20年国債入札を投資家警戒、政治・財政リスク渦巻く-日銀会合も注視

政治の先行き不透明感と財政リスクから超長期債への売り圧力が続く中、投資家は17日の20年国債入札に警戒感を持っている。

  今回は石破茂首相の辞任表明後、初の超長期ゾーンの入札となる。財政規律に厳格と評価される石破氏と比べ、後任はより財政拡張的な政策を取る可能性がある。

  10月4日の自民党総裁選では、高市早苗前経済安全保障担当相と小泉進次郎農林水産相が有力候補として浮上している。高市氏の勝利は日本銀行の金融緩和と政府の財政支出拡大につながる可能性がある一方、小泉氏は財政面で穏健派とされ、金融政策では利上げ継続を支持するとみられている。

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  首相交代により日銀の利上げ見通しが不透明になり、債券投資家の心理を圧迫している。5年物と20年物の利回り格差は最近縮小したものの、日本のイールドカーブ(利回り曲線)は主要先進国で最もスティープ(傾斜)化した状態が継続。主要国で最も高い債務負担を抱える政府の借り入れコストを押し上げている。

  大和証券の小野木啓子JGBデスクストラテジストは、20年債利回りは魅力的だが、投資家は日銀の植田和男総裁が年内利上げを示唆するかどうかを見極めるため、金融政策決定会合を前に積極的な買いを控える可能性があるとみる。

  事情に詳しい複数の関係者によると、政治情勢が混乱する中でも日銀は年内利上げの可能性を排除しておらず、市場関係者は早期の利上げ観測を強めている。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場が織り込む年内の利上げ確率は約6割。日銀は18、19日の決定会合で政策金利を0.5%に据え置く見通しだ。

  新発20年国債利回りは今月初めに2.69%と1999年以来の高水準を付けた後、やや低下している。16日の米20年国債入札は落札利回りが2024年10月以来の低水準となった。

  財務省は7月から超長期債の発行を減額しており、さらなる発行削減について国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)に意見を求めている。それでも供給悪化懸念は根強く、8月の20年国債入札で投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.09倍と、12カ月平均を下回った。

  オリックス生命保険資産運用部の嶋村哲マネジング・ディレクターは、政治的な不透明要因が影響し、入札は「無難から軟調」な結果になると予想。日銀会合を控える中で買い手不足が鮮明になり、金利は徐々に上がっていくとの見方を示した。

  入札結果は午後0時35分に発表される。応札倍率のほか、平均落札価格と最低落札価格の差である「テール」も注目材料となる。

— 取材協力 Hidenori Yamanaka

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