参議院選挙:石破首相「近くで演説したいのですが」、聴衆と距離20m超「仕方ない」「顔見えない」…安倍氏銃撃から3年 : 読売新聞
参院選(20日投開票)では、候補者の応援演説をする与野党の幹部らに対し、厳重な警備態勢が敷かれている。8日で発生から3年となる安倍晋三・元首相銃撃事件後も、選挙活動中に政治家が襲われる事件は相次いでおり、陣営側の緊張感も高まっている。
(新潟支局 原大地、中西千尋)
警察官が声かけ
手荷物チェックや金属探知機での検査を受ける来場者ら(5日、新潟県上越市で)「すぐ近くで演説したいのですが、もうすぐ安倍元首相の命日です。申し訳ありません」。3日の公示後初めての週末を迎えた5日。新潟県上越市で昼前に行われた自民党候補の街頭演説で、石破首相は約750人の聴衆に理解を求めた。
聴衆は演説者から20メートル以上離され、柵で区切られた。金属探知機による所持品検査が行われ、検査済みかどうかを見分けるシールが胸元などに貼られた。演説前から警察官が通行人に積極的に声をかけたり、高所から双眼鏡で周囲の警戒にあたったりする姿も見られた。
「安全第一。物々しくなっても仕方ない」と理解を示す聴衆がいた一方、60歳代男性は「演説者との距離が遠く、顔がよく見えなかった」と残念そうに話した。
厳重な警備態勢がしかれている参院選の遊説会場(5日午後、JR松戸駅で)=園田寛志郎撮影5日に立憲民主党の野田代表が応援演説に駆けつけたJR松戸駅前(千葉県松戸市)では、演台から約10メートル離れた場所に聴衆エリアを設営。演台の後方には防弾用のブランケットがかけられた。陣営によると、事前に千葉県警の担当者と警備態勢について協議し、スタッフの人員を従来の倍に増やして臨んだという。陣営関係者は「緊張感を持って臨んだ」と話した。
エリア外でも
選挙警備のポイント安倍氏の銃撃事件を受け、警察庁は、都道府県警の警護計画案を事前に全件確認する制度を導入。今年5月末までに約9700件を審査し、うち約7200件で修正を指示するなど、要人警護を強化してきた。
警察当局が今回、対策の柱とするのが「高所」と「エリア外」の警備強化だ。2024年7月にトランプ米大統領が離れた建物の屋上から狙撃された事件を受け、選挙期間中は、ドローンなどで演説会場を上空から警戒。周辺のビル屋上にも要員を配置している。
さらに演説会場として想定される全国計約900か所の現場点検を実施。激戦区を中心に職務質問に習熟した警察官も投入している。
単独でテロを起こす「ローン・オフェンダー(LO)」への対応も強化した。警察庁は6月、「LO脅威情報統合センター」を設置。爆発物製造などの前兆をつかむため、全国の警察に寄せられた情報やSNSの投稿の分析を進めている。
悪化する抗議
選挙期間中に起きた襲撃事件と警備対策強化の流れ今年3月には、政治団体「NHKから国民を守る党」(現・NHK党)の立花孝志党首が支援者らと写真撮影中に襲撃される事件も発生した。
街頭演説会場では抗議活動が行われるケースもあり、陣営側は警戒感を強めている。5日午前、参政党の神谷代表や候補者の街頭演説が行われた大阪・難波の百貨店前では、数十人のグループが「ヘイト集団」「参政党に 騙(だま) されないで」と書かれたカードを掲げ、どなり声を上げた。
陣営によると、こうした抗議活動は衆院選があった昨年秋頃から激しくなり、手荷物検査に加え、聴衆用スペースを設けて抗議する人との距離を確保している。陣営関係者は「本来なら写真撮影などで有権者が代表と接する機会を設けたいが、今の状況では難しい」と話した。