【米国市況】S&P500種は下落、米ロ首脳会談にも警戒-円上昇
15日の米株式市場ではS&P500種株価指数が最高値から下落。この日発表された米経済指標では、消費者の景況感に関して強弱まちまちのシグナルが示された。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6449.80 -18.74 -0.29% ダウ工業株30種平均 44946.12 34.86 0.08% ナスダック総合指数 21622.98 -87.69 -0.40%市場はアラスカで開催されているトランプ大統領とロシアのプーチン大統領との首脳会談にも注目している。ただ会談の成果をめぐり、両国の思惑には大きな隔たりがあるとみられる。両首脳はすでに2回目の会談を視野にも入れている。
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ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は「アラスカでの首脳会談の結果を予測することはできないが、潜在的な波乱要因に警戒している。市場環境は依然としてヘッドラインリスクに非常に敏感だ」と述べた。
この日は期待外れの業績見通しを示したアプライド・マテリアルズを中心に、半導体関連株が売られた。一方、ユナイテッドヘルス・グループは急伸。資産家ウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイや資産家のファミリーオフィスがユナイテッドヘルス株を買い増したことが明らかになった。
7月の米小売売上高は幅広い分野で増加し、6月分も上方修正された。ただ労働市場の軟化や消費者心理の悪化を受けて、エコノミストらは先行きに慎重な姿勢を見せている。米ミシガン大学が発表した8月の消費者マインド指数(速報値)は、予想外に低下した。前月比で下げたのは4月以来。インフレ期待は上昇し、関税の影響に対する懸念が長引いていることを反映した。
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「4月に懸念されていた経済の最悪シナリオを消費者はもはや想定していない」と指摘。「しかし、インフレと失業の両方が先行き悪化すると消費者は引き続き予想している」と述べた。
コメリカ銀行のチーフエコノミスト、ビル・アダムズ氏は、経済指標が全て同じ方向を示しているわけではないが、米経済はおおむね順調のようだと指摘。「消費者が何を言うかよりも、何をするかのほうが経済にとっては重要だ」と話した。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、7月の小売売上高について、必ずしも絶好調の内容ではなかったとしつつ、国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア売上高(コントロールグループ)は予想を上回り、6月分も上方修正されたと指摘。来週から始まる小売り企業の決算発表で、消費動向に関するさらなる洞察が得られるだろうと話した。
ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ最高投資責任者(CIO)は、個人消費が持ちこたえ、その堅調な消費ゆえに企業が従業員を保持できる限り、好循環は続き得ると指摘。それが企業利益と株価の双方を押し上げるだろうと述べた。
米国株の記録的な上昇により、今月のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で米金融当局者がハト派的なシグナルを発した場合、投資家が利益確定売りに動きやすい状況になっていると、マイケル・ハートネット氏率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらは指摘した。
外為
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は下落。この日発表された一連の米経済指標は、市場で広がる9月の利下げ観測を揺るがすには至らなかった。
円は対ドルで上昇し、一時0.7%高の1ドル=146円74銭まで買われた。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1202.86 -3.00 -0.25% ドル/円 ¥147.20 -¥0.56 -0.38% ユーロ/ドル $1.1704 $0.0056 0.48% 米東部時間 16時52分スコシアバンクのチーフ通貨ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「今朝発表されたデータは、全体的なドルの動きに大きな影響は与えていない」と指摘。「今週は高ベータ通貨が軟調だった一方、主要通貨(ユーロ、円、ポンド、スイス・フラン)は上昇し、ICEドルインデックス(DXY)が週間ベースで下落した。ドルは全体的な軟調ムードが続いている」と述べた。
国債
米国債は長期債を中心に下落(利回りは上昇)。市場の関心は来週のジャクソンホール会合に移る見通しだ。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演に注目が集まっている。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.92% 4.7 0.96% 米10年債利回り 4.32% 3.3 0.77% 米2年債利回り 3.75% 1.6 0.43% 米東部時間 16時52分キャピタル・エコノミクスのポール・アシュワース氏は、ジャクソンホール会合を控え、市場は9月の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げを依然として完全に確信していると指摘。10月か12月に少なくとも1回の追加利下げが行われるとの見方も崩していないと述べた。
その上で、パウエル議長はやや景気抑制的な政策スタンスが引き続き適切だとの見解を示す可能性があるとも、アシュワース氏は分析。「それでも、ここ数カ月の雇用者数の伸びがほぼ停滞していることから、失業率は実質的に上昇していないものの、9月の利下げが最も可能性の高いシナリオのようだ」と続けた。
米シカゴ連銀のグールズビー総裁は、物価上昇圧力が持続的に強まっていないことを確認するため、インフレ指標を少なくともあと一つ目にしたいとの考えを示した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反落。米ロ首脳会談の結果待ちとなった。
和平に向けた進展の兆しが見られれば、地政学的リスクが後退し、今後数カ月で大幅な供給過剰が予想される原油相場の重しとなる可能性がある。一方、トランプ大統領はロシア産原油の購入国に対して二次制裁を科す構えを示しており、実際に導入されれば原油供給の流れに支障を生じさせかねない。
関係者によると、米国は首脳会談で進展が見られない場合に備え、ロシアの石油大手ロスネフチとルクオイルを制裁対象とする案を検討している。制裁逃れに使われるロシア産原油輸送の「シャドーフリート(影の船団)」への制限強化や、中国を含むロシア産原油の買い手に対する追加関税も選択肢として検討されているという。
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A/Sグローバル・リスク・マネジメントの主任アナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「米ロ首脳会談が大きな成果をもたらすことはないだろう」と予想。「短期的には米国による追加制裁の可能性は低く、会談が決裂しない限り、制裁緩和の可能性も排除できない」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比1.16ドル(1.8%)安の1バレル=62.80ドル。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.5%下げて65.85ドルで終了。
金
金スポット価格は米ロ首脳会談の結果を控え、狭いレンジでの取引となった。
会談が決裂すれば、逃避買いから金が急騰する展開もあり得る一方、停戦の兆しが見られれば、安全資産としての妙味が薄れる可能性がある。
スポット価格はニューヨーク時間午後4時5分現在、前日比4.06ドル高の1オンス=3339.45ドル。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比60セント(0.1%未満)安の1オンス=3382.60ドルで終えた。
原題:Stocks Slide After Data as Trump-Putin in Focus: Markets Wrap(抜粋)
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