“AIミニスパコン”に大興奮。ヘビー級ローカルLLMもさくさく動く「夢のマシン」

Photo: かみやまたくみ

すごいのがきてますよ。

Asusが2025年10月に発売した新型パーソナルAIスーパーコンピューター「Ascent GX10」(以下、GX10)。実機をお借りできたので触っていたのですが、ちょろっと触った時点で心に突き刺さり、欲しくなりすぎて困ってしまいました。

GX10の目玉はその強烈な処理性能。一般的なAI PCは数十TOPS規模ですが、GX10は1ペタフロップとされています。これを単純換算するとAI PCの約100倍にあたる数千TOPSクラスとなり、ミニPCサイズでありながら桁違いのパワーを備えています。

重量級のローカルLLMや画像生成AIを延々動かし続けられるように設計されており、AI研究開発者・データサイエンティストなどを想定ユーザーとする“個人サイズのスパコン”です。

手軽に買える製品ではまったくないのですが、超性能が手のひらサイズに詰め込まれているのがエグい。自分のデスクを「AI研究開発室」に変えられる、夢がありすぎるガジェットになっています。

率直に言って、今年触れたデジタルデバイスの中でいちばん興奮しました。AI需要の高まりに対して登場した新しいタイプのPC製品で、「次世代のPCライフ」を感じさせてくれたからです。

あまりにも小さく、精緻なボディ

Photo: かみやまたくみ

GX10は立方体の箱に収められており、その時点でもう異質でした。

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しかも、デザインが非常に美しい。筐体は上質な金属製で、天板に刻まれた演算格子を思わせる微細なパターンが印象的です。

Photo: かみやまたくみ

全体的にすっきりした印象ですが、ひっくり返して震えました。均一なスリット、シャープなエッジ、それらの異常なまでの設計密度。

詰め込まれた通気孔は、激しいAI処理に対して適切な吸気・排気を行うためのもの。資料には、同クラス比で1.6倍、熱を逃がせる領域を拡張したと記されていました。

何より驚いたのが、そのサイズと重量です。公称値は15cm×15cm×5.1cmで1.48kg。

「コンパクトなハイスペックマシン」と比べて性能はさらに上、サイズは圧倒的に小さいPhoto: かみやまたくみ

GX10の性能を比べるなら最上位のデスクトップマシンになります。でもその中ではもっともコンパクトな部類となるMac Studioと比べてこのサイズ感。Mac miniよりちょい大きくて重いくらいなのはかなりキてます。

重量的にはMacBook Pro 14インチ(1.55kg)に近く…

14インチノートPCと同じくらいの重さPhoto: かみやまたくみ

大きめのトートバッグなんかで一緒に持ち歩くこともできました。

Photo: かみやまたくみPhoto: かみやまたくみ

詳しくは後で触れますが、これにも意味があるのがまたエグい。

激重ローカルLLMがさくさく動く

初期設定の際にはディスプレイ・マウス・キーボードが必要ですが、「活用フェーズ」に入ればなしで使えるようになっていますPhoto: かみやまたくみ

軽くセットアップして使ってみたのですが、性能については本当にスゴいの一言。トップクラスのローカルLLMを使い倒せる水準なのはあまりにも熱い。

GX10上でgpt-oss:120bを動作させているところ。Ollama with Open WebUIを用い、PDF論文を分析して質問に回答させている。最初、モデルの読み込みやソースの処理に少し時間がかかり、それ以降は重量級モデルとは思えないスピードで動作しているのが見てとれます。DGX OSのスクリーンショット機能で撮影した関係で少々画質が粗くなっていますVideo: かみやまたくみ

ゲーミングPCでもロードさえキツい激重ローカルLLM「OpenAI gpt-oss:120b」が軽快に動作しました。ファイルサイズが60GBもあるので読み込みには少しかっていますが、回答の生成は29.6トークン/秒と高速です。軽量版の20bでさえけっこうなスペックを要求されるLLMですよ?

