【日本市況】円下落、米PMI堅調の流れ-FRB議長講演控え様子見
22日の日本市場では、債券相場が超長期ゾーン中心に下落。新発30年国債利回りは過去最高水準を更新した。良好な製造業関連統計を受け前日の米国金利が上昇した流れが波及したほか、少数与党の自公政権による財政拡大懸念や日本銀行の追加利上げ観測が根強いことも債券売りの底流にある。
円相場は1ドル=148円台半ばで軟調、株式相場は4営業日ぶりに反発。ただし、カンザスシティー連銀の年次シンポジウムであるジャクソンホール会合で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演するため、内容を見極めようと様子見姿勢の市場参加者は多かった。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは債券相場について、パウエル議長の講演を目前に手控え感が強い中、自民党総裁選前倒しの可能性による財政悪化懸念や日銀の年内利上げ観測で市場心理が悪化していると話していた。
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22日の日本市場の債券・為替・株式相場の動き- 新発30年国債利回りは前日比2.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い3.205%
- 一時3.21%に上昇し、1999年の発行開始以来の最高を更新
- 10年債利回りは1bp高い1.615%
- 長期国債先物9月物の終値は1銭安の137円55銭
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の148円55銭-午後3時37分現在
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は0.6%高の3100.87
- 日経平均株価は0.1%高の4万2633円29銭
債券
債券相場は超長期債中心に下落。米市場で製造業活動を示す指数が予想より強く、長期金利が上昇した流れを引き継いだ。国内の財政懸念がくすぶる中、償還期間が長い国債を中心に軟調で、10年債利回りは前日に続き2008年以来の高水準を更新。20年債は一時2.665%と1999年以来の高水準を付けた。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、材料に乏しい環境下、ポジション調整の動きにより「フラットニング(利回り曲線の平たん化)」の巻き戻しが入っていると語った。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは超長期債利回りの上昇について、19日の20年債入札の結果がくすぶり続けていることが背景で、「超長期債のオフ・ザ・ラン債(既発債)の金利が上昇しており、それがカレント債(新発債)の金利上昇につながっている」とみていた。
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新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.855% 1.155% 1.615% 2.665% 3.200% 3.440% 前日比 横ばい +0.5bp +1.0bp +2.5bp +2.0bp +1.5bp外国為替
円相場は1ドル=148円台半ばで軟調推移。朝方発表された日本の全国消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、円がやや買われる場面もあったが続かず、午後に一時148円78銭と1日以来の安値を付けた。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは「米国で発表された製造業購買担当者指数(PMI)が予想比強く、米金利が上昇してドルが買われた」と解説。実需のドル買いも入ったと言う。PMIの数字を受け、パウエル議長が利下げに前向きなハト派的な発言をそこまでしないだろうとみて、持ち高を閉じる動きがあるとも指摘していた。
S&Pグローバルが21日に発表した米製造業PMIは、需要拡大で2022年5月以来の高水準となった。
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一方、ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、市場予想を上回った全国CPIを受けて一時円が買われた場面について、全体的に予想範囲内の内容で意外感はないものの、「日本のインフレもしっかりしている印象があった」と述べた。
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株式
東京株式相場は4日ぶりに反発。ただ、パウエル議長の講演を控えて積極的な買いは入りにくく、日経平均はマイナス圏で推移する時間帯が長かった。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、ジャクソンホール会合では短期的に議長発言に反応する可能性は否定できないが、モメンタムや構造が変わることはないだろうと話した。金利スワップ市場の9月の米利下げ織り込みは現時点で70%強に低下している。
HSBCホールディングスのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏もきょうの相場は方向感を欠き、パウエル氏が利下げ可能な時期に関する示唆をするかどうかに市場の注目が集まっていると語った。
東証業種別33指数は、金利上昇を材料に保険や証券、銀行など金融セクターが高く、非鉄金属や電気・ガス、輸送用機器も堅調。半面、化学や鉄鋼など素材株の一角は安い。アドバンテストや東京エレクトロンなど半導体関連の一部も軟調。米エヌビディアが部品サプライヤーに対し、人工知能(AI)半導体「H20」に関連する生産を停止するよう求めたと報じられたことが影響した。