会場には「異様な」展示も…空振りに終わったロシア経済フォーラム、国内へ経済“順調”アピールにも失敗したプーチン政権(Wedge(ウェッジ))

 ロシア第二の都市、サンクトペテルブルクで6月上旬に開催された国際経済フォーラムは、ウクライナによる近郊へのドローン攻撃で世界中の耳目を集めた一方、経済面で注目された事象はわずかで、プーチン政権にとっての成果はきわめて乏しいものとなった。プーチン大統領は対立する欧州を念頭に、西側諸国の凋落を揶揄する演説を行ったが、その反面ドイツが新たな商工会議所を開設したニュースが大々的に報じられるなど、欧州に対するロシア社会の根強い関心が逆に浮き彫りになっている。 【画像】会場には「異様な」展示も…空振りに終わったロシア経済フォーラム、国内へ経済“順調”アピールにも失敗したプーチン政権  フォーラムではロシアが占領するウクライナ東部への投資誘致を図る展示まで登場したというが、そのような取り組みはむしろ国際社会におけるロシアの異常性を浮き彫りにしている。フォーラムは国際との名称とは裏腹に、国内向けに経済が順調とアピールするのが実質的な意義だと言えるが、その効果も極めて不透明な内容だった。

「近視眼的な欧州連合(EU)のエリートらによる政策が、攻撃的なロジックとともに実行された結果、欧州は世界経済における地位を失い続け、さらに世界の安全保障をも棄損している。彼らは混乱をあおり、多くの国々を巻き込みつつある」 「世界貿易機関(WTO)は、それを創設した西側諸国により、その機能が棄損されている。彼らは自分たちに都合の良い時はWTOを推進し、都合が悪くなれば見捨てるのだ」 「どのような困難があろうとも、ロシアはその堅固な経済基盤の上で成長を続ける」  5日に行われたプーチン氏の演説は、従来と変わらない論法で、西側への批判を繰り返した。それは、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始したことで起きた世界経済の混乱の責任は一切棚上げにしながら、その後の西側の制裁などによって起きた副次的な混乱の結果を、西側の落ち度だと突きつける内容だ。

 一方でフォーラムをめぐっては、欧米がロシアに歩み寄ったと強調する報道が相次いだ。西側への優位性を誇示する狙いがうかがえるが、その内容は乏しく、むしろ国民が欧米の動向に強い関心を寄せている実情がうかがえた。  在ロシア・ドイツ商工会議所はフォーラム会期中に、サンクトペテルブルク事務所を開設し、その様子はロシアメディアで繰り返し報じられた。「対ロ関係を考え直したドイツ」「多くのドイツ国民は、対ロ制裁はむしろ自国にとって不利だったと考えている」などの論調が相次いだ。  ただ、制裁前は欧州でも特にロシアとの経済関係が深く、企業の対ロ投資も活発だったドイツの商工会議所がサンクトペテルブルクに事務所を開設したことは、そこまで経済的な意義は大きくはない。ロシアによる2014年のクリミア併合前に開催されたサンクトペテルブルク経済フォーラムには、ドイツのメルケル首相(当時)が企業団を率いて参加してプーチン大統領と会談するなど、まったく違うレベルの経済交流が行われていた。  フォーラム前も、ロシアメディアは「大規模なドイツの経済代表団が訪問する」などと報じたが、ドイツの主要メディアは「実際にフォーラムに参加した〝ドイツ企業〟は、ほとんどドイツとかかわりを持たない企業ばかりだった」と断じた。ドイツがロシアに大きくすり寄ったかの印象操作であった可能性もある。  米国をめぐっても類似の事象があった。ウシャコフ大統領補佐官は会期直前、米国から「公式代表団が訪問する」と発言し、国内外のメディアが一斉に報じた。ウシャコフ氏は、米国代表が同フォーラムに出席するのは「17-18年以来初めてだ」とも強調した。  しかし、代表団は米美術委員会のロドニー・クック委員長が率いるというもので、経済フォーラムの目的とは関係性が薄い内容だった。ロシアとの関係を一定程度重視するトランプ政権が、米国から代表団を派遣したという〝実績〟を残した格好だが、その訪問がどこまで実質的な意義を持っていたかは不透明だ。


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 97年に開始されたサンクトペテルブルク経済フォーラムは、かつては新興国として経済成長を続け、また政治的にもロシアとの関係を強化しようとする国々の首脳が相次ぎ訪問していた。日本からも18年に、北方領土問題の解決を目指した安倍晋三首相(当時)が参加した経緯がある。  しかし22年のウクライナへの全面侵攻開始以降、その様相は大きく変化している。今回の経済フォーラムではほかに、開催期間中に旧ソ連ウズベキスタンへの初の原子力発電所建設開始式典が行われ、同国のミルジヨエフ大統領とロシアのプーチン大統領がオンラインで出席したほか、ミャンマーの投資企業管理局との協力で合意するなどの成果があったという。  経済フォーラムの焦点となる5日の全体会合では、ミルジヨエフ氏のほかタンザニアの大統領、中国の高官らが出席したが、ロシアとは一定の関係を維持する旧ソ連の国と、食料分野などでロシアに依存するアフリカの国々の首脳が参加したことは、何ら不思議ではないのが実情だ。  フォーラム主催者は、今回の参加者は2万4500人にのぼり、6兆ルーブルを超える商談で合意されたなどと主張しているが、ロシアの経済フォーラムは毎年、巨額の合意があったと発表しても実効性が薄いものが積み上げられているのが実態と指摘され、詳細を確認することは困難だ。

 異様な展示も行われた。ロシアが侵攻し、一方的に〝国家〟だと認めたウクライナ東部ドンバス地方の二州を、ロシアの新たな共和国として紹介していたことだ。  フォーラムのホームページは、このように紹介していた。  ドネツク州の占領地域は〝ドネツク人民共和国〟との名称で、「工業地域であり、観光面でも潜在性がある。資源が豊かで、人的な資本も豊富だ。共和国は今、インフラの再建に取り組んでおり、生産設備の近代化を進めている。それゆえに、投資の受け入れや大型開発も可能だ」「人民共和国は、自由貿易地域、ビジネス優遇策、工業・農業分野での特別な支援を受けることも可能だ」などと主張した。  同様に、ルハンスク州も〝ルガンスク人民共和国〟として、「展示は共和国の経済、工業、文化的潜在力を強調している。地域の工業、鉄鋼業、農業、そして文化的特性は、この地に居住し、投資し、ビジネスを展開することへの魅力を示している」などと紹介されている。  両州はロシアが侵攻し、一方的に占領下に置いたウクライナの地域であり、そのような地に投資をする海外企業など皆無だ。そのような地域に投資を行えば、国際的な制裁対象にもなりかねない。  それでもロシアがこのような展示を行う狙いは、実効支配を誇示して、両州がロシアのものであると既成事実化する思惑がある。プロパガンダであり、その対象は海外というより、むしろロシア国内において〝これらの地域はウクライナ政府に虐げられ、自ら願ってロシアに加入した〟とロシア国内向けに主張することが主眼にあるといえる。

Wedge(ウェッジ)
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