ロイドがヨルの正体に気付かぬ謎 無意識的に「違和感」を拒否?『スパイファミリー』

2025年10月4日よりTVアニメ『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』season 3が始まります。(偽装)家族のフォージャー家のなかで「ロイドがヨルの正体に気付かない謎」について考えてみます。

「『SPY×FAMILY』Season 2 Vol.3 初回生産限定版」Blu-ray (C)遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

 2025年10月4日から『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』season 3の放送が始まり、翌5日には劇場版『SPY×FAMILY CODE: White』の地上波初放送も控えています。この機会に、シリーズの核心ともいえる「ロイドがヨルの正体に気付かない謎」について考えてみませんか?

●優秀すぎるスパイが見落とす「明らかな違和感」

スパイの「ロイド・フォージャー(コードネーム:黄昏)」は任務遂行のために、超能力者の「アーニャ」を娘に迎え、「ヨル」と偽装結婚します。しかし、ロイドは彼女が「いばら姫」と呼ばれる凄腕の殺し屋であることに気付いていません。

 ロイドは標的のホクロの数まで調査できる能力を持ち、ペンギンを個体識別も可能なほど優秀なスパイです。それを踏まえると彼女の正体に気付かないのは、非常に不自然ではないでしょうか?

 ヨルはロイドの前でギャングを難なく撃退したり、テニスボールを音速で撃ち返したりと普通の女性にはありえない超人的な能力を何度も披露しています。さらに、ロイドはヨルの弟「ユーリ」が敵対する東国の秘密警察所属と調べ上げているにもかかわらず、ヨルの正体を徹底的に調査しようとしませんでした。

●「疑いたくない」という無意識の選択

 この不自然さの説明として考えられるのは、「ロイドは(無意識で)ヨルを疑いたくない」という心理です。この裏付けとして、作中ではロイドが「自分の気持ちだけはよく理解していない」と描写されています。

 例えば、ロイドはアーニャが誘拐されたときに「子供は他にいくらでもいる」と思いながらも、実際には彼女を助けに行きます。また、アーニャがイーデン校に合格したときは心から喜び、普段はありえない「気の緩み」を見せました。彼は人に情を持たないことが多いですが、気に入った相手にだけ無意識に甘くなる傾向があるのです。

 ロイドがヨルを本格的に疑ったのは、原作第14話(アニメ第9話)の1度だけです。偽装した秘密警察としてヨルを詰問したものの、「秘密警察とつながっていない」と判断すると、それ以降、ヨルの超人的な行動に対する根本的な疑問を持たなくなりました。

 彼の仲間であるスパイの「夜帳」は、ヨルをひと目見ただけで「隙のない身のこなし」と見抜いています。プロフェッショナルなら分かる「訓練された者」の動きに、ロイドが気付かないはずはありません。

●「ひと目惚れ」が生んだ盲点

 ロイドとヨルは密輸組織の襲撃という緊急事態で出会い、戦闘の最中に(偽装)結婚の提案を受けました。この展開からは、ロイドが「素直で強くて美しい」ヨルにひと目で惹かれ、「シロという直観」に従って妻として迎えた可能性が読み取れます。

 この感情は、ヨルがひったくりを追いかけるなどの人道的行動によって強化され、やがて彼女はロイドにとってかけがえのない存在になっていったのでしょう。

 ロイドはヨルに蹴られたときでさえ「逆ハニートラップなのか!? ヨルさんもスパイだったのか」と一瞬思いつつも、すぐに「落ち着け黄昏、それはない」と自己否定し、「オレとしたことが気持ちの精査を怠るとは……! ヨルさんといるとどうにも調子が……」と、感情の乱れを見せていました。

●これからの展開に潜む危機

『SPY×FAMILY』の魅力は、偽りの家族が本当の家族に近づいていく過程にあります。西国のスパイであるロイドと、東国の殺し屋であるヨルという根本的な対立は残っています。season 3では、ロイドの「見えない盲点」が物語にどのような影響を与えるのか、ハラハラしながら見守りたいものです。

(マグミクス編集部)

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