米国がウクライナにパトリオットミサイルを500発売却、届くのは2030年以降
米国の国務省は10月30日「ウクライナにパトリオット迎撃ミサイル(PAC-3 MSE)を500発売却することを承認した」と発表したが、これはウクライナへの対外有償軍事援助を承認したというだけで「今回購入するPAC-3 MSEが直ぐに届く」という意味ではなく、ウクライナへの引き渡しは2030年以降の話だ。
参考:Ukraine – PATRIOT Advanced Capability-3 (PAC-3) Missiles 参考:Spain and Greece refuse to give up Patriots that could save Ukraine 参考:Greece explains why it is not supplying Patriot missiles to Ukraine 参考:US approves $2.1 billion Patriot missile sale to Ukraine | Reuters
ウクライナのイェウヘン・フマラ国防相は2026年9月に開催されたウクライナ国防連絡グループの会合で「パートナー国の支援とEUからの融資資金を活用して約1000発のパトリオット迎撃ミサイルの供給契約を締結している」「この将来調達する改良型ミサイルと引き換えに備蓄分からパトリオット迎撃ミサイルを引き渡してほしい」と要求し、要するに「パトリオット迎撃ミサイルを米国から新しく購入するので、ウクライナ国防連絡グループ参加国は備蓄しているパトリオット迎撃ミサイルを今すぐ提供してほしい。そうすれば保証期間が切れる前に新しいもので交換できる」という意味だ。
出典:Lockheed Martin
国務省は10月30日「ウクライナ政府へのパトリオット迎撃ミサイル=PAC-3 MSEおよび関連装備の購入に関する対外有償軍事援助(FMS)を承認する決定を下した。推定総費用は21億ドルでパートナー国および同盟国が全額を負担する」と発表し、PAC-3 MSEを500発購入する資金はカナダ、ドイツ、ノルウェーからの寄付金、EUのウクライナ支援融資で賄われ、ウクライナがパトリオット迎撃ミサイルを購入するのに米国の資金は一切含まれていない。
ドイツは2026年4月にウクライナ支援としてパトリオット迎撃ミサイル×数百発を供給すると発表し、RTXも「ウクライナ向けにPAC-2 GEM-Tを供給する37億ドルの契約を締結した」「今回の直接販売契約(対外有償軍事援助ではない)はドイツのシュローベンハウゼンに新設された工場で生産される」と発表し、PAC-2 GEM-Tの調達コストは推定400万ドル~600万ドルと言われ、NATO支援調達庁が2024年1月に結んだ1,000発分の契約も関連費用込みで55億ドル=1発あたりの取得コストは550万ドルなので37億ドルの調達規模は推定672発となる。
出典:RTX
つまりフマラ国防相が言及した「約1000発のパトリオット迎撃ミサイル供給契約」とは「PAC-3 MSEとPAC-2 GEM-Tをあわせて約1000発購入する」という意味で、ウクライナはまもなく23年間の保証期間切れを迎えるPAC-2 GEM-Tを最低でも200発保有するギリシャから支援を引き出したい考えだが、キリアコス・ミツォタキス首相は再三「自国の安全を損なうパトリオット迎撃ミサイルのウクライナ供給は行わない」と述べており、同じく保証期間切れを迎えるPAC-2 GEM-Tを保有しているスペインも交換の取引に応じるかは不明だ。
国務省が発表したウクライナのPAC-3 MSE×500発購入は「FMSを承認して議会に通知しただけ」の状態で、ロッキード・マーティンとの間に500発購入に関する契約が成立したという話ではなく、正式な契約が締結されてもウクライナに直ぐに引き渡されることもなく、2026年4月に契約が成立したPAC-2 GEM-Tも年内に操業を開始する新工場=ドイツのシュローベンハウゼン工場で生産され、ここではNATO支援調達庁が加盟国分の発注を一本化した1,000発、ポーランドが発注した9億8,800万ドル分(推定200発以上)も生産するため、PAC-2 GEM-Tが到着し始めるのは最速でも2027年後半以降の話だろう。
出典:President of Ukraine
ロイターはPAC-3 MSEの引き渡し時期について「2030年以降の話だ」と報じており、バイデン政権時代のように米軍備蓄を取り崩してウクライナに供給するなど現在の弾薬備蓄レベルでは到底不可能な話で、フマラ国防相が言う「約1000発のパトリオット迎撃ミサイル」がウクライナの防空能力強化に直結することはない。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin