ドコモ・PayPay脅かす…「au経済圏」秘めたる実力、ローソン提携で覚醒する理由(ビジネス+IT)

 スマホ決済やポイント競争が過熱する中、静かに勢力を拡大しているのがKDDIの「au経済圏」だ。通信を軸に、同社の銀行・保険・資産運用機能を束ねるauフィナンシャルグループは、預金残高4.8兆円、カード会員1,000万人超という規模に成長。そして今、その巨大ネットワークを覚醒させる“引き金”となりそうなのがローソンとの連携だ。それでは、ドコモやPayPayに追いつく鍵となるローソン提携の在り方とは…。 auじぶん銀行「住宅ローン残高の推移」

三菱UFJ、三井住友、みずほ、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天、BaaSを活用した異業種勢──。近年、金融サービスの領域で「顧客獲得」の競争が激化している。今後、どの企業が顧客を最も集めるのか。勝敗を分けるポイントとは何か。各社の事業を比較しながら、今後の展望を解説【詳しくはこちら】。 ・講義 10月23日(木)に「勝者は誰に? 3メガバンク・4大通信キャリア・異業種勢の『金融サービス競争』完全解説の2時間」 ・講師 著者 マリブジャパン 代表取締役 高橋克英氏

 KDDI傘下のauフィナンシャルホールディングスは、auじぶん銀行、auフィナンシャルサービス、auペイメント、au損保、auアセットマネジメント、auフィナンシャルパートナーズ、au Reinsurance を有する金融持ち株会社だ(冒頭図表、※なお、決済事業の一元化とさらなる推進のため、2026年7月にauフィナンシャルサービスはauペイメントに吸収合併される予定)。  これらauフィナンシャルグループにおいて、auじぶん銀行の預金残高4.8兆円、口座数689万口座、auPAYカード会員数1,031万人、auPAYポイント運用利用者600万人、auPAY会員数3,770万人を誇るau経済圏(Ponta経済圏)を形成している(2025年7月1日時点)。なお、Pontaポイントは、au経済圏の共通ポイントサービスである。  特に、auじぶん銀行では、住宅ローンを強化しており、2025年1月から借入期間を最長50年としたり、ペアローン連生団信の提供開始もあり、住宅ローン残高は前年度3.0兆円から4.4兆円にまで増加している(2025年3月末)(下図)。  KDDI、および傘下のauフィナンシャルホールディングスは、スマホ・セントリックな決済・金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」を推進している。  また、通信と金融の連携強化にも力を入れており、KDDIが提供するスマホ向け料金プラン「auマネ活プラン」とauフィナンシャルグループ各社の提供する金融サービスをセットで利用することで、auじぶん銀行の預金金利などを優遇する「auマネ活プラン+」の提供はその一環の戦略だ。  そんなauフィナンシャルグループと関係の深い各社との状況を整理したい。それは、今後、各社との関係がauフィナンシャルグループの成長を大きく左右する要素となるからだ。


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 2019年のKDDIとロイヤリティマーケティングによる資本業務提携以降、三菱商事、KDDI、ローソンの3社は、自らが大株主でもあるロイヤリティマーケティングが展開する共通ポイント「Ponta」を軸にしたPonta経済圏(au経済圏)の拡大に向けて連携を行ってきた。  2024年2月には、三菱商事とKDDI、ローソンの3社が資本業務提携を発表。ローソンは三菱商事とKDDIが50%ずつ株式を保有することとなり、2024年7月に上場廃止となった。三菱商事とKDDIは共同経営パートナーとして、ローソンの企業価値向上に向けて3社で取り組むとしている。  KDDIは、約1,500万人が利用するクーポンやコンテンツの有料会員サービス「auスマートパス」を「Pontaパス」としてリニューアルし、2024年10月から提供を開始している。ローソンで利用できる無料・割引クーポンを週替わりで提供したり、ローソンで「au PAY」利用時にPontaポイント還元率を上乗せなど、ローソンでの買い物での特典を追加することで、協業を進めている。

 そのほか、KDDIとローソンは2025年6月に、未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」1号店として、「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」を開店した。  その中で注目なのは、「Pontaよろず相談所」によるリモート接客の提供だ。ブース内に設置した「次世代リモート接客プラットフォーム」を通じて、通信・ヘルスケア・金融・清掃・家事代行など暮らしに関わるさまざまなサービスについて、ビデオ通話を通じて各分野の専門スタッフに事前予約なしで相談できる。  金融に関しては、FPによるライフプラン(保険、老後の資金、住宅ローン、教育費、日々の家計管理、個人年金など)の相談、また、au PAYカードの相談・申し込みが可能である。  なお、「Pontaよろず相談所」におけるFPの所属会社はFPパートナーとなる。FPによる無料相談「マネードクター」を展開するFPパートナーは全国47都道府県に186拠点を構え、2,522人のFP社員を有している(2025年5月)。  KDDIは、FPパートナーと、2019年3月に業務提携契約を締結。2020年1月には、auアセットマネジメントとFPパートナーが各々50%出資する合弁会社「auフィナンシャルパートナー」にてFPによる無料の対面相談でマネープランニング支援を開始している。  なお、FPパートナーは2025年8月、保険募集業務等に関して関東財務局より業務改善命令を受けており、「Pontaよろず相談所」でのFPへの相談は、現在受付停止中だ。


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 KDDIは2008年、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)と折半出資で、「じぶん銀行」(現auじぶん銀行)を設立したり、三菱UFJ証券HDが、auカブコム証券に51%出資するなど、KDDIとMUFG(三菱UFJ)の関係は、歴史的にも深いものがあった。  しかしながら、KDDIが、2019年にじぶん銀行を子会社化するなど、双方が独自色を強める中、auカブコム証券を、2025年1月末に三菱UFJ銀行の完全子会社し、「三菱UFJeスマート証券」に変更する一方、auじぶん銀行は、KDDIの完全子会社となった。  この出資関係解消で、三菱UFJはグループにネット銀行を持たなくなり、KDDIはネット証券を持たないことになっていた。  こうした中、2025年5月、MUFG(三菱UFJ)は個人向け金融の新ブランドとして「エムット」を展開すること、2026年度後半にデジタルバンクを設立することなどを発表した。

 一方のKDDIでは、2025年7月に、傘下のauフィナンシャルグループとSBI証券が個人向け事業における業務提携を検討開始すると発表されている。  2025年9月には、SBI証券の口座にauじぶん銀行からリアルタイムに入金する口座振替と預金金利の優遇の提供を開始。同年10月には、SBI証券とauじぶん銀行は金融商品仲介業サービスも開始している。  auじぶん銀行は、出資関係解消後も、MUFGの三菱UFJeスマート証券とも連携しているものの、マネックス証券を傘下に持つドコモや、PayPay証券を有するソフトバンク、楽天証券を有する楽天に比べて証券分野でのサービスが弱かった。今回のSBI証券との連携によって、au経済圏ユーザーの利便性と満足度を高めることで、auじぶん銀行などauフィナンシャルグループの預金や住宅ローン、クレジットカードや決済などの増加を見込んでいる。  なお、SBI証券を有するSBIグループは、元々オープンアライアンスを打ち出しており、包括資本業務提携を結ぶSMFG(三井住友)OliveのVポイント経済圏に加えて、NTTドコモによる住信SBIネット銀行の買収により、ドコモ経済圏とも協業関係にある中、今回の業務提携によりau経済圏とも協業関係を持つことになる。

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