福岡県議会カツアゲ疑惑 自民“72歳のドン”巡る「藏内税」とは 「あの人は筑後で一番現金を持っている」

“議長は一本”――いつ頃からか、福岡県政ではそんな言葉が伝わっていった。  県政関係者が言う。 「20年前ぐらいから、県議会の議長になるには一本、つまり1000万円の“実弾”が必要と耳にするようになりました。福岡の政界では公然の秘密と言っていい状態だったと思います」  まことしやかにささやかれていた地方政治の悪習が全国的に大きく報じられたきっかけは、元議長の吉松源昭(もとあき)県議(58)の告発だった。 「一昨年、海外視察に3年で3億円近い公費が使われたことが報道されて以降、福岡県議の高額な海外視察などが問題視されていました。そんな折、7月7日に吉松県議が記者会見を開き、2020年6月の議長就任前に、自民会派幹部に約2000万円もの大金を渡したことを証言したのです。これを彼は“カツアゲ”と表現しました」(大手紙記者)  議長と副議長に就くにあたって金銭を支払ったという証言者は吉松氏以外にも複数現れ、大問題に発展している。

 初当選した03年から24年末まで自民会派に所属していた吉松県議は、“カツアゲ”の実態をこう述懐する。 「3期目に入った(11年)ぐらいの頃、議長就任には“1000万円は要る”といった話を聞いたことがあります。そして実際、19年10月には中尾正幸・現副議長(61)から3回分の宿泊・ゴルフ代として1000万円を要求されました。このお金は松本國寛県議(69)に渡しています」  吉松氏が当時録音した音声データには、中尾氏が“明日、(自民党県議団の)松本会長(当時)が荷物は預かります。ちょっと大金やけんね”などと話す声が収められている。 「その後もゴルフ代として20年6月に中尾さんから、『藏内(勇夫〈いさお〉)さん(72)=現議長=が立て替えてくれているから』と言われて、400万円を支払った。このお金は当時の副議長候補の江藤秀之県議(直後に副議長に就任)と折半しました」(同)


Page 2

 このほか、同年4月には50万円のお車代5人分と飲食代として計約300万円などを求められた。支払った総額は約2000万円に上るという。20年6月から1年間議長に就いた吉松氏は、 「10月に議長就任パーティーがあり、大体(払った金額と)トントンになるぐらいの収入はありました」  吉松氏が渡したという大金は、どこに消えたのか。 「名目はゴルフ代が多かったですが、こんなに高額になるとは到底思えない。例えば400万円払った20年6月のゴルフは、私も含め9人、隣県の大分に3泊の日程で、かなりの額が余ったはず。その分は彼らがポケットに入れているのではないかと思います」(同) (同)  問題は誰のポケットに入ったのかという点だが、 「藏内さん、中尾さん、松本さん、原口(剣生〈けんせい〉)県議(71)、松尾(統章〈とうしょう〉)県議(53)は“5人組”と呼ばれ、藏内さんを頂点とした自民会派内のグループを形成しています。中尾さんらに“藏内会長に渡すので”と言われましたし、実際、藏内さんのところにいくのだろうと思っていました。先輩議員から『上納文化』ができたのは藏内さんが自民県議団会長になった03年以降だと聞いています。彼は10年会長をやり、県議団のトップに君臨し続けて福岡県議会のドンと呼ばれていますからね」(同)

 藏内氏は日大農獣医学部を卒業後、福岡選出の国会議員だった藏内修治氏の姪と結婚。1987年に2回目の県議選出馬で初当選し、現在10期目。8期目の15年に自民党福岡県連の会長に就任し、昨年4月から2回目の議長を務めている。さすがドンと呼ばれるだけあって、その影響力も絶大である。 「例えば、一緒にゴルフに行くと、若手や中堅の県議は各ホールの途中にいて、いつの間にか藏内さんの打ったボールの位置が変わっていたりする。とにかく、みんな藏内さんに勝ってしまわないように細心の注意を払ってプレーしていました」(吉松氏)  藏内議長は金銭の授受を否定しているものの、これまでも「カネ」にまつわる話が絶えなかったという。  藏内氏の選挙区である筑後市の政界関係者いわく、 「藏内さんが1回目の議長になった4期目ぐらいから、公共事業を受注した地元企業や業者が『藏内さんに“お礼”をしなければならない』ともらすようになりました。この“お礼”は地元では『藏内税』と呼ばれており、“藏内さんが関わると中抜きされる”と愚痴をこぼす業者もいた。あの人は“筑後で一番現金を持っている人”ともいわれています。服部誠太郎県知事も藏内さんが擁立に動いて知事になったため、彼には頭が上がりません」  13年から日本獣医師会会長を務め、今年4月に世界獣医師会会長に就任した藏内議長は、 「『ワンヘルス』という人と動物の健康や環境の問題に対する包括的な取り組みを服部知事と共に推進しており、今年度だけでこの事業に108億円もの予算がついています。農作物の認証から公園建設まで、なんでもワンへルス関連事業と称すれば予算がつけられる。藏内さんは利権の枠組みそのものを手中に収めた格好で、その地位を一層盤石にしたといわれています」(同)

 今回の告発について、藏内氏の事務所は書面で、 「中尾議員及び原口議員が『事実無根』と説明されており、私は両議員の説明を信じています」  と回答。が、影響は大きい。 「03年と23年の選挙以外無投票で期数を重ねてきた藏内さんは元々選挙に強くない。来年春の統一地方選に向けてすでに対立候補者を擁立する動きが進んでいます。どのみち政界引退に追い込まれるのでは」  福岡県政の「頂上」から自ら降りるか、引きずり降ろされるか……。どちらにせよ、県民から同情は得にくかろう。 「週刊新潮」2026年7月23日号 掲載

新潮社

関連記事: