【米国市況】S&P500が最高値、決算期待で-財務長官発言で金利低下

22日の米国株市場ではS&P500種株価指数が小幅高。終値ベースで過去最高値を更新した。近く始まる大企業の決算シーズンに注目が集まる中で買いがわずかに優勢になった。関税協議の最新の動きも意識された。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6309.62 4.02 0.06% ダウ工業株30種平均 44502.44 179.37 0.40% ナスダック総合指数 20892.69 -81.48 -0.39%

  S&P500種では400銘柄余りが上昇。大型ハイテク7銘柄で構成される「マグニフィセント・セブン指数」は10営業日ぶりに下落したが、23日に決算を発表するテスラとアルファベットは上昇した。DRホートンをはじめ住宅建設株は値上がり。百貨店のコールズは一時105%上昇。「ミーム株」の仲間入りを果たした。

  向こう数週間に大手テクノロジー企業が四半期決算を発表し、その力強さが改めて浮き彫りになる見通しだ。S&P500種企業の利益成長の大部分は、引き続き人工知能(AI)の進展から恩恵を受ける企業がけん引している。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによると、マグニフィセント・セブンの7社は4-6月(第2四半期)の利益が全体として14%増加すると予想されている。一方、他のS&P500種構成銘柄の利益については、ほぼ横ばいが見込まれている。

  ニューヨーク・ライフ・インベストメンツのローレン・グッドウィン氏は「市場の健全性を維持する上で、大手テクノロジー企業は引き続き極めて重要な存在だ」と指摘。「AI主導の企業が今後もテクノロジーセクターの成長をけん引するとみている。企業レベルでのAI導入は進展しつつあるが、この技術の応用面はようやく試験段階に入ったばかりだ」と続けた。

  トレジャリー・パートナーズのリチャード・サパースティーン氏は「大手テクノロジー企業で堅調な利益成長が見込まれるほか、ハイパースケーラー(大規模クラウドサービス事業者)によるAIインフラへの大規模な支出も継続する見通しだ」とし、「こうしたAI関連の支出と投資は、将来の利益成長を下支えするだろう」と述べた。

  通商協議では、トランプ大統領は米国とフィリピンが貿易協定で合意に達したとし、同国からの輸入品にかける関税率を20%から19%に引き下げると発表した。またカナダのカーニー首相は、10日以内の合意成立に対する期待を抑える姿勢を見せつつ、米国との関係の安定化に取り組む意向を示した。

  ベッセント米財務長官は、来週ストックホルムで中国側の当局者と会談し、3回目となる通商協議を行うと述べた。

関連記事:ベッセント財務長官、日米交渉は順調-中国と来週通商協議へ (2)

  ベッセント氏はFOXビジネスで、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長について、今辞任すべき理由は見当たらないと述べた。トランプ氏はこの日、パウエル議長への批判を再び展開。政策金利は現行水準より3ポイント低くあるべきだと改めて主張した。同じく大統領執務室で行われたイベントに同席していたベッセント長官は、「昨秋の利下げの動きを踏まえれば、FRBは今利下げを行うべきだ」と述べた。

関連記事:ベッセント長官、パウエル議長が今辞任すべき理由見当たらない (3)

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブハーディ氏は、「上乗せ関税を巡る8月の期限が近づくにつれて市場のボラティリティーは高まると予想される。FRBの独立性に対する脅威や地政学的な不確実性も根強く続いている」と述べた。

国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。一時下げていたが、上げに転じた。ベッセント財務長官が、パウエルFRB議長について、辞任すべき理由は見当たらないと述べたことが手掛かり。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.92% -2.8 -0.56% 米10年債利回り 4.34% -3.4 -0.77% 米2年債利回り 3.83% -3.2 -0.82%     米東部時間 16時51分

  利回りは幅広い年限で3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度低下。金融政策に特に敏感な2年債の利回りは一時3.82%と、3日以来の低水準を付けた。

