コラム:中国恒大の上場廃止が示す中国の終わりなき不動産危機
習近平国家主席が推進する大規模な負債削減キャンペーンが始まってからわずか1年後の2021年12月、中国恒大は米ドル建て債券の債務不履行に陥った。総額3000億ドルの負債再編協議が始まると、債権者は強硬な姿勢を示した。不動産市場が急速に回復し、売上高で中国最大の不動産開発業者だった同社の業績が好転すると考えていたからだ。
確かに中国ではかつて、不動産市場の好不況サイクルが目まぐるしく繰り返されていた。中国恒大が09年に香港で上場した時、不動産市場は低迷していた。しかし、習氏が全国的な住宅供給過剰への対策を通じてデフレ対策を進めた結果、同社の時価総額は17年に過去最高の530億ドルに達した。
The line chart shows the market capitalisation of China evergrande Hongkong listed shares from the time of listing in 2009.現在中国経済は再びデフレと闘っている。しかし、習氏はこれまでのところ過去の景気刺激策に頼ることを拒んでおり、大規模な不動産刺激策は実施されていない。25年上半期の不動産投資は前年同期比11%減少した。下半期の経済政策の優先事項を決定する中国共産党中央政治局の7月の会議の報告では、不動産市場への言及はなかった。
代わりに指導部は地方自治体が独自に住宅政策を策定することを認めている。そのため北京や上海といった一部の都市では住宅価格と販売が回復しているものの、短期的には全国的な回復は見込めない。このような市場の分断は、過去の好況期に全国展開を進めてきた不動産会社にとって厳しい状況となるだろう。HSBCのアナリストは今週発表したリポートで、回復は「ばらつきが大きい」ものになると予想しており、地方市場で強い価格決定力を持つ国有企業が恩恵を受けるとの見方を示した。
中国恒大の経営権を18か月前に取得した清算人であるアルバレス・アンド・マーサルのエドワード・ミドルトン、ティファニー・ウォン両氏は12日、初の進捗報告を行った。それによると、債権者の請求額が450億ドルあるのに対し、回収できたのは2億5500万ドルにとどまった。中国政府が海外債権者よりも本土でのプロジェクト完了を優先しているのは意外ではない。だが。この事実は不動産危機の深刻さを改めて認識させる厄介な状況と言えるだろう。
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Chan Ka Sing is China Columnist for Reuters Breakingviews. Prior to joining Reuters, he worked at Week in China, Hong Kong Economic Journal and Dow Jones Newswires.