【米中戦争シミュレーション】中国人民解放軍がアメリカ軍を排除して「台湾制圧」に成功するシナリオ(ダイヤモンド・オンライン)

 中国共産党にとって、台湾の併合は毛沢東の創業以来の宿願であり、習近平にとっては指導者人生の集大成だ。しかしアメリカもまた、自国の重要な利益を守るため台湾の防衛にコミットする方針を示している。米中が台湾を巡って衝突した場合、その結末はどうなるのか。中国が台湾を制圧するシナリオはあるのだろうか?※本稿は、村野 将『米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 中国の台湾統一には 大規模着上陸作戦が不可欠  人民解放軍が想定する台湾侵攻作戦は、おおまかに(1)封鎖およびミサイル・航空攻撃、(2)着上陸侵攻、(3)台湾内部での戦闘という3段階に分けられる。これらは各段階の目標が達成されなければ次の段階に移行できないように設計されており、どこかの段階で大規模な戦闘の遅延や混乱、敗北があれば、作戦全体が頓挫してしまうという弱点を抱えている。  無論、台湾への武力行使のあり方としては、封鎖やミサイル攻撃(戦略爆撃)だけが行なわれる可能性もあるが、過去200年間に発生した主権国家間の紛争において、封鎖や戦略爆撃だけで相手を降伏させられた事例は見当たらず、むしろ相手の世論の結束と継戦意思を強めてしまう傾向すらある(史上最も包括的な封鎖作戦の事例に太平洋戦争中の対日封鎖があるが、当時の日本は輸入の97%が遮断され、都市部に大規模空襲が行なわれても、原爆投下とソ連の対日参戦まで降伏することはなかった。また、ウクライナの都市部に対するロシアの無差別攻撃を見ても、限定的な萎縮効果しか発揮されていないことがわかる)。

 したがって、中国が台湾を武力で統一しようとすれば、大規模着上陸作戦の実施が不可欠となると考えられる。だが着上陸作戦は、米軍の統合ドクトリンにおいても「あらゆる軍事作戦のなかで最も困難なものの1つ」と位置付けられているように、どの軍隊にとっても難易度が高い。 ● 着上陸に適した海岸線は 台湾の約10%しかない  着上陸作戦の成功には、航空優勢を確保したうえで、防御側を凌駕(りょうが)する地上戦闘部隊を迅速に集結させ、防御側よりも迅速かつ断続的に上陸地点に送り込むための兵站(へいたん)を整えるという3つの条件を揃えなければならない。  人民解放軍には、約17万人の現役軍人と160万人ほどの予備役を有する台湾軍に対し、約159〜230kmの台湾海峡を約8時間かけて渡った先で、この条件を揃える必要があるということだ。  だが、着上陸に適した海岸線は台湾の約10%しかないとされている。台湾東岸は崖が多く、水陸両用部隊は6mの高波と集中豪雨が多い海域を迂回(うかい)する必要がある。  一方、台湾西岸は泥の多い地帯が続き潮の流れも速いため、泥にはまるのを避けようとすれば着上陸に適した限られた地点まで高波の中を進む必要がある。  つまり、中国本土の港湾で地上戦闘部隊や後方支援機材を揚陸艦やRO-RO船(ロールオン・ロールオフ船。クレーンを使わず車両が自走して乗り込むことができる貨物船)などの軍民両用船舶に積み込み、台湾海峡を渡って辿り着いた沖合で戦闘部隊や支援機材の積み下ろしを行ないながら、着上陸開始に十分な戦力が一定程度集結するのを待つ間が、侵攻作戦において最も脆弱(ぜいじゃく)な瞬間となる。  そこに、米軍と台湾軍(場合によっては自衛隊も)が執拗(しつよう)な攻撃を加えて大損害を与えることができれば、その時点で武力による台湾統一の可能性は相当難しくなると考えられる。近年、日本や米国、台湾の防衛力整備において、長距離対艦攻撃能力が重視されているのにはこうした背景があるのだ。  しかし当然ながら、中国はこのような作戦上の弱点を自覚しており、対抗手段を整えてきた。

ダイヤモンド・オンライン
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: