【米国市況】S&P500、過熱感で小反落-FRB理事人事でドル下落

7日の米株式相場でS&P500種株価指数は小反落。投資家の間では株価の過熱感に対する懸念も出ている。国債市場では30年債入札が低調となった。ドル指数は終盤に上げを消し、5営業日続落。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6340.00 -5.06 -0.08% ダウ工業株30種平均 43968.64 -224.48 -0.51% ナスダック総合指数 21242.70 73.28 0.35%

  個別銘柄ではインテルが下落。トランプ米大統領は同社のリップブー・タン最高経営責任者(CEO)が利益相反の状態にあるとして、辞任を求めた。フィラデルフィア半導体株指数は上昇した。イーライ・リリーは14%安。同社が開発中の経口肥満治療薬の体重減少効果は、ウォール街の期待レンジの下限にとどまった。

  米株について一部の大手金融機関は、割高なバリュエーションを背景に目先の調整に備えるよう顧客に警鐘を鳴らしている。強気派にとって懸念材料となっているのが季節要因だ。歴史的にS&P500種は8月と9月に軟調となる傾向がある。

  ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は「ヘッドラインリスク(ニュース速報で相場が振れるリスク)は依然高いと当社では見ており、それなどに基づくと現在の市場環境にはエアポケットが生じる可能性がある」と指摘。「このため、年末に向けて市場は下落局面に入りやすい状況にある」と述べた。

  S&P500種は午前中は前日比プラス圏で推移する場面もあった。ロシア大統領府は、プーチン大統領とトランプ米大統領が今後数日以内に首脳会談を行うと発表。地政学リスクの緩和を意識した買いが入ったとみられる。

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  米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長人事を巡っては、トランプ大統領側近らの間ではウォラーFRB理事が最有力候補として浮上していることが、事情に詳しい複数の関係者の話で明らかになった。

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  ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「ウォラー氏について私は長らく、トランプ大統領の意向を実現し、パウエル議長を追い出す存在だと考えてきた。ウォラー氏が議長になれば、大統領はFRBの2つの理事ポストを指名できるようになる」と指摘。「他の候補者の場合、パウエル議長が理事として残り、結果として名ばかりの議長となるリスクがある」と語った。

  米アトランタ連銀のボスティック総裁は、年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらないと指摘。関税によるインフレへの影響が一時的なものにとどまるとの見方には、懐疑的になる理由があると改めて表明した。

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  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブハーディ氏は「米国の実効関税率が15%前後になるというのが引き続き当社の基本シナリオだ」とした上で、「これは成長の重しとなり、インフレを押し上げる水準ではあるが、米経済や株式相場の上昇を頓挫させるほどではない」と述べた。

為替

  外国為替市場ではドルが終盤に下げた。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は5営業日続落となった。

  ドルは日中は買い優勢となっていたが、ニューヨーク時間午後3時半ごろにFRB理事の人事を巡るニュースが伝わると、下げに転じた。トランプ米大統領はミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長をFRB理事候補に指名した。

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  ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は同人事について、FRBがよりハト派に傾く可能性を示唆しており、ドル売りにつながる公算が大きいとの見方を示した。また、FRBの独立性が損なわれるとの懸念が高まれば、ドル売り圧力につながるのは自然な流れだとも述べた。

  宮入氏によれば、ミラン氏は過去にドル安を促す枠組みに関する論文を発表していたという。

  BMOグローバル・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、ビパン・ライ氏は「ミラン氏の過去の発言を踏まえれば、この人事はドルにとって弱材料となる」と指摘。その上で「ただ実際のところ、FRB理事の人事が市場の価格形成に与える影響はそれほど大きくない」と語った。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1203.66 -0.94 -0.08% ドル/円 ¥147.07 -¥0.30 -0.20% ユーロ/ドル $1.1666 $0.0006 0.05%     米東部時間 16時47分

  主要通貨では英ポンドの上昇が目立つ。イングランド銀行(英中央銀行)は利下げを決定したが、今回会合での利下げ支持は金融政策委員会(MPC)メンバー9人のうち5人にとどまり、経済成長鈍化とインフレ再燃という複雑な要因にどう対応すべきか、英中銀内で意見の隔たりが大きいことを浮き彫りにした。

