが本当に毒沼で狂ったモンスターに襲われるゲームばかり作っているフロム・ソフトウェアの新作か!?
まずは上空からリムベルドを鳥瞰するところから入っていきます。降下場所はランダムですが、その見た目はバトルロイヤルゲームそのもの。この間に重要な拠点を探して、だいたいのルートを構築していくべきなのですが、まだ右も左もわからない状態なので、ひとまず手近な敵にケンカを売っていきます。
本作を遊ぶうえで念頭に置いていただきたいのは、本作がマルチプレイ型のアクションゲームであると同時に、RPGでもあるという点です。ザコを倒し、ルーンを稼いで、レベルを上げ、武器を拾い、ときには強化しつつ、ボスまでの準備を整えておく必要があります。
各施設を説明し始めるときりがないので割愛しますが、施設から施設に移動するあいだにザコ敵を倒し、徐々に強くなっていく(ファームする)という体験は、バトルロイヤルないしMOBAに似た感触を覚えます。
長距離を一気に移動できる霊鷹や、高所へ瞬時に移動できる霊脈ジャンプなど、有用な地点を地図から確認し「次はこっちの野営地で中ボスを倒そう」「先に教会へ寄って聖杯瓶を増やしておこう」とボイスチャットで話し合いながら、探索の効率を上げていく過程はまさしく現代のマルチプレイゲームのそれです。霊馬に乗れない代わりに左スティック押し込みによって全力ダッシュができるようになってスピード感も増したため、より気持ちよく探索をすることができるようになりました。
ゲーム中は時間経過とともに「夜」が来て「雨」が降り始めます。といっても、実際にキャラの頭上にしとしとと雨が降るわけではなく、エリア外から同心円状にじわーっと青白い壁が近づいてくる形です。雨の中に留まると継続ダメージを受けてしまうので、なるべく触らないようにしましょう。
もうおわかりでしょうが、これまたバトルロイヤルゲームでおなじみの「エリア縮小」に相当する要素です。だんだん探索できる箇所が減っていくので、外側にある大事なアイテムや施設を取り逃さないように計画的に進めていく必要があります。
改めて本作は『エルデンリング』で作り上げたアイテム・モンスター・バトルデザイン・マップアセットなどをふんだんに使いながら、スピーディーで忙しいマルチプレイヤー型ゲームとして構築し直したゲームなのです。こうして書くとトレーラーやホームページで紹介されている通りではあるのですが、いやはや、よくぞ思いついたものだと感心しますし、それらの要素がちゃんと噛み合って、面白い体験に昇華されているのも信じられません。
そして雨によってエリアが狭まり、残すところは幻影の黄金樹の真下だけになったとき、その日のボスが現れます。ゲーム中はいくら死んでも「持っていた分+1レベル分のルーン」をその場に落として近くに復活するので、拾いに行けばいいだけなのですが、このボスとの戦闘中に限っては、全員が同時に死亡するとゲームオーバーとなってしまいます。なので、敵の猛攻を搔い潜りながらも、しっかりと味方を蘇生してあげましょう。
このサイクルをDAY2でもう一度繰り返します。DAY2のボスを倒した時点で別の空間に飛ばされて、夜の王と対面し、このボスを倒せたところでようやく1マッチクリアです。な、長い……!
全滅するか、夜の王を倒すかすると大祝福に戻ってきますが、その際に「遺物」というものを何個か入手できます。こちらは各キャラクターに3つまで装着できるもので、ステータスや能力に恩恵をもたらします。
(一回のランの長さに対して、もらえる遺物の数や質が相当シブい気もしますが)レベルは1に戻るものの、すべてが無駄にならず、得たアップグレードをちょっと活用して、主に経験と知識をもとにもう一度挑戦するというスタイルは、ローグライク(ローグライト)のそれです。ちなみに進行度に応じてキャラクターたちの記録(ロア)も読めるので、いよいよ昨今のローグライトを意識している感じがあります。
こんな軟派にあらゆる流行りの要素を組み込んでいますが、それでもこのゲームは『エルデンリング』なんです!
