「無差別テロ」に鈴やスプレーが効くのか クマの恐怖、防具開発を
誰もが外出に不安を覚えた、新型コロナウイルス禍のころのような息苦しさ――。
工藤哲記者(秋田支局)は、クマが市の中心部にまで出没する秋田市内のいまの雰囲気をそう表現します。住民は「無差別に襲う、言葉の通じないテロリストが野放しになっているようだ」。
工藤記者は、遭遇が避けられないのなら、襲われても大きな傷を負わない実効性のある防護策と、防具の開発、普及が急務と訴えます。
自衛隊ありがたく心強いが・・
北海道や東北地方にとどまらず、今や全国各地でクマによる人身被害が相次いでいる。
クマと遭遇するリスクに日常的に直面している秋田県民の一人として、政府や自衛隊が捕獲や駆除の対策に本腰を入れ始めたのはありがたく、心強い。
だが、普通の生活をしていてもクマとの遭遇が避けられなくなっている今、人が襲われた際の「防護」に関する議論や対策は、まだ不十分だと感じる。
専門家の知恵を結集し、防具の開発など、「防護策」の強化を進めてほしい。
襲われれば無傷で済まない
もしクマと遭遇したらどうするか。
秋田県の説明では、後ずさりせずに両手で首の後ろをつかんでうつぶせになり、揺すられても耐えられるよう、足はやや開いた姿勢を取るのが望ましいとされる。
クマが立ち去るまでその姿勢を保つ。特に目や鼻や耳を狙われるので「まずは顔を守ることが重要」という考え方だ。
一旦襲われると、顔を守っても肩や腕、腰などを引っかかれたり、かまれたりするため、無傷では済まない。
秋田県では連日のように身近で襲撃が起き、屋外イベントの中止や学校の休校が相次ぐ。登下校時の「クマよけ鈴」携帯と保護者による送迎、店のドアの自動開閉を止めて手動で開閉する光景は、ほぼ日常になった。
県民はクマが怖くてたまらない。
11月4日、秋田市中心部の私の自宅から1キロ以内の場所にも出没した。周囲を見回し、いつ遭遇するか、という不安が常に消えない。
朝夕の外出には勇気が必要で、2020年からの新型コロナウイルス禍で移動を控えた頃のような息苦しさだ。
ここからは、秋田で暮らす住民としての実感やクマによる外傷の治療にあたってきた医師への取材を踏まえて、どんな防護策をとり得るのかを考えていきます。
ある県民は「まるで無差別に襲撃し対話の通じないテロリストが、山の…