ホルムズ海峡からの船舶誘導支援、「短期間」停止とトランプ氏 イランとの合意に向けて「大きな進展」と発表

画像提供, Reuters

バーンド・デブスマン・ジュニア、ジェイムズ・チェイター、キャスリン・アームストロング

アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、イランが事実上封鎖するホルムズ海峡から船舶を誘導するアメリカの支援措置を、「短期間」停止すると発表した。

トランプ氏が「プロジェクト・フリーダム(自由計画)」と呼ぶこの措置は、4日に始まった。トランプ氏は、イランとの合意に向けて「大きな進展」があったため、この措置は「双方の合意」により停止されると述べた。

イラン国営メディアは、この一時停止について、ホルムズ海峡の再開を目指すトランプ氏の取り組みが「失敗し続け」たため、トランプ氏が姿勢を「後退」させたことを示すものだと伝えた。

トランプ氏は、アメリカとイランの間の仲介役を務めてきた「パキスタンの要請に基づき」、「プロジェクト・フリーダム」の停止を決めたと、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。イランの港を出入りする海上交通の封鎖措置については、今後も継続するとした。

大統領のこの発表に先立ち、マルコ・ルビオ米国務長官やピート・ヘグセス米国防長官、米統合参謀本部のダン・ケイン議長は同日、「プロジェクト・フリーダム」によってホルムズ海峡やペルシャ湾における船舶の自由な航行と商取引が確保されると、意義を強調していた。それだけに、トランプ氏の発表は、政権幹部の一連の主張を覆す格好となった。

今後の展開は不透明だ。トランプ政権は「プロジェクト・フリーダム」について、イランへの経済的圧力を目的とした海上封鎖とは「全く異なる」措置だと強調してきた。

「プロジェクト・フリーダム」は、立ち往生する船舶を誘導し、ほぼ封鎖状態にあるホルムズ海峡を通過してペルシャ湾を離脱できるようにすることを目的としたもの。湾岸諸国からの原油輸送を再開させ、最終的に世界経済を平常に戻す狙いがあった。しかし、今回の「一時停止」期間中に、世界の海運会社やその取引先の保険会社がイランに妨害されれば、目的は達成されたとトランプ氏が主張するのは難しくなる。

一方で米政権は、イランが強く反発する「プロジェクト・フリーダム」を凍結することで、イランを再び交渉の席に着かせることができると期待している可能性もある。

ルビオ長官は、「プロジェクト・フリーダム」に関するトランプ氏の発表に先立ち、イランに対する米・イスラエルによる当初の「オペレーション・エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦」がその目的を達成し、終了したと主張。「我々は平和への道を望んでいる。(トランプ)大統領は合意を望んでいる」とホワイトハウスで記者団に述べていた。

ルビオ長官は、トランプ氏は合意を望んでいるが、「イランはこれまでのところ、その道を選んではいない」と述べ、「それが将来、どのような結果をもたらすのかは推測の域を出ない」と付け加えた。さらに、米・イスラエルの対イラン攻撃は「イラン経済に世代を超えた破壊」をもたらしたとしたうえで、イラン指導部は「今進んでいる方向で身を滅ぼす前に、自らを省みるべきだ」と話した。

ヘグセス国防長官は5日の会見で、イランとの一時停戦は「終わっていない」、「現時点で停戦は確かに維持されている。しかし、我々は非常に、非常に注意深く見守っていく」と発言。米統合参謀本部のケイン議長は、一時停戦が始まって以降、イランが米軍に対して攻撃を10回仕掛けたとしつつ、こうした攻撃は「現時点では」戦闘再開の「基準を下回っている」と述べた。

トランプ氏はその後、イランによる停戦違反とは具体的に何を意味するのかと記者団から質問されると、「こちらから君たちに知らせるので、その時に分かる」と答えた。また、交渉による紛争終結は今も可能だと考えているとも述べた。

米政府当局者の一連の発言からは、アメリカ側に、全面的な軍事作戦に戻りたいという意欲があまりない様子がうかがえる。全面的な軍事作戦を再開すれば、市場はさらに混乱し、物価は急騰し、多くのアメリカ国民の反感を買う恐れがある。

トランプ氏は、ホルムズ海峡の再開について日本と協議中であることも明らかにした。来週には訪中を控えており、習近平国家主席と前向きな協議ができるとの期待感も示した。

イラン政府はこれまでのところ、米政権幹部の発言に反応していない。しかし、イラン交渉団を率いたモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は先に、「アメリカにとって、現状維持は耐え難いものだと、我々はよく承知している。我々にとってはまだ始まったばかりだが」と述べていた。

先月行われたアメリカとイランの協議で、イラン側の交渉責任者を務めたガリバフ議長は、「停戦違反と(ホルムズ海峡の)封鎖により、アメリカとその同盟国が海上輸送の安全とエネルギー輸送を危機にさらしている。しかし、彼らの悪行は失敗に終わるだろう」と述べた。

英海上貿易業務調整機関(UKMTO)は5日遅く、ホルムズ海峡で貨物船1隻が「正体不明の飛翔体」に攻撃されたと、検証済みの情報源から報告があったと発表した。これ以上の詳細は明らかになっていない。

イランは5日、UAEに対する攻撃は一切行っていないと否定。イラン軍報道官も、「もしそのような行動を取っていたなら、我々はきっぱり明確にそのことを発表していたはずだ」と述べた。

ホルムズ海峡をめぐっては4日、商船2隻が攻撃を受けたとの報告があった。また、アメリカ船籍の船1隻が、米軍の護衛を受けて同海峡を通過したことも明らかになった。

アメリカとイランは先月7日、条件付きで2週間の停戦で合意したと発表。これにより、イランはUAEを含む湾岸諸国へのドローン・ミサイル攻撃を停止したが、その後もホルムズ海峡を通過できた船はほとんどない。アメリカもイランの港を出入りする海上交通の封鎖を実施している。

アメリカの「エピック・フューリー」作戦は2月28日、米・イスラエルがイランに一連の空爆を行ったことで始まった(イスラエルの作戦名は「獅子の雄たけび」)。以来、イラン側は報復措置として、ホルムズ海峡を事実上封鎖している。ホルムズ海峡は通常、世界の石油および液化天然ガス(LNG)の約20%が通過する。

関連記事: