【日本市況】日経平均が5営業日ぶり反発、10年入札弱めで債券は下落
2日の日本市場は日経平均株価が5営業日ぶりに反発。米国で労働市場の軟化を示す経済指標を受けて追加利下げ観測が強まり、半導体株を中心に上昇したことが好感された。債券は10年利付国債入札の低調な結果を受けて下落。円は1ドル=147円台前半中心にもみ合った。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、1日発表の米経済指標も弱く、米利下げ期待はグロース株のバリュエーションにはプラスに働くと指摘する。一方で、上値を追う状況にはないとも言い、投資家は自民党総裁選後に財政刺激策が実際に打ち出されるかどうかなどを見極めようとしていると述べた。
1日の米国債相場は民間雇用者数の予想外の減少などを受けて急伸(利回りは低下)した。スワップ市場は年内1.9回程度の米追加利下げを織り込んでいる。
日本銀行の早期利上げ観測がくすぶる中、10年債入札では投資家の慎重姿勢が示された。日銀の内田真一副総裁は午後に全国証券大会であいさつし、経済・物価見通しが実現していくとすれば、政策金利を引き上げていくことになると述べた。その上で、見通しが実現していくかについては「内外の経済・物価情勢や金融市場の動向などを丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく」とした。
副総裁の発言を受け、円は146円90銭まで買われる場面があった。一方、長期国債先物12月物は夜間取引で2日終値比横ばい圏で推移しており、反応は限定的だ。
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株式・債券・為替相場の動き- 日経平均株価の終値は前日比0.9%高の4万4936円73銭
- 東証株価指数(TOPIX)は0.2%安の3087.4
- 長期国債先物12月物の終値は前日比5銭安の135円73銭
- 新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)高い1.66%
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の147円26銭-午後3時48分
株式
株式相場は日経平均が反発。東京エレクトロンやディスコといった半導体関連や、人工知能(AI)関連でソフトバンクグループなどが上昇。米半導体大手のインテルが受託生産(ファウンドリー)の顧客として米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)を加える方向で協議しているとの報道も追い風となった。医薬品や機械も高い。
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半面、銀行やサービス、小売りは安い。下期に入り9月までの上昇を受けた機関投資家の利益確定売りが続き、TOPIXは軟調に推移した。週末に迫る自民党総裁選や米国の政府機関閉鎖を巡る不透明感を背景に、投資家は慎重姿勢を崩していない。
ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長は、午後の取引では対話型AI「ChatGPT」を手がける米OpenAIの企業価値がスタートアップとして世界最高になったとのニュースが買い材料視された可能性があると話した。一方、TOPIX続落の主因は銀行株で、米政府機関閉鎖を受けて日銀の10月利上げ観測がやや後退していることが背景、と説明した。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、自民党総裁が決まった段階で株価は調整しやすく、TOPIXはそれを前倒しで織り込む動きになっていると指摘。外的要因では米景気への懸念や、10月は米国株のボラティリティーが高まりやすいことも重しになっていると言う。
債券
債券は下落。米長期金利が低下した流れを引き継ぎ高く始まったが、10年利付国債入札が弱めの結果に終わったことを受けて下落に転じた。
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SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、10年債入札は弱めの結果だったと語る。「日銀の利上げが意識されたことに加え、あすの植田総裁の講演や週末の自民党総裁選に対する警戒感が重しになった」と指摘。当面は金利上昇圧力が続くとの見方を示した。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、日銀利上げのタイミングについて「米政府機関の閉鎖が長引き、市場が混乱すれば先送りの可能性もあるが、ベースケースは今月」とみる。スワップ市場が織り込む10月の利上げの可能性は6割近辺で推移している。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.945% 1.235% 1.660% 2.620% 3.170% 3.405% 前日比 -0.5bp +0.5bp +1.5bp +1.0bp +2.0bp +2.0bp外国為替
円相場は1ドル=147円台前半で小幅な値動き。米国で政府機関の閉鎖や弱い経済統計を受けて金利低下とともにドルが売られた流れが一服した。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、4営業日連続でドル安・円高が進んだので「戻しが出ている」と指摘。その上で、政府機関閉鎖で米雇用統計の発表が遅れる可能性はあるが、よほどのことがない限り米追加利下げ期待の「大幅剝落はない」とし、ドル・円の上値は重くなるとの見方を示した。
日銀の内田副総裁の発言を受けて円は午後に一時買われたが、すぐに値を戻した。三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは「金融政策のスタンスは変えなかったし、前のめりになることもなかった」とし、あまり大きな反応はなかったと述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
— 取材協力 Aya Wagatsuma