  ベイリー総裁はMPCの投票結果について「微妙なバランスでの決定だったことをよく表している」と述べ、「市場に対する自分のメッセージは、それ以上に深読みするなと言うことだ」と話した。

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  オンライン証券会社XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「今回の会合後、市場では英金利見通しの織り込みが変化した」と指摘。「年内に追加利下げが実施されるとの見方は以前よりも後退している」と述べた。

  円は対ドルで終盤に上昇に転じた。日中は1ドル=147円台40銭を挟んで推移していたが、FRB理事候補指名のニュースを受けて一時146円台後半まで上昇した。

国債

  米国債相場は下落(利回りは上昇)。この日行われた30年債入札の需要は低調となり、現在の利回り水準に投資家が魅力を感じていない可能性が示唆された。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.82% 0.4 0.08% 米10年債利回り 4.25% 2.0 0.48% 米2年債利回り 3.72% 0.6 0.16%     米東部時間 16時48分

  2500億ドル規模の30年債入札では最高落札利回りが4.813%。入札前取引(WI)水準は4.792%だった。落札全体に占めるプライマリーディーラーの割合は17.5%と1年ぶりの高水準を記録した一方、間接入札者の割合は59.5%に低下した。

  今週行われた3年債および10年債の入札も、低調な結果となっていた。1日には7月の雇用統計が予想以上に弱い内容となった衝撃で、国債利回りが大きく低下したが、投資家は今なお慎重姿勢であることがうかがえる。

  TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「一連の入札で最高落札利回りが事前の市場水準を上回ったことは、雇用統計の下振れを受けて市場がいかに慎重かつ神経質になっているかを示している」と指摘。「投資家はどんな水準でも利回り低下に飛びつく姿勢ではなく、慎重にタイミングを見極めながら行動している。来週に米消費者物価指数(CPI)発表を控えるなか、その傾向が一段と強まっている」と述べた。

  この日は労働関連の指標が2本発表された。新規失業保険申請件数労働生産性は、いずれも利回りにほぼ影響しなかった。

  12日に発表される7月のCPIで物価上昇率が上振れすれば、早期の利下げ観測は再び後退する可能性がある。複数の米金融当局者は、労働市場の冷え込みに対応するため利下げが必要だと主張している。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は6営業日続落。終値として約2カ月ぶりの安値を付けた。予定されているロシアのプーチン大統領とトランプ米大統領の会談を待つ中、売りが続いた。同会談の結果はロシア産原油の供給に影響する可能性がある。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=64ドルを下回り、6月初旬以来の安値で終えた。6日続落は2023年12月以来の長期下落。ロシア大統領府のウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)は、ロシアと米国は首脳会談の開催地で合意しており、場所は後日発表されると記者団に明らかにした。

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  バノックバーン・キャピタル・マーケッツの商品担当マネジングディレクター、ダレル・フレッチャー氏は「トランプ大統領とプーチン大統領の会談が迫る中、ロシア産石油への関税を巡るリスクプレミアムがやや後退しているようだ」と述べた。「プレミアムが下がり、需給要因が再び注目される中、市場は年末に向けた供給過剰に注目している」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比47セント(0.7%)安の1バレル=63.88ドル。ロンドンICEの北海ブレント10月限は、0.7%下げて66.43ドルで引けた。

  金相場は反発。FRB理事候補にミラン氏を指名するとの報道を受けて買いが入った。ただ、ロシアのプーチン大統領とトランプ米大統領が数日以内に会談するとロシア大統領府が発表したため、ウクライナでの停戦期待から伸び悩む場面もあった。

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  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時16分現在、前日比22.21ドル(0.7%)高の1オンス=3391.54ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、20.30ドル(0.6%)高の3453.70ドルで引けた。

原題:Stocks Halt Rally as Weak Bond Sale Lifts Yields: Markets Wrap

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(FRB理事人事に関する市場関係者のコメントをさらに追加します)

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