テスラ「整理解雇」巡り法廷で突然“降伏宣言”、約1年半の訴訟に幕 弁護士「外資による日本人の使い捨ては許されない」
テスラジャパン合同会社の社員が、解雇の撤回と解雇期間中の給与相当額(バックペイ)の支払いを求めていた訴訟で、2025年12月5日の第11回口頭弁論期日において被告側が突然「請求を認諾する」と宣言し、訴訟が終結。 【イラストで解説】不当解雇にあたる3つのケース 2月24日、原告代理人の坪井僚哉(りょうすけ)弁護士が都内で記者会見を開き、2024年4月の解雇通知から約1年半にわたった訴訟の経緯と、訴訟終結後も相次いだトラブルの一部始終を明らかにした。
2024年4月上旬、テスラ米国本社は全世界の支社に向け、10%以上の従業員削減を指示した。その指示を受けたテスラジャパンは4月下旬、全従業員の23%にあたる社員に対して退職勧奨を開始。なお、それまで希望退職者の募集は一切行われていなかったという。 原告は4月22日に突然、整理解雇の対象であることを告げられ、その場で面談が行われた。 退職を拒否すると、わずか3日後の4月25日に2回目の退職勧奨が行われ、ゴールデンウイーク明けの5月7日には3回目の退職勧奨が行われたが、この面談はわずか10分で終了した。 その翌日、会社はメールで解雇通知を送付。最初の退職勧奨からわずか16日後の出来事だった。 原告本人は文書を通じて「突然リストラを告げられた際は、大きな戸惑いと残念な気持ちを抱きました」とコメント。次のように続けた。 「会社からは、経営状況の悪化を理由とする整理解雇であるとの説明を受けました。 しかし、私への解雇の前後や訴訟期間中においても、新店舗の開設や採用活動は継続されており、当時の判断及び説明には疑問を抱かざるを得ません」 実際、原告側によると、テスラが退職勧奨・整理解雇を断行していた期間中も、自社ホームページや各求人サイトで新規人員募集広告の掲載を継続していたことが確認されたという。
2024年7月10日に訴訟が提起されると、裁判はテスラ側に不利な展開をたどった。同年11月26日の第3回期日において、裁判官は「整理解雇は違法である可能性が非常に高く、判決になれば原告勝訴となる見込みである」という心証を開示し、双方に和解交渉を勧告。 2025年7月4日の第7回期日では裁判所内の人事により裁判官が交代したが、新たな裁判官も「解雇無効、原告勝訴」という心証を変えなかった。 原告側によると、その後、和解交渉が行われたものの合意に至らず、2025年12月5日に何らの事前通知もなく、公開の法廷においてテスラ側は突然「請求を認諾する」と宣言。 坪井弁護士によると、ベテランの裁判官でさえ「こんなことは初めてだ」と驚いていたという。 「請求の認諾」とは、被告が原告の法的請求を全面的に受け入れる行為であり、判決とは異なるが、請求認容の確定判決(原告勝訴判決)と同一の効力をもつ。 坪井弁護士は「勝訴・敗訴という表現は厳密には不正確ですが、弁護士としての認識では、請求の認諾というのは降伏宣言のようなもので、テスラ側が白旗をあげたということになる」とコメント。 なぜ被告が判決を待たずに請求の認諾という形をとったのかについては「あくまで推測にすぎませんが」と前置きしつつ、「『判決で違法解雇と認められた』と報道されるよりも、請求を認諾したという表現の方がダメージが少ないと考えたのではないか」と指摘した。
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訴訟終結の直後、被告代理人は法廷の場で、坪井弁護士に対し「(2025年)12月8日(月)の朝に出社して面談を行うこと、12月15日(月)からフルタイムで出社すること」と記載された書面を提示し、原告に対して一方的に職場復帰を命令したという。 この命令を受け坪井弁護士は即座に抗議。 「復帰日は通常1か月程度空けるか、当事者間で協議して決めるべきものです。約1年半もの間争ってきた原告の生活や家庭のことを全部無視して、事前通知なくいきなり3日後の週明けから復職しろと一方的に命ずるなど、あり得ない。この復職命令それ自体が違法・無効になり得るし、嫌がらせやハラスメントにも該当しうる」と指摘し、被告側はその場でこの命令を撤回した。 しかし問題はこれで終わらなかった。12月25日、今度は「解雇前に勤務していた事業所ではなく、隣県の事業所へ復職せよ」という配転命令が下されたという。 通勤時間は往復で約1時間半増加し、片道約2時間15分、往復4時間半に相当する遠隔地への転勤命令だった。 これに対しても坪井弁護士は「訴訟で事実上敗北した状況で、原告を退職に追い込むための報復人事ではないか」と主張し、人事権の濫用として違法・無効であると訴えた。 被告は今年1月8日、この配転命令を撤回。解雇前の事業所への復職がようやく認められた。
原告は10年近くにわたってテスラで勤務し、社内表彰を受けるほどの成績を上げていた。 懲戒処分の経験も一度もなく、坪井弁護士は会見で「リストラを正当化しうるような成績ではなかった」と明言。 そのような人物がわずか16日間、3回の退職勧奨という拙速な手続きで職を失った事実について、坪井弁護士は「あくまでも主観ではあるが、テスラジャパンが、イーロン・マスク氏の鶴の一声に従わざるを得ず、コンプライアンスを半ば無視した形で整理解雇が断行されたのではないか」との見方を示した。 また、今回の訴訟が持つ意味は、テスラジャパン1社にとどまらないと坪井弁護士は述べる。 「アメリカの場合、日本と比べて解雇が認められやすい風土があり、本件のみならず、外資系企業による不当解雇の問題は少なくありません。 ですが、外資系企業であっても解雇が認められやすいわけではなく、外国資本の法人による日本人の使い捨ては許されるものではありません。 外資系企業であっても日本の法律が適用される。そのことが本件で改めて示されたと思います」(坪井弁護士) なお、弁護士JPニュース編集部では、テスラジャパン合同会社に対してコメントを求めたが、現在まで回答は得られていない(2月24日18時時点)。
弁護士JPニュース編集部