決算:ニデックの26年3月期、純利益19%増 トランプ関税の影響限定的

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ニデックは24日、2026年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比19%増の2000億円になる見通しだと発表した。データセンター用発電機などが伸び2期連続で過去最高になる。アジアから欧米まで生産拠点を分散させる戦略で、トランプ米政権の関税政策の影響を抑える。関税が顧客企業の生産や販売に与える影響が計画達成の焦点になる。

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売上高は前期から微減の2兆6000億円、営業利益は8%増の2600億円を見込む。23日時点の市場予想平均(QUICKコンセンサス)は売上高が2兆7317億円、営業利益が2691億円、純利益は2065億円だった。

市場予想はトランプ政権の関税政策の詳細が明らかになる前に出たものが多い。ニデックの業績見通しは市場予想をわずかに下回る程度の水準で「強気な見通しだ」(国内証券アナリスト)との声が上がる。

ニデックは顧客に近い場所で生産し、部品なども現地で調達する地産地消を進めてきた。海外生産比率は9割以上で、M&A(合併・買収)も活用して米国や欧州、アジアに生産拠点を分散させている。

岸田光哉社長は24日の記者会見で「これまでも米国向け製品の生産は米国やメキシコで行ってきた」と説明した。メキシコから米国に供給する製品は現在のところ追加関税の対象になっておらず、大きな影響は受けていないという。中国から米国に輸出する製品もほとんどないとしている。

佐村彰宣最高財務責任者(CFO)は「関税の直接的な影響以上に市場や経営者、消費者のマインド低迷の影響が大きくなるのでは」と警戒する。ニデックは世界的な消費の冷え込みで26年3月期に全体の売上高で1割ほどの下押し要因になる可能性があるとみる。

必要に応じて製品の生産場所も変更する考えだ。岸田社長は「すでに米国で大型発電機などの生産能力拡大を始めている」と話す。これまで米国での生産は減少傾向だったが、今後は増加に転じるとの見通しを示した。

関税以外の事業環境は堅調だ。25年3月期の連結決算は、純利益が前の期比35%増の1676億円と3期ぶりに過去最高となった。売上高は11%増の2兆6070億円、営業利益は48%増の2402億円で、こちらも過去最高だ。生成AI(人工知能)の普及でデータセンターのサーバーに使うハードディスクドライブ(HDD)モーターなどが伸びた。

26年3月期も産業用モーターなど、連結売上高の4割を占める「家電・商業・産業用セグメント」の成長を見込む。データセンター向けの非常用発電装置や再生可能エネルギー向けの産業用蓄電池が伸びる。

新規事業として注力する、AIサーバーの画像処理半導体(GPU)などを冷却する装置は5月からタイの拠点で大型品の量産を始める。冷却能力が従来製品の約10倍と高機能で、米エヌビディアの先端GPUなどの普及による需要拡大を捉える。

課題だった電気自動車(EV)向けの駆動装置「イーアクスル」事業は25年1〜3月期に四半期ベースで黒字転換した。搭載車種が増えるほか、収益性の高い機種の受注が拡大し、26年3月期の売上高は1000億円規模を見込む。通期での黒字定着を目指す。

28年3月期まで3カ年の中期経営計画も発表した。最終年度の連結売上高を25年3月期実績から11%増の2兆9000億円、営業利益を46%増の3500億円とする。売上高営業利益率は最終年度に12%と、約3ポイント引き上げる。岸田社長は「営業利益率を毎年1ポイントずつ上げていく」と語った。

グループ各社のデジタルトランスフォーメーション(DX)や生産自動化などに投資するほか、拠点の統廃合なども進めて効率的な運営体制をつくる。新中計の目標値はM&Aを含まない前提だ。

ゴールドマン・サックス証券の高山大樹氏は「かつてのニデックは一部のスター事業が全体の業績をけん引する傾向があったが、組織体制の見直しを通じて会社全体の利益率が底上げされている」と評価する。

牧野フライス製作所に対して実行しているTOB(株式公開買い付け)の成否も焦点だ。岸田社長は24日の会見後、「誠心誠意、一緒にやっていきたいという目線は変わらない」とコメントした。経営環境の不確実性が増すなか、収益性向上とM&Aによる事業拡大の両輪で成長を目指す。

(新田栄作)

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