ロシア軍がウクライナを416発の長距離ドローン・ミサイル攻撃、前方を狙われ過去最大の96突破を記録(JSF)

 2025年10月3日のウクライナに対するロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計416飛来(ドローン381機+ミサイル35発)でした。なお今日の迎撃戦ではウクライナ防空網はかなり苦戦しており、過去最大となる96突破を記録しています。

 大規模攻撃は9月28日以来で5日ぶりです。最近のロシア軍の長距離攻撃パターンとしては数日おきに大規模攻撃を仕掛けて来ており、その際にはドローンだけでなくミサイルも纏まった数を投入されています。

  • 2025年10月1日:合計416飛来(ドローン381機+ミサイル35発):96突破
  • 2025年9月28日:合計643飛来(ドローン595機+ミサイル48発):32突破
  • 2025年9月20日:合計619飛来(ドローン579機+ミサイル40発):36突破
  • 2025年9月10日:合計458飛来(ドローン415機+ミサイル43発):43突破
  • 2025年9月07日:合計823飛来(ドローン810機+ミサイル13発):72突破
  • 2025年9月03日:合計526飛来(ドローン502機+ミサイル24発):75突破
  • 2025年8月30日:合計582飛来(ドローン537機+ミサイル45発):34突破
  • 2025年8月28日:合計629飛来(ドローン598機+ミサイル31発):40突破
  • 2025年8月21日:合計614飛来(ドローン574機+ミサイル40発):37突破
  • 2025年8月15日:米露アラスカ会談。この前の月前半は攻撃が低調

※飛来数は2025年9月7日の823飛来が過去最大、突破された数は2025年10月3日の96突破が過去最大。

※ただしこれは2022年秋以降にシャヘド136自爆無人機の投入が開始された長距離攻撃の記録からであり、2022年2月24日の開戦から初期の戦術目標に対するミサイル攻撃の数は混乱の中で正確な記録は集計されていない。

※飛来数についてはシャヘド含む無人機の影響が大きいので2025年9月7日の823飛来が戦争全期間を通じて過去最大で間違いないが、突破数については2025年10月3日が過去最大かどうかは正確には不明。開戦初期のミサイル攻撃は奇襲効果と飽和攻撃でかなり突破数が多かった可能性がある。

2025年10月3日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部

  • イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×7飛来0撃墜
  • イスカンデルK巡航ミサイル×21飛来12撃墜
  • Kh-59/69空対地ミサイル×7飛来5撃墜
  • 自爆無人機と囮無人機×381飛来303排除 ※排除は撃墜と未到達を含む

※合計416飛来320排除、96突破 ※阻止率77%

ウクライナ空軍より2025年10月3日迎撃戦闘の集計報告

※ウクライナ空軍司令部は先月の9月8日からドローン飛来数のうちシャヘド型自爆無人機の推定数を記載するようになっていたが(関連記事)、9月20日と9月28日は記載が無く、更に10月に入ってからは3日連続で記載が無い。10月1日からシャヘド推定数の報告を止めた可能性があるが、空軍からは特に説明はない。

※Kh-59/69のうちKh-59は射程はあまり長くはないが、Kh-69は射程が長く巡航ミサイルと見做してよい。戦闘機からの空中発射運用。

攻撃は前線付近の都市に集中

※ППО радар と monitorwar による共同作業の可視化地図。Licensed unded BY CC 4.0

攻撃経路の可視化地図の出典 : https://t.me/mon1tor_ua/55441

  • 赤色:巡航ミサイル(イスカンデルK:地上発射、Kh-59/69:空中発射)
  • 橙色:弾道ミサイル(イスカンデルM/KN-23:地上発射)
  • 黄色:各種ドローン(シャヘド自爆無人機/ガーベラ囮無人機:地上発射)

