「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭蓋骨から何が分かった?(ニューズウィーク日本版)

約100万年前の頭蓋骨の化石を分析した国際共同研究により、ホモ・サピエンス(現生人類)の出現時期が定説より40万年早く、現在より100万年以上前にさかのぼる可能性が示された。 【動画】人類進化の定説を覆しかねない頭蓋骨、鄖県2 中国で1990年に発見された頭蓋骨「鄖県(ユンシェン)2」は従来、原人の「ホモ・エレクトス」に属すると考えられていたが、新たな分析により旧人「デニソワ人」にかなり近い系統の「ホモ・ロンギ(通称ドラゴンマン)」のものであることが分かった。 現生人類により近い系統のグループの化石が定説より古い年代に見つかったとして、「人類進化の物語を完全に変える」発見だとこの論文の著者たちは主張している。 共同著者の1人が属するロンドン自然史博物館によると、この発見は過去80万年の間に出現した大きな脳を持つホモ属(ヒト属)のほとんどが、エレクトス、ハイデルベルゲンシス、ロンギ、サピエンス、ネアンデルターレンシスという5つの主要な系統にさかのぼることができることを示しているという。 また、これらの系統が100万年以上前にすでに分岐していた可能性をも示唆している。人類の進化がこれまで考えられていたよりもはるかに長く、複雑な過程をたどってきたと考えられるのだ。 今回の研究論文は9月25日に科学誌『サイエンス』に発表され、上海の復旦大学や北京の中国科学院の研究者、ロンドン自然史博物館の古人類学者クリス・ストリンガーらが研究に参加した。

今回の研究対象となった鄖県2は、1989年と1990年に中国中部・湖北省十堰市の鄖陽区で発見された2つの化石頭蓋骨のうちの1つ。 押しつぶされ損傷が激しかったため詳細な分析が難しく、発見当時の研究者たちは、これをホモ・エレクトスに属すると考えていた。 しかし今回、高度なCTスキャン、構造化照明3Dスキャン、精密な仮想復元技術を用いて鄖県2の本来の形状を復元。そのうえで、100点以上の化石標本と比較した。 その結果、鄖県2はホモ・エレクトスよりも脳容量が大きいホモ・ロンギやホモ・サピエンスに近い特徴を持つことが判明した。一方、顔の下部が突き出している点など、ホモ・エレクトスに見られる特徴も備えていた。 ちなみに、3つ目の頭蓋骨が2022年に近くで発見されているが、まだ本格的な分析はされていない。 今回の研究は、ホモ・ハイデルベルゲンシスやネアンデルタール人、ホモ・サピエンス、ホモ・ロンギといった系統に属する、より古い時代の未発見のヒトが存在していた可能性をも示すという。 また、現生人類が他のヒトの姉妹種と従来考えられていたよりも長期間にわたり共存していた可能性もある。 自然史博物館の人類進化研究の責任者でもあるストリンガーは「鄖県2が100万年前から30万年前の間に存在する『混乱期』の多様な人類化石の謎を解く手がかりになるかもしれない」と述べている。 「このような化石はわれわれが自らの起源について、いかにまだ分かっていないことが多いかを示している」

ニューズウィーク日本版
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