自民・維新の連立交渉、きょう再協議へ-政治献金・消費減税が課題に

21日召集の臨時国会で行われる首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が選出される可能性が強まった。日本維新の会との連立協議が17日、合意に向け進展。維新が統一候補に向けた他党との協議を打ち切ったためだ。

  維新の藤田文武共同代表は17日の記者会見で、自民との協議について「大きく前進した」とし、最終の詰めを行うことを明らかにした。自民と合意を確約できる状態には至っていないが、野党の統一首相候補への投票は「非常に難しい」と明言。立憲民主、国民民主両党に今後の協議への参加を見送る方針を伝えた。

  自民の小林鷹之政調会長も記者団に対し、「協議全体は大きく前進した」との認識を示した。国会議員定数の削減に関しては「維新の考え方は真摯(しんし)に受け止めた」と語った。

党首会談に臨んだ自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表、藤田文武共同代表(10月15日)

  維新は自民との連立について20日までに判断する方針。両党が合意し、衆院の首相指名選挙で維新の所属議員全員が高市氏に投票すれば自民と合わせて231議席になり、過半数の233に迫る。高市氏が選出される公算が大きくなり、就任後の国会運営でも一定の安定基盤を確保できる。

  仮に連立協議がまとまらない場合でも、高市氏優勢は変わりそうもない。維新は他の野党候補には投票しない見通しで、立民と国民は安全保障やエネルギー政策での溝を埋められていない。藤田氏は21日までの野党間の政策合意は不可能だとの考えを示した。

  自民、維新の政策協議では、吉村洋文代表が連立参加の条件としている国会議員定数削減で合意できるかが最大の焦点となっている。藤田氏は、会見で個別の課題についての調整状況について問われたが、詳細は明らかにしなかった。

国会議員定数削減

  維新は16日に開かれた自民との1回目の協議で12項目の政策要望を提出した。議員定数に関しては1割削減を目標に今年の臨時国会で関連法案を「成立させる」とした。

  吉村氏は17日朝のフジテレビの情報番組に出演し、自民党との連立政権樹立は「半々、どっちに行くかの分岐点」にあるとし、維新としての「絶対条件」である国会議員の定数削減がなければ「連立はしない」と述べた。今年中を期限としてやりきる考えも明らかにしていた。

  夜のインターネットメディア「ReHacQ(リハック)」の番組でも、議員定数削減を次の臨時国会で行わない限り自民と連立は組まないと述べた。

  こうした吉村氏の主張について藤田氏は会見で、議員定数削減の実現に関しては同じ思いだと語った。削減数や実現時期での合意も連立参加の絶対条件かについては明確にしなかった。 

  年内の議員定数削減を求める維新の発言に各党から反発が出ている。自民の逢沢一郎衆院議員はX(旧ツイッター)に衆院選挙制度改革は与野党で協議中であり、「自民・維新でいきなり定数削減は論外」と指摘した。

  立民の野田佳彦代表も記者会見で、政治資金問題をうやむやにしたまま「次のテーマの定数削減というのは順番が間違っている」と批判した。

  毎日新聞は17日、自民が議員定数削減を受け入れる方向で最終調整に入ったと関係者への取材を基に報じた。削減人数や衆・参、比例・選挙区の詳細は引き続き協議し、両党間で20日までの合意を目指すという。

市場の動向

   17日の日本市場では、米地方銀行の融資問題が表面化した影響でリスク資産を回避する動きが広がり株式が大幅に下落、安全資産とされる債券と円は買われた。

  日経平均株価は17日、一時前日比1.6%安まで下落。東証株価指数(TOPIX)も一時1.2%値下がりした。安全資産需要から債券は上昇(金利は低下)。円は対ドルで149円台後半に上昇している。

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企業・団体献金、消費減税

  政策協議では国会議員定数削減のほか、維新が求める企業・団体献金の廃止と食料品にかかる税率を2年間ゼロ%にする消費減税も、両党間の調整が必要な課題となっていた。

  企業・団体献金の扱いは、公明党が規制強化にとどめた同党案の実現に慎重な自民の姿勢を理由に連立離脱を決断した政策課題だ。廃止に踏み込む維新の主張を受け入れるのは、自民にとって容易なことではない。 

  食料品への消費減税は高市氏も参院選前に主張していたが、総裁選では党内で賛同を得るには時間がかかることなどを理由に「今の物価高対策として即効性はない」と封印した経緯がある。仮に維新と合意した場合は自民党内の財政規律を重視する議員が反発しそうだ。

— 取材協力 Masahiro Hidaka, Toshiro Hasegawa, Hidenori Yamanaka, Komaki Ito, Yoshiaki Nohara, Sakura Murakami, Keiko Ujikane and Masaru Aoki

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