【衝撃】総資産9兆円超の慈善家に“詐欺王”の裏の顔?カンボジア政界ともつながる中国系巨大企業の若手経営者に各国が制裁(読売テレビニュース)|dメニューニュース
アメリカ・トランプ政権の下、司法省と財務省はカンボジアの巨大企業を国際犯罪組織と名指しし、史上最大規模の制裁を科したと発表しました。そのターゲットは、カンボジア経済界で最も成功した経営者といわれるチェン・ジー氏。巨額の富を築き慈善家としても知られたチェン・ジー氏ですが、裏では“詐欺王”としての闇の顔を持っていたことが明らかに。一体、何が?
■総資産9兆円以上!チェン・ジー氏の“表の顔”
『プリンス・グループ』とは?不動産開発・リゾート施設・ホテル・スーパーマーケット・銀行・金融・航空など、80以上の事業を展開するカンボジア最大級の複合企業『プリンス・グループ』。中国語表記は『太子集団』で、世界30か国で事業を展開する中国系の超巨大企業です。
そのトップに君臨するチェン・ジー氏は、カンボジアの医療支援のため300万ドル(約4億7000万円)を寄付したり、カンボジア国家警察に車両13台を寄贈するなど、数々の慈善事業を行ってきました。
カンボジア政界とのつながりもイギリス・BBCによると、中国・福建省出身のチェン・ジー氏はネットゲーム会社を経営していましたが、2010年頃、カンボジアに移住して不動産業界へ入り、2015年に『プリンス・グループ』を設立。
イギリス・タイムズ紙によると、総資産は9兆円以上といわれています。さらに、フン・セン前首相や息子のフン・マネット首相の顧問も務めるなど、カンボジア政界からも信頼を寄せられているVIPです。
■赤ちゃん以外は全員知っている?慈善家の“裏の顔”
ジャーナリスト・安田峰俊氏そんなチェン・ジー氏には“裏の顔”がありました。世界中をターゲットに詐欺を仕掛け、莫大な利益をあげていたというのです。カンボジアの詐欺組織を取材するジャーナリスト・安田峰俊氏によると、「巨大な中国人社会が現地に存在して、その中で『プリンス・グループとチェン・ジー氏が詐欺に関わっている』ということは、現地にいる中国人なら赤ちゃん以外は全員知っている」ということです。
慈善家に裏の顔アメリカ司法省によると、カンボジア国内で少なくとも10以上の詐欺拠点を運営したとみられ、人身売買で人を集め、詐欺を強制した疑いがもたれています。また、暗号資産投資詐欺で数千人から数十億ドルをだまし取った疑いもあり、100社以上のペーパーカンパニーで資金洗浄をしたとみられています。2025年10月、アメリカ財務省は『プリンス・グループ』を国際犯罪組織に指定しました。
読売テレビ・野村明大解説委員(読売テレビ・野村明大解説委員)
「展開している事業の中に銀行もありますから、日本で想像してみたらわかりやすいですが、“大手銀行が実は詐欺集団だった”と発覚したら取り付け騒ぎも起こって、経済自体が大混乱になります。実際に今回の件で、カンボジアは経済まで大混乱に陥っているということです」
■国際的な制裁に発展 『プリンス・グループ』の声明は?
犯罪行為の関係者を公開アメリカ司法省は、「チェン被告は、表向きは不動産・金融事業を展開していたが、裏ではプリンス・グループをアジア最大級の国際犯罪組織に成長させた」と糾弾。アメリカはチェン・ジー氏から、史上最大の没収額となる2兆3000億円相当の暗号資産を没収しました。また、チェン・ジー氏の犯罪行為の関係者を公開し、資産凍結などの制裁措置の対象に指定しました。
国際的な制裁もこの動きを受けて、世界は『プリンス・グループ』への制裁を続々と発表しています。オフィスビル・邸宅など約230億円の資産を凍結したイギリスをはじめ、シンガポール・台湾・香港でも資産が凍結されています。
『プリンス・グループ』の声明一方『プリンス・グループ』は、「我々のグループやチェン・ジー会長の違法行為への関与を断固として否定します。この告発は根拠がなく、数十億ドル相当の資産の不法な押収を正当化することが目的のように見えます。数千人の無実の従業員・取引先・地域社会に不当な損害を与えています」と声明を発表しました。
■カンボジアの詐欺拠点と関係は?国を揺らす騒動になる恐れ
犯罪ジャーナリスト・多田文明氏犯罪ジャーナリスト・多田文明氏によると、「資金力のある組織が背景にいる場合、人材の斡旋料にもお金をかける。海外に日本人を斡旋するリクルーターに対して、『一人採用させると160万円』という募集もある。リクルーターが活発化すると渡航する人も増え、現地から日本に向けた詐欺が増える恐れもある」と分析しています。
カンボジアの詐欺拠点で日本人拘束『プリンス・グループ』との関係は不明ですが、カンボジアの詐欺拠点での日本人拘束が相次いでいます。2025年5月、カンボジア北西部で特殊詐欺をしていたとみられる日本人29人が拘束。7月には首都・プノンペンで、詐欺グループの拠点とみられる集合住宅で日本人4人が拘束。11月にも、カンボジア南東部の詐欺拠点が摘発され、日本人13人が拘束されました。
(野村解説委員)
「今後、我々の想像を超える話になる可能性もあると思います。チェン・ジー氏はカンボジア政府の要人と交流があって、アメリカなどでは『政府の要人が関与していた可能性もある』という見方もあるようなので、国を巻き込んだ大きな話になっていくかもしれません」
■日本にも進出していたが…“詐欺王”は今どこに?
会社は日本にも進出していた現在、チェン・ジー氏の行方は不明です。取材を進めると、すでに日本にも『プリンス・グループ』が進出していることが判明しました。しかし、東京都内にある『プリンス・グループ』が入っていたビルのオフィスの看板には白いテープが貼られ、この会社はアメリカの制裁が発表された数日後の10月24日に突如、解散しています。この会社の登記簿を調べると、代表取締役の名はチェン・ジー氏となっていました。
“詐欺王”は今どこに…?また、東京都内の一等地にはチェン・ジー氏が日本での自宅として登記していたマンションがありますが、アメリカ司法省による訴追を受けた約1週間後、登記していた自宅の住所は抹消されました。世界最大級の詐欺帝国に君臨した男は今、どこにいるのでしょうか―。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年12月5日放送)