SpaceXのスターシップが試験施設で爆発。イーロン「ただのかすり傷だ」

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爆発の炎が拳に見える…。

現地時間6月18日の深夜、テキサス州南東部にあるSpaceX(スペースX)の試験施設で、宇宙船スターシップの上段にあたる「Ship 36」のプロトタイプが、次回の飛行試験に向けた準備中に爆発しました。

飛行試験の準備中に爆発。原因は不明

SpaceXは、スターシップの第10回飛行試験(Flight 10)に向けて準備を進めていました。ここ数回の試験はとても順調とは言えなかったのですが、今回のプロトタイプは一度も地面を離れることなく、その場で爆発。

スターベースの発射台から数km離れた場所にある試験施設で発生した衝撃的な爆発事故の瞬間は、NASA(アメリカ航空宇宙局)のSpaceFlight.comが公開した映像でもはっきりと捉えられています。

Image: NASASpaceflight / YouTube

SpaceXはX(旧Twitter)で、高さ約52mのスターシップの上段について「スターベースの発射台で重大な異常が発生しました」との声明を発表。「作業中は現場周辺に安全確保区域が設けられており、すべての職員の安全が確認されています」と強調しています。

また、事故後の対応についても、地元当局と連携しており、周辺地域への脅威はないとしつつも、安全が確認されるまで現場に近づかないよう呼びかけています。

同社のイーロン・マスクCEOは爆発の数時間後に、Xへの投稿で「ただのかすり傷だ」と今回の結果についてコメントを残してしています。

翌朝には、初期のデータでは「観測機器室にある窒素用の複合材料オーバーラッピング圧力容器(COPV)が、本来なら耐えられる圧力に達する前に壊れたことを示唆している」とし、もしもそれが事実だと証明されれば、「この設計では史上初」になると述べています

NASAによると、COPVは高圧流体を貯蔵するためのライナ(内層)と複合材(外層)からなる圧力容器とのこと。それ以上の詳細はいまのところ不明ですが、SpaceNewsが指摘するように、スターシップは地上燃焼試験の準備をしており、爆発はロケットエンジンに点火する前に発生したと考えられています。

3回連続の失敗

連邦航空局(FAA)による6月18日の発表では、スペースシップの第10回飛行試験は6月29日に予定されていましたが、事故を受けてその可能性は低くなったようです。

それにしても、SpaceXはここしばらく失敗が続いています。2024年1月の第7回飛行試験では推進システムの予期せぬ振動によって推進剤の漏えいと火災が発生しました。今年3月の第8回飛行試験では、ロケットエンジンの1基でハードウェアに故障が発生し、飛行を途中で断念。さらに、5月の第9回飛行試験では、軌道到達には成功したものの、液漏れが原因で制御不能に陥り、再突入時に機体が空中分解しています。

スターシップは、月や火星、そして太陽系のさまざまな場所へ人や貨物を運ぶために開発されています。この巨大なロケットは、2027年までに宇宙飛行士を月面に着陸させることを目的とするNASAとの共同プロジェクト「アルテミス計画」の重要な柱であり、マスク氏の火星を植民地化するという目標の中核を成しています。

ロケット開発に失敗は付きものとはいえ、そろそろ何かのテストに成功したほうがいいタイミングなのではないでしょうか…。

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