【大失敗】寝ホンの代わりに「就寝用骨伝導スピーカー」を買ったらまったく使い物にならなかった話

「寝ホン」こと就寝時用ワイヤレスイヤホンも一般的になり、動画や音楽を耳に流しながら眠りにつく人も多いだろう。筆者は就寝時にオーディオブックを聞く習慣がある。小説などの朗読は単純に面白いし、寝つきが悪い日でも「なんとなく有意義に過ごした」という気になって精神衛生上とてもよい。

再生自体はタイマーで止まるが、イヤホンのほうは気がつくと装着したまま朝になっていることも多い。しかし、イヤホンの長時間着用は耳の健康によくないというし、衛生面も気になる。そこで思いきって就寝時に特化した骨伝導スピーカーを買ってみた。まさか一週間もせずお蔵入りになるとは思いもせずに……

・枕の下に入れる骨伝導スピーカー

購入したのはピロースピーカーとかスリープスピーカーとか呼ばれるアイテムで、大手通販サイトでは4000円台から見かける。

Bluetoothで再生端末と接続し、枕の下に入れると骨伝導で音が伝わる。空気中にもれる音はわずかなので、たとえば同じベッドでパートナーや子どもが寝ていても邪魔にならない。耳をふさがないからアラームなども聞き逃さないし、つぶれた耳が痛くなることもない。とてもいいコンセプトだと思った。

本体は手のひらサイズ。枕の下にあっても凸凹を感知できないほどの大きさだ。一度充電すれば5夜くらいは持つようなので、ワイヤレスイヤホンよりも扱いやすいし、接続操作も簡単だった。

試しにYouTubeを再生し、耳の位置を確認しながら枕の下に入れると、はっきりと音声が聞こえる! YouTuber本人の声質がクリアに再現されているかと問われると、やはりそこは劣化しているような気がするが、そもそも就寝時は半分寝ぼけているのだから気にならない。

普通のスピーカーなら、枕のような布製品を挟んだら音がくぐもって使い物にならないことを考えると新鮮な感動がある。なかなかいいじゃないか!

ところが。

・盲点だった……

しばらく使っているうちに「おや?」と思った。少しでも頭の位置が動くと、途端に音声が聞こえなくなる。クリアに聞こえるのは、耳の直下にスピーカーがあるとき限定。寝返りはもちろん、ほんの数センチ頭が横にずれただけでもダメだ。ベスポジを見つけたら、そこから一切移動できない。筆者はふだん仰向け寝なのに。ツラい。ツラ過ぎる。修行か……!

それに、これまで左右の耳から入ってきた音が、片側に偏るのは生理的に少し気持ちが悪い。片耳が詰まっているような錯覚に陥る。

ちなみにボリュームをかなり上げ、首の裏くらいに入れることで、仰向けでも左右から聞こえるようになる。しかしそうすると、枕に接していなくても普通に空気中の音として聞こえる。

すぐ隣に人が寝ている、という状態でもない限り迷惑にはならないだろうが、もし部屋に家族が入ってくるようなシチュエーションなら内容まで聞き取れる。こうなるともう、骨伝導である必要はない。普通のスピーカーでいいじゃん。

さらに「耳をふさがないから周囲の音を聞き逃さない」というのは本当で、屋外の車の走行音などがストレートに耳に届く。鼓膜vs骨伝導だと、どうも鼓膜のほうが強いようで、車が通るたびに音声がマスクされて聞こえなくなる。

音楽ならともかく、オーディオブックのような文章読み上げの場合、数文節でも聞き逃すと意味がわからない。枕に耳を押し当て、集中して聞き取ろうとするので眠れやしないっっっ……!

些細なことなのだけれど、AirPodsのようにタップで再生・停止・巻き戻し操作ができないのも地味に不便だ。聞き逃したから数秒戻したい、なんてときにはゴソゴソとスマホや本体をあさり、明かりを点灯させて操作することになる。

ダメだ、いろんなことが気になり過ぎて、物語の世界に没入できない……!

・夢の新技術

考えてみれば当然なのだが、骨伝導が威力を発揮するのは「適切な骨に機器が触れている」ときだ。頭の位置がずれるなどして、たびたび聞き逃してしまうので、オーディオブックのような用途にはまったく不向きだった。

位置がずれても聞こえるようボリュームを上げれば、音が空気中に出るので普通のスピーカーと変わらない。愚かにも、筆者は骨伝導という新技術に夢を見過ぎていたようだ。同じ失敗をする人が出ないよう、ここに赤っ恥を記す。

執筆:冨樫さや Photo:RocketNews24.

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