パウエル議長解任の「現実味ある脅威」に市場動揺-トランプ氏が火種

トランプ米大統領が再び世界の金融市場を揺るがす力を示した。今回は、かねてからの関心事である米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長解任の是非だ。

  ホワイトハウス高官はトランプ氏が近くパウエル議長を解任する可能性が高いと述べた。4月初めの関税措置発表が市場に大混乱をもたらした時のように、今回の発言でも16日の市場に一時、動揺が広がった。

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  株式やドル、米長期国債が急速に値を下げる一方で、短期国債相場は上昇した。パウエル氏の後任は誰であろうとトランプ氏の意向に従い、利下げに動くとの観測に基づくものだ。

  だが1時間足らずで市場は巻き戻された。トランプ氏がパウエル議長を解任する可能性について「何かをするつもりはない」と発言したためだ。トランプ氏は最近、利下げに動くのが遅過ぎるとしてパウエル氏を毎日のように批判している。

  もっとも市場の反応は、全体としては比較的控えめなものだった。トランプ氏は「はったり」発言を繰り返す傾向があるほか、金利政策に不満を抱いた大統領にFRB議長を実際に解任できる法的権限があるかという疑問もあったことが要因だ。

  それでも、市場が発したメッセージは明確だった。多くの市場参加者の当初の反応は、トランプ氏がこれまであり得ないとされてきた行動に出るのではという根深い懸念を反映したものだった。つまり、パウエル氏解任によって、米連邦準備制度の長年にわたる金融政策の独立性に終止符を打ち、インフレ急加速のリスクを招くという不安だ。

  インテグリティ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョー・ギルバート氏は「市場はこれを現実味のある脅威と受け止めている」と述べ、「これは不安をもたらすもので、実際に解任に踏み切った場合の市場の反応を探るためにトランプ氏が観測気球を打ち上げたのかどうかはまだ分からない。結局のところ、パウエル氏解任には法的ハードルが極めて高いと考えている」と話した。

  ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏をはじめとする一部の市場関係者は、主要資産クラスの反応を受け、パウエル氏の解任が経済や市場にとって万能薬にはならないと政権が認識するのではないかとみている。

  米政策金利に敏感に反応する米2年国債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下する一方、5bp低下していた10年債利回りは下げ幅を縮小した。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は下落に転じ、一時0.7%下げた。取引序盤に一時約0.3%上昇していたS&P500種株価指数は、一時0.7%下落した。

  こうした反射的な値動きの多くは、トランプ氏がパウエル氏の解任が差し迫っていないことを明確にした後、急速に反転した。

  一方で、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同創業者で最高投資責任者(CIO)も務めたビル・グロース氏のように、解任のタイミングはパウエル氏後任の人選ほど重要でないと考える向きもある。

  同氏はX(旧ツイッター)への投稿で、「大統領が徐々に米連邦公開市場委員会(FOMC)の考え方に影響を与えることができれば、債券市場は次第にイールドカーブがスティープ化し、ドルは弱含むだろう」と指摘した。

Investors wake up!The timing of the new Fed chair is less significant than the influence he will have on his committee.

If he can sway the committee’s thinking over time, bond markets will increasingly go curve positive, the dollar will weaken, and inflation will likely move to…

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