  関税のインフレへの影響を見極めるため政策金利を据え置いているパウエル議長に対し、トランプ大統領は批判を強めている。そうした状況から、パウエル議長の進退は債券投資家の重要な関心事となっている。ベッセント財務長官はFOXビジネスで、パウエル氏が望むのであれば5月の任期満了まで議長にとどまるべきだとの考えを示した。

  クレジットサイツの投資適格債・マクロ経済戦略責任者ザカリー・グリフィス氏は「ベッセント氏がパウエル議長の任期全うを支持していることは、少なくともイールドカーブの長期ゾーンには一定の安心材料となる可能性がある」と述べた。  

為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が低下。米国債の利回り低下につられる形で下げた。パウエルFRB議長の進退が引き続き注目される中、オプション市場ではドルに対する売り圧力の兆候が強まりつつある。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1195.80 -4.72 -0.39% ドル/円 ¥146.66 -¥0.72 -0.49% ユーロ/ドル $1.1752 $0.0058 0.50%     米東部時間 16時51分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数の1カ月物リスクリバーサルは、プット(売る権利)がコール(買う権利)を約14bp上回っており、7月初旬以来で最も弱気な水準となった。

  TJM FXの戦略責任者アルバロ・ビバンコ氏は「現在の水準はドルのショートポジションを増やす好機だと考えている」とし、「9月のFOMC会合や他の中銀の政策会合を踏まえると、2カ月先を見据えたポジションに妙味がある」と述べた。

  円は対ドルで上昇。一時0.7%高の1ドル=146円31銭を付けた。日本銀行は、参院選での与党敗北を受けても、現在の物価目標実現シナリオと利上げ継続路線を変更する必要性は大きくないとみている。今後の財政政策による経済・物価への影響を注視する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。

関連記事:日銀は与党敗北でも利上げ路線堅持、目標実現シナリオも維持-関係者

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3営業日続落。8月1日の上乗せ関税発動期限を控え、米国と貿易相手国の交渉の行方が意識された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限がこの日、最終取引日を迎えるのに伴い、持ち高のロールオーバーが進行し、市場のボラティリティーが高まった。

  欧州連合(EU)と米国の貿易交渉にも注目が集まっている。トランプ大統領は8月1日までに合意が得られなければ、EUからの輸入品の多くに30%の関税を課すと警告している。

  ラボバンクの世界エネルギー担当ストラテジスト、ジョー・デローラ氏は「下振れリスクとしては、第4四半期(10-12月)から2026年第1四半期(1-3月)にかけて想定される長期的な供給過剰に加え、8月1日の関税発動期限もある」と指摘した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比99セント(1.5%)安い1バレル=66.21ドルで終了。中心限月の9月限は1%安の65.31ドルとなった。ロンドンICEの北海ブレント9月限は0.9%下げて68.59ドルで引けた。

  金相場は3日続伸。ドルが売られ、引き続き相場の追い風となった。

  ベッセント財務長官はパウエルFRB議長について、今辞任すべき理由は見当たらないとの考えを示した。一方、トランプ大統領はパウエル議長を再び批判。米政策金利を現行水準から3ポイント引き下げるべきだとの考えを改めて主張した。

  トランプ政権による政治的介入やパウエル議長解任観測を背景に、FRBの独立性を巡り懸念が広がっている。これはドルにとっては逆風で、安全資産としての金の需要を押し上げている。

  TDセキュリティーズのアナリスト、ダニエル・ガリ氏は「ドルは価値の保存手段としての機能を失いつつある」とリポートで指摘。その上で、金はその恩恵を非常に受けやすい環境にあると述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時38分現在、前日比33.35ドル高の1オンス=3430.40ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は37.30ドル(1.1%)上げて3443.70ドルで引けた。

原題:Stocks Hold at Record Highs Before Megacap Results: Markets Wrap(抜粋)

S&P 500 Wavers Near Record Before Tech Earnings: Markets Wrap

US Treasuries Edge Higher as Bessent Offers Support for Powell

Dollar Falls With US Yields as Focus Remains on Fed: Inside G-10

Oil Extends Loss as Trade Negotiations Intensify Before Deadline

Gold Gains with Weaker Dollar as Traders Weigh the Fed’s Future

関連記事: