カシミール地方のインド支配地域で観光客ら銃撃される 20人以上死亡
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インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で22日、人気観光地を訪れた観光客グループが武装集団に銃撃され、少なくとも20数人が殺害された。当局がBBCに説明した。
銃撃があったのは、ヒマラヤ山脈にある風光明媚(めいび)な町で「インドのスイス」とも呼ばれるパハルガムから5キロほど離れた、山の上の草原バイサラン。
警察によると、観光客らが銃撃され、病院に運ばれた。一帯は封鎖され、検問所では兵士が車を止めている。インド軍とジャム・カシミール警察が合同で捜索活動に当たっているという。同警察の幹部は、現場に車両が到達できていないと、BBCヒンディー語に話した。
報道によると、多数の負傷者も出ており、重体の人もいる。
この地域では紛争が長年続いているものの、観光客が標的にされることはほとんどなかった。今回の襲撃は被害者数も多く、異例といえる。
襲撃されたグループにいたインド・グジャラート州からの観光客によると、突然発砲されて混乱が起こり、全員が走り、泣き、叫ぶなどしたという。
インドのメディアが取り上げた動画では、インド兵らが襲撃現場に向かって走っているように見える。別の動画では被害者たちが、銃撃犯らは非イスラム教徒を狙ったと話している。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、草原に何体かの遺体が置かれ、人々が泣き、助けを求めている様子が映っている。BBCはこの動画の内容を確認できていない。
襲撃実行の声明は、どの勢力からも出ていない。イスラム教徒が多数を占めるこの地域では、1989年以来、長期にわたる反政府活動が続いている。ただ近年は、暴力は減少傾向にある。
パハルガムは外国人にも人気の観光地で、政府は近年、観光の促進に努めている。公式データでは、昨年カシミール地方を訪れた観光客は約350万人に上った。
今回の事態を受け、インドのナレンドラ・モディ首相は、サウジアラビア訪問を途中で切り上げた。そして、「テロと闘う私たちの決意は揺るがず、いっそう強固になる」との声明をソーシャルメディア「X」に投稿した。
アメリカのドナルド・トランプ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、欧州連合(EU)トップのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長らも、襲撃を非難する声明を出した。
インドのメディアによると、いくつかの抗議行動が23日に予定されているという。
この地域では1990年代以降、インド支配に反対する武装勢力による攻撃で、民間人や治安部隊員を含む数万人の命が奪われている。
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1947年にインドとパキスタンが分離してイギリスから独立して以降、カシミール地方は分割支配されてきた。どちらも互いにカシミール全域の領有権を主張しており、2度の戦争と限定的な紛争を繰り返してきた。インドとパキスタンはともに核保有国。
インドは兵士約50万人を、同地方に常駐させている。
2019年にモディ氏がカシミール地方の一部自治権を廃止して以来、同地方での衝突は減少しているが、なくなってはいない。
2024年6月には、ヒンドゥー教の巡礼者を乗せたバスに武装勢力が発砲し、9人が死亡、33人が負傷した。
2019年には、インド支配地域で自爆攻撃があり、少なくとも46人の兵士が死亡。インドはパキスタンを空爆した。