今秋ドラフトの目玉は「佐々木麟太郎」か 2年後のセ・リーグDH制導入で上位候補に浮上 鬼筆のスポ魂
2年後のセ・リーグ指名打者(DH)制導入によって、今秋のプロ野球ドラフト会議で上位指名候補に浮上してくるスラッガーがいる。その名は佐々木麟太郎-。すでに複数球団が海を渡り、〝麟太郎詣で〟を行っているという情報もある。10月下旬開催予定のドラフト会議まで、その身辺は騒がしさを増すはずだ。
スタンフォード大へ進学
岩手・花巻東高で史上最多とされる高校通算140本塁打を記録した佐々木麟太郎内野手(20)は日本のプロ野球には進まず、昨年9月にスタンフォード大へ進学した。大学1年目の今季は52試合に出場し、打率2割6分9厘、7本塁打、41打点をマークした。
リーグ戦終了後は、全米を代表する大学野球のサマーリーグ「ケープコッド・ベースボールリーグ」のコチュイットに所属。同リーグでは選抜された選手が10チームに分かれてプレーしているが、佐々木は10試合に出場して打率1割7厘、2本塁打、6打点と不振を極め、7月5日(日本時間6日)にリーグから離脱した。
高校通算140本塁打の実績をひっさげ、岩手・花巻東高からスタンフォード大に進学した佐々木麟太郎(同大提供、共同)佐々木の名前がここに来て急浮上する理由は、サマーリーグでの成績不振に加え、8月4日のセ・リーグ理事会で決まった「2027年シーズンからのDH制導入」と関係する。
1975年にパ・リーグが導入したDH制。セ・リーグが導入を決めたのは、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会でも採用され、来春からは東京六大学や高校野球でも導入されることが大きな理由だ。来年は「猶予期間」として2027年シーズンからの導入となる。
「打つだけならすぐ使える」
佐々木は来年4月18日の誕生日で21歳を迎え、同7月に行われる米大リーグ機構(MLB)のドラフト会議で指名対象選手となる。ところが、サマーリーグでの成績不振のみならず、守備や走塁面に不安があり、ポジションも一塁手に限定されることから、大リーグ側の評価は高くない。打撃面でも日本人としてはパワーはすごいが、米国では秀でた存在とはいえない。
第105回全国高校野球選手権の宇部鴻城戦で適時打を放つ花巻東・佐々木麟太郎=2023年8月8日、甲子園球場(水島啓輔撮影)一方、日本のプロ野球界では佐々木の評価は高く、「打つだけならすぐに1軍で使える」と話すスカウトもいる。スタンフォード大が属する全米大学体育協会(NCAA)1部は来年2月にシーズンが開幕し、同5月までリーグ戦を戦う。仮に今秋のプロ野球ドラフト会議で佐々木を指名し、交渉権を獲得したとしても、交渉のテーブルに就くのは来年6月以降になる。2年後のDH制導入を控えるセ・リーグの球団にとっては、まさにタイミング的にはピッタリなのだ。
メジャー志向に変化は
海外の大学でプレーする佐々木はプロ志望届を提出する必要がない。今秋のプロ野球ドラフト会議で指名がなければ、来年7月のMLBドラフト会議の結果次第で手の届かない存在となる可能性がある。あとは高校卒業時にメジャー志向とみられていた佐々木が、1年間の米国での生活を通じて心境にどのような変化があるのか…。そのあたりを確認すべく、プロ野球の複数球団のスカウトが渡米し、調査に乗り出している。
打席で気合を入れる花巻東・佐々木麟太郎。高校時代は通算140本塁打を放った=2023年8月19日、甲子園球場(根本成撮影)昨年のドラフト会議ではオリックスが佐々木を6位で指名しようとしたが、プロ野球志望届を提出していなかったことなどから断念した。今年は待ったなしでどこかの球団が指名するだろう。セ・リーグ6球団の上位指名は、「麟太郎」の評価が大きな鍵を握る。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。