忌み鬼、赤狼、ツリーガードにまた会える……『ナイトレイン』が『エルデンリング』の上に作られたゲームであることの意義
マルチプレイヤー体験のためにあらゆる要素を借りてきて、高いレベルでミックスできている点は純粋に素晴らしいですが、本作はそもそも高難易度アクションゲーム『エルデンリング』のIPであることを忘れてはいけません。その点について感じた良し悪しを語っていきましょう。
まず良い点として『エルデンリング』の遊びをもう一度隅々まで楽しめるというところがあります。
本作では武器やアイテムは現地調達であり、毎回何を入手するかはわかりません。なので『エルデンリング』では一切使っていなかったような武器が手に入るケースのほうがずっと多いわけです。むしろほぼすべてのソウルライクは、ビルドの作り直しが面倒なため、用意されている武器防具や魔法の総数に対して、1プレイヤーがそれらを試す機会が少なすぎるように感じます。
「この戦技は強いな」とか「こんな聖印あったんだ」とか、ランごとに何かしらの発見があり、まったく飽きが来ません。もちろんマルチプレイ用にほぼすべてのアイテムや魔法は調整されているのでしょうが、それでも『エルデンリング』が元々持っていたポテンシャルの高さに驚かされます。
他には、先行プレイ用ビルドがすでにゲームとして完成されているという点が挙げられるかと思います。10時間やった限り、バグに遭遇したのは一回だけでした。サーバーの状況にもよりますが、発売日からベータテストで遊んでいるような体験にはならないのではないかと筆者は考えています。
一方で、いくつかの問題点も見つかりました。まず最も大きな点として気になったのは、プレイヤーそれぞれの『エルデンリング』に対する習熟度が如実に表れるというところです。
筆者は多くの敵やアイテムを忘れてはいたものの、狭間の地で200時間以上過ごしたこともあり、アイテムの使い方から、戦技の打ち方、戦闘中の咄嗟の判断に至るまで、流石にすぐ思い出せて、あまり面喰らわずに遊ぶことができました(それでもすでに幾度となく死んではいますが)。
しかしながら、一緒に遊んだプレイヤーのひとりは『エルデンリング』はおろかソウルライクに触れる機会も少なかったということもあって、なかなか苦戦していました。
そもそも本作のチュートリアルの多くは『エルデンリング ナイトレイン』の新要素を教えてくれるものばかりで、そちらは丁寧な割に『エルデンリング』の遊び方についてはそこまでしっかりと教えてくれず、ほとんど手引書と指南書に格納されています。
そんな人と遊ぶときはプレイヤー同士で教えてあげたりするのが人情かとは思いますが、三人で足並みを揃えて遊べるようになるまでにはそこそこ時間がかかることでしょう。
他には、一回のランが長く、夜の王撃破まで遊ぶと平気で50分以上かかるという点はかなり問題ではないかと感じています。慣れてくれば道中の探索や中ボス撃破はルーティーンになっていくので、雑談しながらでも遊べるようになりますが、問題は夜の王です。
当然ながら道中のボスとは比べ物にならないくらい強く、モーションやギミックの理解や、隙を突くタイミングなど、要求されるハードルは高く、3対1でも厳しいボス戦と向き合うことになります。一般的なソウルライク作品ではボス部屋の前に戻されてやり直しのパターンが多く、何度かやっていればだいたい覚えられるものですが、本作は彼らに会いに行くまで50分かかるわけです……。
「一度夜の王に敗北したら大祝福の訓練場に入れてくれてもいいのでは?」と思うほど、彼ら相手に練習できる機会は少なく、モチベーションを保つのが難しく感じられました。
最後に、これはどちらかというと『エルデンリング』の問題点ですが、相変わらずディレイ攻撃やフェイントのオンパレードであり、ほぼすべてのボスが大袈裟なモーションで攻撃してくる技を持っています。タイミング良く回避したはずなのに、敵のディレイ攻撃を受けてしまうストレスは残念ながら健在です。
とはいえ、今回は三人プレイが主体ということもあり、こちらもやれることは多いので『エルデンリング』よりは不公平感は薄れたように感じます。むしろ『エルデンリング』でさんざん辛酸を舐めさせられた強敵「坩堝の騎士」を三人で絶え間なく殴り続けて何もさせずに倒したときなどは、胸がすく思いがしました。
ボス戦の最中には、時折ヘイトを買っているプレイヤーが赤い点で表示されるようになり、その点もまた良かったように感じました。なんなら常時表示されてもいいくらいですが。
細かい点だと、その日の終わりに来るボス戦以外はリタイヤや自殺ができない(タイトルには常に戻れるけれど遺物などの報酬がもらえなくなる)だとか、ひとりになるとスキルやアーツのリキャストを待って逃げ続けたほうがいい場面があるなど、いくつか気にはなりましたが、さほど大きな問題ではないでしょう。
『エルデンリング』への習熟度によってスタート地点に差がある点や、ランの長さとボスの強さとのバランスなど、見過ごせないところもいくつかありましたが、これだけの巨大コンテンツを改修し、高難易度アクションとマルチプレイゲームの良いとこどりを達成しているところは目を見張るものがあります。
とんでもなくハードで、50分間の努力を一瞬で溶かされることもある凶悪なデザインですが、なぜかもう一度出撃したくなる魔力を秘めた怪作です。今回は先んじて10時間ほどマルチプレイを遊ばせていただいた段階での評価ですので、今後クリアするまでのあいだに感想や印象が変わるかもしれませんが、現時点では間違いなく未だかつて誰も遊んだことのない唯一無二のデザインであり、フロム・ソフトウェアのマルチプレイゲームへの視座の高さを感じた作品でした。
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- 『エルデンリング』の武器や魔法などを片っ端から楽しめるデザイン
- 計画的に作戦やルートを構築して共闘できるマルチプレイ体験
- マップやアイテムへの理解によって徐々に上手くなっていく実感があるアクションゲームとしての質の高さ
- 『エルデンリング』への習熟によって体験に差が出る
- 一回のランが長すぎてボスへチャレンジできる回数が少ない
- ボスや敵の攻撃モーションに納得感がない
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※UPDATE(2025/05/29 02:47): 記事中の誤字を修正しました。