128GBのユニファイドメモリと本格的なAI推論用GPU(Soc)「NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip」がもたらす性能はモンスター級と言ってよく、パラメータ数200Bまでのモデルを動作させられます。複数走らせてローカルエージェントシステムを構築したり、ファインチューニングを実行したりも可能です。

今回はLLMを試しましたが、ComfyUIで画像系のAIを使うのはもちろん、ファインチューニングまで可能。完全にやりたい放題です。

今の環境に「強烈なローカルAI性能を後付け」する

GX10で何より熱いのが「今自分が使ってるPCから接続して使える」という点です。以下の画像はMacからGX10上で起動したローカルLLMツール(Ollama with Open WebUI)にリモート接続・表示しているところを撮影したものです。

GX10で起動したOllama with Open WebUI(チャットボットシステム)にMacのブラウザからアクセスしているところPhoto: かみやまたくみ

Win/Mac向けにNVIDIA Syncというアプリが公開されており、これをインストール・GX10とつなぐことで「いつもの環境」で強力なローカルLLMを運用可能となっています。

Mac版NVIDIA Sync。Cursor・VSCodeといった開発アプリからも接続可能となっていますPhoto: かみやまたくみ

GX10はDGX OSというLinuxベースのOSを採用しているため、最初は「そこから使わないといけないのはさすがに厳しいなぁ」と思ったのですが、実態は少々異なっていました。電源をオンにしてメインPCからつないで使うのが主に想定・推奨されています。

この使い方をするなら、GX10にはディスプレイ・マウス・キーボードが必要ないのは運用面での大きなポイントです。初期設定を終えたら、本体の電源を入れるだけでよくなります。ノートPCとGX10&その電源ユニットだけで、省スペースに強力なローカルAIを運用できてしまう。

GX10の同梱品。240Wの電源アダプターとケーブル、説明書と保証書、本体だけPhoto: かみやまたくみ

電源ユニットは240Wで600g弱ありますが、ノートPCと合わせて3.5kg程度。ノマドワークで使うのはさすがにキツいと思いますが、出張などに連れて行くのは可能でしょう。ネット環境がない場所での調査・研究にAIを活用したいというケースでは最適解になるかもしれません。

「ローカルAIを本気で活用したい人」のためのコンピュータ

GX10のデスクトップ。メモリやGPUの利用率をチェックできる専用のダッシュボードを表示している(リモートでもアクセス可です)Photo: かみやまたくみ

GX10は「ハイエンドなローカルAI性能を現環境に後付けする」という発想・設計が秀逸、しかも今年出た新しいシステムなのに現時点でかなり完成されています。

ローカルAIの動作は高性能なほど重く、使えば使うほど動作させるPCは専有されます。この問題を「AIの出力はいつもの環境で利用」「動作は専用機で」と切り分けることで解消しているのは大きな魅力です。今は「AIが動く基本性能を備えた1台のデバイスを各々が持つ」が業界内で主に想定されているように思いますが、自宅やオフィスにこういった「AIを動かすためのマシンを置いてみんなでつないで使う」のも方向性としてあるのかなと。インターネット回線はルーターを置いて、みんなで共有しますよね。それのAI版的なスタイル。

GX10はOSがLinuxベースで、運用にはコマンド入力やスクリプト作成が必要になるといった難しさもありますが、導入の敷居は可能な限り下げられていると感じました。NVIDIAが詳細な導入ガイドを作成してくれおり「コピペでいけるところ」が非常に多くなっているのです。ChatGPTなどの力を借りれば自分のような非専門家でもセットアップなどはできました。「使うフェーズ」に入るまでの難易度はそれなりかなーと思います。

ただ、活用しきるには「具体的な方法を調べる・学ぶモチベーション」が不可欠です。ある程度「どう使うか」を思い描けるのも前提になってくるでしょう。人は確実に選びます。連日新しい書き込みがなされ盛り上がっている公式フォーラムを見ると、グローバル規模で見ればそれほど関心が高い人が多いのだな、とも思うのですが。

実際に手にするかはいったん置くとしても、PCの新しいスタイルを提示する興味深い製品ではないかと思います。今はクラウドで動くAIが主流となっていますが、ローカルAIにはそれらにない強みがあります。公開ネットワークへの接続を必要とせず、プライベートなAIを使いまくれる。入力を学習されるリスクを最小化できます。GX10は、既存の環境にそれらを取り入れやすいのが大きな特徴になっているように思います。

Asus Ascent GX10はAsusの公式窓口あるいは正規代理店3社(TEKWINDTHIRDWAVERYOYO)に問い合わせることで購入可能です。価格は非公表で、連絡後にわかるとのこと。個人での購入も可となっています。

Source: Asus, NVIDIA (1, 2)取材協力:Asus

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