ドコモ、au、ソフバンはなぜスターリンクに走ったのか…イーロン・マスクが書き換える"接続"という新しい権力(プレジデントオンライン)
携帯大手KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクが、人工衛星を使った新たな通信サービスを相次いで発表している。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「通信各社がこれほど同じ方向を向くことは、競争市場では本来ありえない。スターリンクの登場で通信という産業の前提は崩れ始めており、イーロン・マスクが『接続』という新しい権力の設計図を静かに書き換えつつある」という――。 【写真をみる】テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)=2023年6月、パリ ■なぜいま、3社は同時に動き始めたのか テレビを何気なく見ていると、ふとした違和感に気づく。料金や速度を競ってきたはずの通信会社が、ほぼ同時に同じ言葉を口にしているからだ。空が見えれば、どこでもつながる。 スターリンクである。 山でも、海でも、圏外でも。KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクという三社が、似たメッセージで動き始めた光景は、本来であれば競争市場では起こりにくい。先行していたKDDIが市場を教育し、2026年春にソフトバンクとドコモが一気に乗り込み、日本で“衛星直結元年”が可視化した。 この“揃い方”は偶然ではない。ここには、通信という産業の前提が変わりつつある兆候がある。 通信は長い間、地上の産業だった。基地局を建て、面で覆い、人口に応じて投資する。その結果、日本では人口カバー率がほぼ100%に近づき、都市部では速度や品質の差を感じにくくなった。つまり、従来の競争軸――速さや価格――では差がつきにくくなったのである。 では、次に何で競争するのか。残された領域は一つしかない。 それは、これまで“仕方がない”とされてきた圏外である。 ■「空から覆う」という発想の転換 山間部、離島、海上、そして災害時。地上インフラの延長では埋めきれない空白をどうするか。この問いに対して現実的な答えとして現れたのが、スターリンクである。 スターリンクは、基地局を増やすのではなく、空から覆うという発想に立つ。この違いは単なる技術の差ではない。通信の起点そのものが変わるという意味を持つ。これまで通信は地上に依存して広がってきたが、その前提が外れ始めている。 ここで最初の違和感に戻ると、三社が同じ方向を向いている理由が見えてくる。競争をやめたのではない。競争のルールが変わったため、同じ出発点に立たざるを得なくなったのである。地上の延長線では差がつかない以上、宇宙という新しい層を取り込まなければならない。 ただし、表面が似ているからといって中身まで同じではない。先行して市場を押さえようとする企業、既存顧客への提供で囲い込む企業、独自技術との組み合わせで差を作ろうとする企業。それぞれの戦略は異なるが、共通しているのは一つの認識である。 通信の価値が変わった、という認識だ。