ППО радарmonitorwar による共同作業の可視化地図。データはウクライナ空軍からの一連の空襲警報の発表(空軍公式Telegram)がベースで、空軍のその日の最終的な集計報告が出る前に攻撃経路を可視化した地図を自主的に作製しており、最終報告とは細部が若干異なっているがほぼ忠実な可視化となっている。

弾道ミサイル×7飛来0撃墜、7突破 ※阻止率0%

 ロシア軍のイスカンデルM/KN-23弾道ミサイル7発は主にパトリオット未配備地域(推定)と思われるポルタヴァ州の北西にあるルブヌィにほとんどが飛来したので迎撃できませんでした。これは迎撃し難い高速目標である弾道ミサイルの特性であり、パトリオット以外では交戦すら困難であるためです。

巡航ミサイル×28飛来17撃墜 、11突破 ※阻止率60%

  • イスカンデルK巡航ミサイル×21飛来12撃墜 ※阻止率57% ※地上発射
  • Kh-59/69空対地ミサイル×7飛来5撃墜 ※阻止率71% ※空中発射

 ロシア軍の巡航ミサイルは主にポルタヴァ州の南西にある州都ポルタヴァに多くが飛来しており、ウクライナ防空網の阻止率60%はかなり苦戦した数字です。ポルタヴァは前線から約220kmであり、付近ではありませんが後方というわけでもなく、巡航ミサイルの速度なら前線を超えてから15分以内に着弾します。

 今回の巡航ミサイル攻撃の特徴は地上発射型のイスカンデルKが主力であるという点です。これまでイスカンデルKは1回の攻撃では数発の発射が通常で、最近では2025年9月7日(出典)の9発が最大です。一度に10発以上発射した報告は過去にも記憶にありません。それなのに今日は21発も発射しており、かなり珍しい事態となっています。これが突破率の高かった要因の一つかもしれません。

 空中発射型の巡航ミサイルであるKh-101(爆撃機から発射)やKh-59/69(戦闘機から発射)ならば発射母機の動向を航空無線の傍受やレーダーなどで掴んでおけばミサイルの発射と経路を予測することは可能です。艦船発射型のカリブル巡航ミサイルも艦隊の動きを諜報や友軍の情報提供(NATOの偵察機や早期警戒機など)で掴んでおけば発射と経路を予測することは可能です。

 しかし地上発射型のイスカンデルK巡航ミサイルはそれが出来ません。頻繁に移動を繰り返す地上移動発射機の動向を掴むことは非常に困難で、警戒していない場所からいきなりミサイルが発射されます。またイスカンデルKの射程はKh-101やカリブルより短い設定なので(ただし射程が長いタイプも用意は可能)、飛行時間も短く、対処時間の余裕も短くなります。今日の2025年10月3日の巡航ミサイル攻撃を見ると、地上発射型のイスカンデルKの突破率(43%)と空中発射型のKh-59/69の突破率(29%)を比べるとかなり差が生じています。

最近の巡航ミサイルの二桁以上の発射記録

  • 2025年10月1日:巡航ミサイル×28飛来17撃墜 、11突破 ※阻止率60%
  • 2025年9月28日:巡航ミサイル×46飛来43撃墜 、3突破 ※阻止率93%
  • 2025年9月20日:巡航ミサイル×32飛来29撃墜 、3突破 ※阻止率91%
  • 2025年9月10日:巡航ミサイル×42飛来27撃墜、16突破 ※阻止率64%
  • 2025年9月03日:巡航ミサイル×24飛来21撃墜、3突破 ※阻止率88%
  • 2025年8月30日:巡航ミサイル×37飛来32撃墜、5突破 ※阻止率86%
  • 2025年8月28日:巡航ミサイル×20飛来18撃墜、2突破 ※阻止率90%
  • 2025年8月21日:巡航ミサイル×33飛来30撃墜、3突破 ※阻止率91%

※9月10日(阻止率64%)と10月3日(阻止率60%)の数字が平均より低い数字となっている。

各種ドローン×381飛来303排除、78突破 ※阻止率80%

 2025年10月3日のロシア軍のドローン攻撃はウクライナ東部の前線に近い地域の都市が集中的に狙われており、迎撃準備時間があまり取れなかったために阻止率80%とやや苦戦しています。

