遺伝子改変ブタの肺を脳死男性に移植、9日間機能 中国
中国で遺伝子改変ブタ(写真のブタとは別)の肺を脳死男性に移植する手術が行われた/Svetlana Repnitskaya/Moment RF/Getty Images via CNN Newsource
(CNN) 遺伝子を改変したブタの肺が脳死状態の男性に移植され、9日間機能したことが分かった。新たに発表された報告書で明らかになった。
近年、ブタの腎臓や心臓を人間に移植する試みはいくつか成功しているが、ブタの肺を人間に移植する試みはこれが初めてとみられる。医師たちは将来、臓器を必要とする人々にとってこれが選択肢となることを期待しているが、専門家はすぐには実現しないと指摘している。
中国の広州医科大学附属第1病院の研究者らは、この研究で患者の身元を特定せず、脳出血で脳死と診断された39歳の男性としている。医師らは男性の家族の同意を得た上で、ブタの肺を移植した。この研究結果は25日、ネイチャー・メディシン誌に掲載された。
ヒトからヒトへの移植、あるいは動物からヒトへの移植(異種移植とも呼ばれる)では、医師は感染や拒絶反応を注意深く監視する。
患者は感染と拒絶反応のリスクを軽減するため、複数の薬剤を投与された。肺自体にも6回の遺伝子編集が施され、ドナーのブタは生涯を通じて極めて清潔で厳格に管理された区域で飼育されていた。
この研究で、研究者らは移植後すぐに拒絶反応の兆候は見られなかったものの、わずか1日後には問題が生じたと報告している。
具体的には男性の体全体に広範囲に腫れが生じ、組織内に体液が蓄積した。これは血流障害が原因と考えられる。肺は呼吸を助けるだけでなく、血液循環にも重要な役割を果たしている。
移植後数日で部分的に回復の兆しは見られたものの、あらゆる予防措置にもかかわらず、医師らは男性の体が臓器を拒絶し始めている兆候を確認した。
男性の家族の要請を受け、医師らは実験を中止した。
「この研究はブタからヒトへの肺の異種移植の実現可能性を実証するものの、臓器の拒絶反応と感染に関する大きな課題は依然として残っている」と、研究者らは新たな研究論文の中で述べている。その上で、この処置を臨床試験で再度実施する前に、さらなる研究が必要だと結論付けた。
世界には臓器移植の莫大(ばくだい)な需要がある。米国だけでも、2023年にはすべての臓器移植の待機リストが、完了した移植件数の2倍に達していた。
昨年、米国では4万8000件以上の移植手術が行われたが、待機リストに登録されている人は10万3000人以上に上る。連邦保健資源事業局(HRSA)によると、米国では毎日約13人が移植を待つ間に亡くなっている。
ブタの弁は過去30年間、人間に移植されてきた。臓器移植はより複雑だが、遺伝子改変ブタの心臓と腎臓では限定的ながら成功事例が医師によって確認されている。遺伝子改変ブタの肝臓の移植も試みられたが、少なくとも現時点で、成功率は低いままとなっている。
これまでのところ最も成功したのは米マサチューセッツ州の男性で、今年1月にマサチューセッツ総合病院で遺伝子改変ブタの腎臓を移植され、現在も生きている。
ニューヨーク大学ランゴーン移植研究所に籍を置く移植外科医、アダム・グリースマー博士は、今回ブタの肺が機能した日数の短さに触れつつ、肺移植の成功に向けた一段の研究の重要性を強調した。