「マジカルミライ 2025」特集 *Lunaインタビュー|夏の夜空に響かせる「輝いて」のメッセージ
初音ミクをはじめとするバーチャルシンガーの3DCGライブと、創作の楽しさを体感できる企画展を同時開催するイベント「初音ミク『マジカルミライ』」が8月1日に開幕する。今年は宮城・仙台サンプラザ、仙台駅周辺(SENDAI会場)、大阪・インテックス大阪 3号館・4号館・5号館A(OSAKA会場)、千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホール(TOKYO会場)と3都市で展開される。
「マジカルミライ」では毎年人気ボカロPがテーマソングを制作することが恒例で、過去にはAyase(YOASOBI)、sasakure.UK、cosMo@暴走P、柊マグネタイトといったそうそうたる面々が楽曲を提供し、イベントを盛り上げてきた。そして今年、テーマソングを手がけるアーティストとして白羽の矢が立てられたのは*Luna。「8.32」「アトラクトライト」といったみずみずしい楽曲に定評のあるアーティストだ。
音楽ナタリーでは「マジカルミライ 2025」の開催を前に*Lunaにインタビュー。「星河一天」をテーマに掲げた今年のイベントについてや、自身が書き下ろした「ラストラス」の制作秘話を明かしてもらった。インタビューの最後に*Lunaは、音楽ナタリーの「マジカルミライ」特集において恒例となっている「あなたにとって初音ミクはどういう存在ですか?」という質問にも回答。2012年にボカロPとしてデビューし、13年を初音ミクとともに歩んできた*Lunaの答えは?
取材・文 / 倉嶌孝彦
- SENDAI会場2025年8月1日(金)~3日(日)宮城県 仙台サンプラザ、仙台駅周辺
- OSAKA会場2025年8月9日(土)~11日(月・祝)大阪府 インテックス大阪 3号館・4号館・5号館A
- TOKYO会場2025年8月29日(金)~31日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
──「マジカルミライ」テーマソングのオファーがあったとき、率直にどう思いましたか?
昨年の「マジカルミライ」のライブで*Lunaの「流星のパルス」「ノヴァ」を演奏していただいたので、公式の方に認知されていることは把握していましたが、まさかテーマソングのお話が来るとは思っていなかったので驚きました。素直にうれしいという気持ちが大きかったです。
──去年演奏された2曲は、今年のイベントのテーマ「星河一天」に通じるものがありますね。
はい。近年は星に関連した曲を出すことも多くて、今年お声がけいただいたのは*Lunaの楽曲が「星河一天」というテーマと親和性が高かったからかもしれません。
──テーマ性という点でいうと、*Lunaさんの楽曲は夏を歌った楽曲が多いですよね。
シンプルに夏が好きなので、好きなものを作り続けていった結果、“夏の曲と言えば”と言ってもらえるようになりました。冬になると、少し気分が落ち込むといいますか(笑)。
──過去には冬に開催されることもあった「マジカルミライ」が、今年は8月開催のみで、より一層“夏”というキーワードを意識されていたのかな、と思いました。
そうですね。「マジカルミライ」というイベント全体が夏を通して開催されているので、確かにそこもオファーをいただいた理由として大きかったかもしれません。
大人になって見上げる星空は
──「星河一天」というお題を受けて、テーマソング「ラストラス」をどのように作り上げましたか?
「星河一天」という言葉から連想されるような、満点の星空が思い浮かぶ音を探すところから曲作りを始めました。「音を聴いただけで夜空が思い浮かぶような音はどんなものだろう」と試行錯誤した結果が、曲を聴き始めて最初に鳴る音に反映されています。
──サウンド面ではかなりライブを意識しているとも感じました。
それは今回の曲作りにおいてめちゃくちゃ意識しましたね。*Lunaとして初めてのワンマンライブを開催したばかりだったので、ちょっと新鮮な気持ちが残っていたというか。自分たちの曲がライブをしたときにどう感じられるんだろう?ということを改めて考えさせられた時期だったので、今回の曲は“ライブしか意識していない”くらい現場で鳴ることをイメージしました。ライブ映えしなければ意味がない、くらいのことを考えていたかな。
──コール&レスポンスを促す部分だけでなく、音源に演奏陣のソロ回しが入っているのも特徴ですよね。
その部分はちょっと挑戦的なところですね。「マジカルミライ」のライブではそのあたりがどうアレンジされるのか、原曲のままなのかはわからないのですごく楽しみです。
──歌詞はどのように書きましたか?
「星河一天」という言葉について考えたときにまず感じたのは、「私たちが住んでいる東京って星があまり見えないよなあ」ということ。でも星がまったく見えないわけじゃなくて、大人になってから「星を見よう」と思って意識して夜空を見上げる機会がなくなっちゃっただけなんですよね。そこを起点にテーマを膨らませて、「ラストラス」の歌詞を書きました。
──今*Lunaさんが話してくれたことは、多くの大人に当てはまると思います。
子供の頃は星を観に行くイベントがあったり、プラネタリウムのような施設に行ったり、「星ってすごいきれいだな」と感動したことが誰しもあると思うんですよ。星空はあの頃から変わらないのに、大人になって「きれいだな」と思う感覚だけが失われてしまったような気がして。そういったことが今回の「ラストラス」のテーマになっています。
──「ラストラス」という楽曲は、ただきれいな星空や希望を歌うだけの曲ではないですよね。今*Lunaさんが話してくれたような“星空を忘れてしまった大人”になぞらえて、初音ミクというカルチャーがリスナーに受け入れられなかった苦節の時期も歌詞にほのめかされているような気がしました。
曲を書くうえでそのあたりをすごく意識したわけではなく、*Lunaの曲はどれもそういう構図になっているんですよ。全体を通してずっと暗い曲やずっと明るい曲はあまりなくて。理想としては、映画を1本観終わったような読後感を与えるというか、何か心を動かせたらいいなと常日頃から意識しています。なので、曲を聴いて皆さんそれぞれが何かに重ねて、この曲から何かを感じ取ってくれたらうれしいです。
──この曲の1つのポイントとして、「輝いて」というフレーズを何度も繰り返す部分があります。
そもそもこのパートは存在していなかったんですよ。ひと通り形になったところで「もう1段階盛り上がる要素を付け足したい」と考えて生まれたのがこの「輝いて」を繰り返す部分でした。最初は「輝いて」以外にもいろんな言葉を入れようとしていましたが、みんなで歌うことを考えたらひと言だけでいいかなと思って。
──覚えやすくて歌いやすいからですか?
はい。何度も聴いて予習してからイベントに来てくれる方も多いと思いますが、中には当日までなるべく情報を遮断して、初見でライブや楽曲を楽しみたいという方もいらっしゃいますから。そういう方でも「輝いて」というひと言を繰り返せば、少なくとも2番では一緒に歌えると思うんですよね。1番を聴いたら「ここはそういうパートなんだ」とわかってもらえるはずだから、2番からは初見の人も一緒に歌ったり、自由に楽しんでほしいです。