  • 2025年10月3日:ドローン阻止率80%(381飛来303排除) ※前方攻撃
  • 2025年9月28日:ドローン阻止率95%(593飛来566排除) ※後方攻撃
  • 2025年9月20日:ドローン阻止率95%(579飛来552排除) ※前方攻撃
  • 2025年9月10日:ドローン阻止率93%(415飛来386排除) ※後方攻撃
  • 2025年9月07日:ドローン阻止率92%(810飛来747排除) ※中部攻撃
  • 2025年9月03日:ドローン阻止率86%(502飛来430排除) ※全体攻撃
  • 2025年8月30日:ドローン阻止率95%(537飛来510排除) ※全体攻撃
  • 2025年8月28日:ドローン阻止率94%(598飛来563排除) ※全体攻撃
  • 2025年8月21日:ドローン阻止率95%(574飛来546排除) ※全体攻撃

※最近の大規模攻撃から抜粋。なおドローンは毎日飛来している。

※攻撃傾向の前方・後方の分類は大雑把なもので正確ではない。

※排除とは撃墜だけでなく囮無人機の燃料切れ墜落を含む。

※阻止率とは迎撃率ではない(上記の理由のため)

 ただし9月20日は前方の都市に攻撃が集中していた中で阻止率95%と高かったので、10月3日の阻止率の低さは他の要因もあるのかもしれません。とはいえ、おそらくは9月20日の方が特異な例である可能性が高いと思われます。なお10月3日の阻止率80%は致命的に悪いという程でもなくやや悪い程度で、平均的な数字の範囲かやや下くらいであり、ウクライナ防空網に大きな問題が生じているとは言えません。

突破数の打撃力換算:ミサイル1点、ドローン0.1点

  • 2025年10月3日:合計25.8点(ドローン7.8点+ミサイル18点)
  • 2025年9月28日:合計7.7点(ドローン2.7点+ミサイル5点)
  • 2025年9月20日:合計11.7点(ドローン2.7点+ミサイル9点)
  • 2025年9月10日:合計18.9点(ドローン2.9点+ミサイル16点)
  • 2025年9月07日:合計15.3点(ドローン6.3点+ミサイル9点) 
  • 2025年9月03日:合計10.2点(ドローン7.2点+ミサイル3点)
  • 2025年8月30日:合計9.7点(ドローン2.7点+ミサイル7点)
  • 2025年8月28日:合計8.5点(ドローン3.5点+ミサイル5点)
  • 2025年8月21日:合計11.8点(ドローン2.8点+ミサイル9点)
  • 2025年7月12日:合計3.0点(ドローン2.0点+ミサイル1点)
  • 2025年7月09日:合計7.7点(ドローン1.7点+ミサイル6点)
  • 2025年7月04日:合計15.3点(ドローン6.3点+ミサイル9点)
  • 2025年6月29日:合計25.1点(ドローン4.1点+ミサイル21点)

※打撃力換算はミサイルとドローンの弾頭重量の差を10倍とした簡易なもの。

※2025年10月3日の攻撃は過去最大の突破数96を記録しており、打撃力換算でも最近では1番目。

※2025年9月7日の攻撃は過去最大の飛来数823を記録しているが、突破数はドローンの比率が多く打撃力換算すると最近では4番目。

※2025年6月29日の攻撃は飛来数でも突破数でも突出していないが、突破数はミサイルの比率が多く打撃力換算すると最近では2番目。

2025年10月3日午前2時43分ごろの状況:ポルタヴァ州の周辺

※2025年10月3日午前2時43分ごろのウクライナのポルタヴァ州の周辺の状況。日本時間では2025年10月3日午前8時43分ごろ。大量のドローンが滞空中に、ルブヌィ(Лубни)に向かって弾道ミサイルが飛来している。

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