パウエル議長、リスクのない道はないと強調-両面のリスク存在

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、労働市場とインフレの見通しにはリスクがあると指摘。追加利下げを検討する政策当局にとってこの先、困難な道が待っている可能性が高いとの認識を示した。

  パウエル氏は23日、ロードアイランド州のグレーター・プロビデンス商工会議所で講演。事前に用意された原稿によれば、「短期的なインフレへのリスクは上方向、雇用へのリスクは下方向に傾いており、厳しい状況だ」と発言。「両面のリスクがあるということは、リスクの全くない道は存在しないことを意味する」と語った。

  10月に開かれる次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げを支持するかどうかについては、何も示唆しなかった。

  この日のパウエル氏の発言は、先週のFOMC会合後の記者会見に近い内容だった。同会合では今年初の利下げが決定され、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4-4.5%となった。記者会見でパウエル氏は、労働市場で強まる警戒シグナルへの対応を狙った「リスク管理の利下げ」だと説明していた。

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  最近の統計や過去データの修正は、雇用創出ペースが急激に減速していることを示しており、当局者らはその実態を見極めようとしている。ただトランプ大統領が不法移民の取り締まりを強化する中で労働力の供給は減少しており、状況は複雑になっている。

  パウエル氏は「労働力の供給と需要の双方が顕著に鈍化している。これは異例かつ困難な展開だ」とし、「労働市場は活力が弱まってやや軟化しており、雇用への下振れリスクは高まっている」と述べた。

インフレに留意

  パウエル議長はただ、トランプ氏の関税が持続的なインフレ圧力につながる可能性に今後は留意すべきだとも強調。

  関税引き上げがサプライチェーン全体に浸透するには時間がかかり、一時的な価格押し上げが数四半期に及ぶ可能性があると指摘した。その上で、財の価格がインフレ加速の要因になっていると付け加えた。

  「価格上昇の大部分は広範な物価圧力というよりも、主に関税引き上げを反映していることを、最近のデータや調査は示唆している」とパウエル氏は述べた。

  FOMCが抱える今後の課題は、金利の適切な道筋を巡り当局者の見解が幅広く分かれている状況にも表れている。先週の会合後に公表された最新の金利予測分布図(ドットプロット)では、中央値で年内にさらに2回の0.25ポイント利下げを予想していることが示された。

  だが追加で1回の利下げ、ないし利下げなしを見込む当局者もいた。インフレ率が依然として目標の2%を上回っていることを理由に、慎重な姿勢を求める主張は残っている。

  パウエル氏はこの日の講演で、2008-09年の金融危機や新型コロナウイルスのパンデミックが「長く続く傷跡を残した」と述べた。

  また「世界中の民主主義国で、経済・政治機関に対する信頼が揺らいでいる」と指摘。「われわれ公職にある者は、荒波や強風の中でも、自らの使命を全力で果たすことに集中しなければならない」と語った。

原題:Powell Reiterates No Risk-Free Path for Fed Amid Dual Threats(抜粋)

(第7段落以降に議長の発言や背景を追加し、更新します)

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