新しいスタレビが始まる 声失っても、歌おう笑おうプラスに変えよう:朝日新聞
2026年にデビュー45周年を迎えるスターダスト☆レビュー(スタレビ)。中心メンバーは60代半ばを過ぎたが、今も全国を駆け回ってライブを続ける、日本有数のライブバンドだ。そのメンバーで、パーカッショニストの林“VOH”紀勝(はやし・ボー・としかつ)さん(65)は2年前、喉頭(こうとう)がんで声帯を失った。
歌えなくなったこと、日常生活すら困難な体になったこと。一時はバンド脱退を考えたが、リーダーでメインボーカル・ギターの根本要さん(68)らメンバーからの言葉に引き留められる。2024年5月の福島県郡山市での公演で、2年ぶりのステージに立ち、メンバーや観客のあたたかさに迎えられた。「生きていて良かった、ここに帰りたい」。新しい「声」を手に入れた林さんとスタレビの歩みが始まった。
スターダスト☆レビューの林“VOH”紀勝さん=2025年8月27日、東京都港区、金居達朗撮影郡山で感じた思いは、林さんに力を与えた。
「俺、大阪に出てみようかな」
スタレビはこの年の9月、大阪での野外ライブを予定していた。
7月、自宅で本格的なパーカッションの練習を再開。復帰曲は1曲。ただし、12分間を超えるメドレー曲。練習を重ねて、リハーサルに参加した。
メンバーと音を合わせた。家で音源に合わせて練習するのと、メンバーの生の音に合わせるのとは、必要なパワーがぜんぜん違う。自分の体力のなさ、2年間のブランクも痛感した。
それでも、楽器の音をいとおしそうに演奏する林さんの姿が、根本さんはうれしかった。このとき、新しいスタレビが始まった、と振り返る。
「久しぶりの演奏は、だめだったね(笑)。というのは極端だけど、昔からの癖は抜けてなくて、相変わらずだな、って。でも、いいんです。音楽は100点とらなくていいもんなんだから」
2年ぶりに野外ライブで演奏する林さん=2024年9月8日、大阪市、ラプソディ提供迎えた本番。大阪市の大阪城音楽堂は、厳しい残暑の日差しに照らされながら、ステージと観客が一体となり、熱気の渦に包まれていた。
根本さんが切り出す。「次がいよいよ最後の曲。その前に、スペシャルゲストを紹介します」
林さんがステージに登場する。どよめく観客に向かって、EL(電気式人工喉頭)をのどに当てた。
「ただいま」
機械を通じてだが、確かな肉…