鈴でもなく。犬でもなく。クマ除けにもっとも効果があったのはドローン

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気温が高くなってくると、クマが里山に降りてきてしまう、というニュースを頻繁に耳にするようになりますよね。本来なら人のいない山のなかで静かに暮らしているクマですが、人間と生活圏が近くなりすぎると予期せぬ事故につながるので、共存するための課題解決が求められています。

実は、同じような問題が北米でも起こっていて、テックを使う試みが行なわれているのだとか。

北米で増加中のグリズリー遭遇

北米の一部でほぼ絶滅状態だったグリズリー。保護活動が身を結んで数が戻りつつある一方、人間との衝突リスクが高まっているのだとか。

特に、イエローストーンやグレイシャー国立公園周辺でグリズリーが町や農場に出没して困っているそうです。

そんな状況に対して、モンタナ州魚類・野生生物局のウェスリー・サルメント氏が6年間の研究を実施。クマを安全に追い払う手段として、いくつかの方法を試した結果をIFLSが報じています。

クマが人を襲うのはレアケース

グリズリーは雑食です。果物やナッツも食べるし、バイソンやヘラジカを狩ることもあります。

人間を襲って食べるのは稀ですが、人間の食べ物の味を覚えるとその食べ物を求めて町や農場に出てくる可能性があります。クマを見かけた住民はパニックになるし、最悪の場合は銃が使われたり、興奮したクマが事故を起こしたりすることも。

そんな事態を防ぐため、サルメント氏は「ヘージング(Hazing)」という手法を試しました。

ヘージングって何?

ヘージングとは、「動物を特定のエリアから追い払う、または望ましくない行動を抑制する」方法のこと(※「新入生いじめ」などの意味もある)。

サルメント氏はいくつかの方法を試し、その内4つを紹介しています。

1. 車で追跡(85%成功)

  • トラックでクマを追う。
  • 地形によっては使えないことも。

2. 非致死性の弾(74%成功)

  • クラッカーシェルやゴム弾を使用。
  • ただし、クマが慣れる可能性アリ。

3. クマ犬(効果ナシ)

  • クマを追い払う目的でエアデール・テリアを導入。
  • しかし、クマを発見できず、むしろハリネズミを追いかける始末。

4. ドローン(91%成功)

  • 赤外線カメラ搭載で遠隔操作。
  • 障害物を越えられるし、最も効果的だった。
  • ただし、強風や雨といった天候によって使えないことも。

ドローン、優秀すぎ

グリズリーがドローンを怖がる理由は不明ですが、サルメント氏は以下の仮説を立てています。

  • ドローンの音が蜂の群れっぽく聞こえて怖い?
  • クマにとって未知の飛行物体は脅威?
  • クマが鳥の巣を襲ったときに親鳥に攻撃される記憶がよみがえる?

色々と考えられますが、ドローンを使うとクマの出現頻度が年々減少するので、かなり頼りになるみたいなんです。

ただ、この効果が持続するかは不明。というのも、クマは学習能力が高いため、ドローンが自分たちの脅威にならないと理解したら怖がってくれなくなるかもしれません。

それに、ドローンでグリズリーを追い払うのは根本的解決とはいえないでしょう。

とはいえ、すごく参考になるし、野生動物との共存課題対策において明るい話題だと感じます。

日本でも、人間とヒグマやツキノワグマとの関係が複雑化してきているので、参考にしてみてほしいところです。

Source: IFLS

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