エア・インディア、燃料スイッチなぜ切ったと副操縦士が問いかけ

墜落したエア・インディア171便のコックピットで、燃料供給スイッチをなぜ切ったのかと問いかけたのは若手副操縦士だったことが、音声記録から明らかになった。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  公に話す権限のないとして匿名を条件に語った関係者の話から、コックピット内での具体的なやり取りが明らかになった。インド航空事故調査局(AAIB)が先週発表した暫定報告書では、パイロットらの会話の概要が示されたが、発言者の名前は記されていなかった。

  報告書によれば、2つの燃料スイッチがカットオフ(遮断)位置に切り替えられたことで、ボーイング787「ドリームライナー」は離陸から32秒後に揚力を失い、墜落した。AAIBがコックピットボイスレコーダーから抽出したデータによれば、一方のパイロットはスイッチを切ったことを否定していた。

  航空専門家の間では、副操縦士のクライブ・クンダー氏が、機長のスミート・サバルワル氏になぜスイッチを切ったのかと質問したのだと推測されていた。事故当時操縦を担当していたのがクンダー氏で、片手で操縦桿を握りもう一方の手でスロットルを操作していたため燃料スイッチに触れることはできかったはずだからだ。

  コックピット内の会話について米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。

  墜落機の燃料制御スイッチが離陸直後にオフの状態に切り替えられていたことが初動調査で判明している。およそ10秒後には再びオンに戻されたものの、墜落を防ぐには間に合わなかった。6月12日に発生したこの事故で、乗員・乗客および地上で計260人が死亡した。

  現在、エンジンへの燃料供給を遮断することになったスイッチの操作が「なぜ、どのように」起きたのかが、調査の焦点となっている。調査当局は、機体システムの故障か、あるいは人的ミスかを見極めようとしている。

  今回明らかになった新たな情報は、離陸から墜落までのわずか32秒間にコックピット内で生じた混乱を浮き彫りにするものだが、調査官らは依然として明確な結論には至っていない。

  事故調査には航空心理学者や医療専門家も加わり、パイロットがどのような役割を演じたかの検証も行われている。

  WSJ紙は関係者の話として、副操縦士は燃料スイッチがオフになっていたことに驚き動揺した様子を見せた一方、機長は冷静さを保っていたようだと報じている。

  インド航空操縦士協会は、人的要因を事故原因とする見方に異議を唱えている。

  AAIBは通常業務時間外に送られたコメント要請に即時には対応しなかった。調査に協力している米国家運輸安全委員会(NTSB)は全ての回答をインド当局に委ねる姿勢を示した。ボーイングもAAIBに問い合わせるよう求めた。エア・インディアおよびエンジン製造元のGEエアロスペースはコメントを控えた。

原題:Junior Pilot Asked Air India Captain Why Fuel Switch Was Off (1)(抜粋)

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