スティーブ・ジョブズから「素晴らしいアイデアですね。ありがとう」というメールが届いたエピソードを元NeXTのシステムエンジニアが語る

メモ

Appleの元従業員で、NeXTではシステムエンジニアを務めていた経歴を持つスティーブ・ヘイマン氏が、かつてスティーブ・ジョブズ氏から受け取ったメールについて語っています。

From: Steve Jobs. "Great idea, thank you." | #haymanSplaining

https://blog.hayman.net/2025/05/06/from-steve-jobs-great-idea.html 1991年10月、ヘイマン氏はNeXTの新人エンジニアとして働いていました。当時のNeXTの従業員数は合計400人で、そのうちカナダ在住の従業員は3人。その3人のうちの1人がヘイマン氏だったそうです。

ヘイマン氏は「1991年当時、NeXTのメールは本当に素晴らしいものでした。マルチメディア!フォント!添付ファイル!サウンド!誰もが慣れ親しんでいたコマンドラインの平文メールと比べて、どれほどクールだったかは言葉で言い表せません」とコメントしています。 当時コンピューターを起動するたびにメーラーに表示されたのが、以下のジョブズ氏からのメッセージ。このメッセージにはLip Serviceと呼ばれていた添付ファイルが含まれていました。これはメールに音声ファイルを埋め込むことができるという、当時としては画期的なアイデアでした。

以下が添付されていた音声ファイル。

Lip Service

NeXTでは、基本的に「名の頭文字」+「姓」の組み合わせをメールアドレスに設定していたとのこと。たとえば、ヘイマン氏の場合は「[email protected]」で、ジョブズ氏の場合は「[email protected]」といった具合です。

また、NeXTでは好きな名前を設定できるエイリアスを申請することが可能でした。そして、「[email protected]」というエイリアスを誰も使用していなかったことがわかったため、ヘイマン氏はそのまま「[email protected]」を「[email protected]」に転送するように申請。この申し出は自動的に処理され、無事に受理されたそうです。

しかし、これは大きな失敗でした。当時、外部の人がジョブズ氏のメールアドレスを「[email protected]」だと勘違いして送るケースが多く、それまでは宛先不明でエラーだったメールが一斉にヘイマン氏の元に届くようになったそうです。メディアの記者や他企業のCEO、財務担当者からのメールが大量に送られ、ヘイマン氏はパニックに陥ったとのこと。

そこで、エイリアスを再度申請し、「[email protected]」をジョブズ氏の「[email protected]」に転送するように依頼したとのこと。この申し出も問題なく受理されましたが、ヘイマン氏は自分のやったことをジョブズ氏に伝えた方がよいと考え、ジョブズ氏に一連の流れを説明するメールを送ったそうです。

これに対してジョブズ氏から届いた返事が以下。

「すばらしいアイデアだ。ありがとう」というシンプルなメッセージでしたが、ヘイマン氏は「このメールを印刷して額物に入れて、一体何が素晴らしいアイデアだったのかをみんなに想像させようかと何度も思いました」と語っています。 なお、2025年5月にAppleを退職したヘイマン氏のもとに、ティム・クックCEOから以下のメールが届いたとのこと。ヘイマン氏は「私のキャリアはスティーブ・ジョブズからのメールで始まり、ティム・クックからのメールで終わりました。私は本当に幸運な人間です」とコメントしています。

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