ヘグセス米国防長官、民間アプリで空爆情報を妻らと共有か トランプ氏は擁護

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画像説明, ピート・ヘグセス米国務長官は民間通信アプリ「シグナル」のグループチャットで、妻ジェニファー・ロシェ氏(右)らと軍事作戦の詳細を共有していたと報じられた

ピート・ヘグセス米国務長官が、民間通信アプリ「シグナル」のグループチャットで、妻や弟、個人弁護士らと米軍の空爆作戦の詳細を共有していたと、米メディアが20日に報じた。ドナルド・トランプ大統領は21日、ヘグセス氏に「大きな信頼」を寄せていると擁護した。

シグナルのチャット上での、米軍の作戦情報の共有をめぐる報道は今回で2度目。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、今回の事案に詳しい情報筋の話として、ヘグセス氏がアメリカのイエメン空爆に関する情報を、シグナルのチャットで共有していたと報じた。

ホワイトハウス関係者は、軍事計画がシグナルのチャットで共有されていたとの報道を、大ごとに見せないようにしているが、報道内容自体は否定していない。

トランプ氏は21日、「ピートは素晴らしい仕事をしている」と記者団に語った。「みんな彼に満足している」。

さらに、ヘグセス氏に「大きな信頼」を寄せているとも述べた。

そして、「またシグナルの話を持ち出すのか? 2週間前に諦めたはずだというのに。メディアは相変わらず同じことを繰り返している」、「何か新しいことを見つけてみろ」と、トランプ氏は述べた。

メディアが引用した情報筋については。「不満を持つ従業員のようだ」と述べた。トランプ氏の反応に先立ち、ヘグセス氏は21日、ニュースメディアは「人を攻撃して炎上させようとする」「でっちあげ屋でいっぱいだ」と主張した。

米紙ニューヨーク・タイムズが最初に、ヘグセス氏がチャット上で軍事情報を共有したと報じた後、ヘグセス氏は報道に直接反応はしなかった。

ホワイトハウスは同紙宛ての声明で、機密情報の共有はなかったと主張した。

ヘグセス氏は3月15日、F/A-18ホーネット戦闘攻撃機の飛行スケジュールを含む、イエメンの武装組織フーシ派に対する空爆情報を、チャットで共有したとされる。

ヘグセス氏の妻ジェニファー・ロシェ氏は米FOXニュースの元プロデューサー。現在、国防総省で正式な役職には就いていない。ヘグセス氏は以前、外国の首脳との会合に妻を同席させたと報じられ、批判を受けたことがある。

シグナルのグループチャットに妻と共に含まれていたと報じられている、弟フィル氏と個人弁護士ティム・パラトーレ氏は、いずれも国防総省で役職に就いている。しかし、この3人の中に、慎重に扱うべきアメリカの軍事攻撃計画について事前の警告を必要とする者がいるのかは明らかではない。

ニューヨーク・タイムズによると、今回報じられたグループチャットは、最初に判明したチャットとは異なり、ヘグセス氏が作成したものだった。しかし、「国防|チームハドル」と題されたこのチャットでも前回と同様に、イエメンのフーシ派拠点への軍事作戦の詳細が共有されていたとされる。

ホワイトハウスは先月明らかになったチャットについても、機密情報は共有されていなかったと主張している。しかし、民間のチャットグループ上でこうした内容を協議すれば、米軍関係者を危険にさらす可能性があると、元米国防関係者らは批判している。

シグナルはエンドツーエンドで暗号化されており、メッセージの送信者と受信者のみがその内容を見ることができる仕組みになっている。こうした高度なセキュリティーにもかかわらず、専門家によれば、誰かが情報を見たり、間違った人と共有したりする可能性はある。そのため、機密性の高いやり取りは通常、個人のものではなく、政府が管理する安全な端末などを介して行われるとされる。

今年は8920億ドルの予算を管理する国防総省のトップをめぐっては、ほかにも論争が巻き起こっている。

ヘグセス氏は先週、「無許可の情報公開 」を理由に3人の高官を解任した。3人は「根拠のない」主張だと反論している。

ヘグセス氏は20日、ホワイトハウスでのイースターの恒例行事に先立ち、チャットをめぐる報道が出たのは、自分が解任した高官が原因であるかのように語った。

「数人の情報漏えい者が解任された途端、一連の攻撃的な報道が出るとは、まったく驚きだ」

ヘグセス氏は報道内容を否定したうえで、トランプ氏と話をして、自分たちは「ずっと同じ考え」であることを確認したとも述べた。

国防総省の報道官を先週解任されたジョン・ウルリオット氏は、20日に米政治ニュースサイト「ポリティコ」に寄稿した論説で、国防総省は「完全な混乱」に陥っていると書いた。

そして、「この機能不全は、いまや大統領にとって重大な妨げとなっている。(大統領は)幹部からもっといい対応を受けるべきだ」と付け加えた。

ウルリオット氏は、解任された3人が情報を漏らしていたという話は事実ではないとし、「残念なことに、ヘグセスのチームは、同僚について匿名で、簡単に誤りを証明できるような全くのデマを流布する癖がついてしまった 」と書いた。

しかし、国防総省の現報道官ショーン・パーネル氏は、「トランプ氏を嫌うメディア」は「トランプ大統領のアジェンダにコミットする人物なら誰であれ、打ち砕こうとしている」と述べた。

さらに、「シグナル上のどのチャットにも機密情報はなかった」と、ホワイトハウスの主張を繰り返した。

フーシ派は、同様にイランの後ろ盾を受けるイスラム組織ハマスとイスラエルの戦争を受け、2023年11月以降、イエメン沖のアデン湾や紅海を航行する商業船舶数十隻に対し、ミサイルやドローン(無人機)、小型ボートによる攻撃を仕掛けている。ガザ地区のパレスチナ人への連帯を示すためだとしている。

米政府は、イエメンのフーシ派拠点への攻撃は、国際貿易において重要な水路で船舶を攻撃するフーシ派への「罰」だとしている。

フーシ派運営の保健省は先週、米軍がイエメン北西部の石油ターミナルを空爆し、少なくとも74人が死亡、171人が負傷したと発表した。

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