【解説】約9000人の遺体を引き渡し…ロシアがウクライナへ戦死者“大規模返還” その狙いは?

今年6月に行われたロシアとウクライナの直接協議の後、戦死者の遺体交換の動きが本格化した。18日にはウクライナ兵1000人と、ロシア兵24人の遺体交換が行われた。ロシアはこれまでに、ウクライナより圧倒的に多い“約9000人の遺体を返還した”と主張。そこには、ある狙いも透けてみえる。

■ロシアは遺体返還に積極的…際立つ両国の差

ロシアとウクライナは今年6月の直接協議で、収容した相手国の戦死者の返還を進めることで合意。この遺体返還と捕虜交換は、直接協議のほぼ唯一の成果といえ、その後、本格的に実施された。両国の遺体交換をめぐって際立っていたのが、その数の差だ。

以下、ロシア側の発表に基づいて整理した。(ロシアメディアより)

⚫6月16日までに

 ウクライナ兵の遺体は約6000人、ロシア兵の遺体は78人

⚫7月17日

 ウクライナ兵の遺体は1000人、ロシア兵の遺体は19人

⚫8月19日

 ウクライナ兵の遺体は1000人、ロシア兵の遺体は19人

⚫9月18日

 ウクライナ兵の遺体は1000人、ロシア兵の遺体は24人

■ロシアの狙いは“ウクライナへの揺さぶり”か

写真:AP/アフロ

イギリス・BBCはこの差について、「ロシア軍は占領地域を拡大していて、戦死した自国兵士の多くを収容できているものとみられる」ためだと伝えた。プーチン大統領は今年6月、「すでに6000人以上の遺体を引き渡した。さらに約3000人を引き渡す用意がある」と述べた。9月18日の遺体交換で、言及していた合計約9000人を引き渡した形だ。

ロシア側は当初から、この遺体の返還に積極的な姿勢を見せてきた。そこには、ウクライナ側の人的損失を浮き彫りにすることで、揺さぶりをかける狙いが透けてみえる。

■遺体の身元確認に苦慮するウクライナ

写真:ロイター/アフロ

ロイター通信は16日、ロシアから返還された数千人の遺体の身元確認で、ウクライナの法医学研究所が苦慮していると報じた。ウクライナ内務省は2022年以降、DNA鑑定ができる研究所を9か所から20か所に増やし、研究者の数も2倍以上の450人に増やした。しかし、一連の大規模な遺体返還には対応できていないという。

またウクライナ側は、引き渡された戦死者の中にはロシア兵の遺体が混在していたと主張。ロシア側の対応に不満を募らせている。身元確認が困難な遺体も数多くあるといい、確認作業の長期化が懸念されている。

関連記事: