「鋼の鎧」パリを魅了 精密鋳造でアニメ再現したら…人材不足の部品メーカーに応募殺到「10人が800人超に」
芸術の都、パリ。世界中の文化が交差する街で、ある作品が注目された。 「すごく精密につくられていて、まるでこのキャラクターが目の前にいるみたい」 重厚な金属の質感、威厳のある目元…。これは人気アニメ『鋼の錬金術師』に登場するアルフォンス・エルリックを再現した鎧(よろい)だ。 製作したのは、福山市に本社を置く精密部品メーカー「キャステム」。新規事業本部の池田真一さんはこだわりについてこう話す。 「サイズ・形・重厚感・金属ならではの質感。とにかく再現力を追求しました」 キャステムが誇るのは、高温で溶かした金属を型に流し込んで成形する「鋳造」の技術。中でも、細かな凹凸や複雑な形状まで再現できる精密鋳造を強みとしている。 さらに、高精度3Dプリンターがその再現力を支える。3Dプリンターは、データをもとに立体造形物をつくりだす機器。キャステムではいち早く導入し、今では約100台を保有する。 「鋼の鎧」でも、最新の3Dプリンターで鎧の原型をつくり、金属を流し込む前の“型”として使用した。デジタルと職人技の融合こそが、圧倒的な再現力を可能にした理由だ。
では、なぜアニメキャラなのか。 普段は、航空部品や医療機器などの精密部品を製造するキャステム。しかし、部品だけをつくっていても知名度は低く、若者の採用に苦戦していたという。 2025年に広島県が県内の企業に行った調査では、人材が不足・やや不足と回答した事業所は約67%。中でも10〜20代の従業員が不足・やや不足と答えた事業所は約77%にのぼる。キャステムも例外ではなかった。 転機は2016年ごろ。 新規事業としてアニメ作品とのコラボレーションを始めたことで注目度が急上昇した。 池田さんは振り返る。 「以前はキャステムに入りたいという人材がなかなか集まらず、募集しても10人来れば良い方でした。それが最近は800人を超えています」 アニメと“ものづくり”のコラボは大きな反響を呼び、若者からの応募が殺到。実際、ニュースで同社製のモンスターボールを見たことが入社のきっかけになった社員もいる。 「福山市に住んでいてもキャステムという会社を知らなかった。『えっ、こんなのつくってるの?』って興味を持ちました」と話し、今は広報として魅力発信を担う。 一般の目に触れる機会が少ない精密部品。アニメキャラの力を借りて『自分たちの技術をPRしよう』という事業展開は、若者たちの心をつかんだ。
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キャステムのものづくりは海を越え、フランスへ。 展示会「エスプリアニメ アームアーティザナル」は2026年1月14日から4日間、パリの若者文化の中心・マレ地区で開催された。会場には、日本各地の企業が技術を生かして製作した作品11点が並んだ。 展示会を手がけた経済産業省中国経済産業局は、新しい手段としてアニメ・漫画など世界的に認知度の高いコンテンツと組み合わせることで、日本企業が海外展開しやすくするねらいがあると説明する。多くの来場者が訪れ、笑顔で作品を見つめたり質問を寄せたりする姿もあり、手応えは十分だったという。 展示を見た来場者たちの評価は高かった。 「すばらしい展示会です。使われている技術がそれぞれ違って、とても魅了されました」 「作品そのものをかなり忠実に細かく再現しているところが面白い。職人の技術の高さに驚かされます」 アニメをきっかけに日本のものづくりに触れる。その精密さは言葉の壁を越え、確かな驚きとして世界に伝わっている。 (テレビ新広島)
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